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視聴率低空飛行、TBSとフジは実力会長が牛耳る 75歳井上弘氏と77歳日枝久氏が「長期政権」

   TBSテレビの社長が5年ぶりに交代する人事が2015年3月12日、発表された。新社長は年齢の上では7つほど若返るが、井上弘会長(75)は留任。引き続きTBSに強い影響を及ぼすことになる。

   5つある民放キー局のトップには70代の人も多く、引き続き「長期政権」か「新聞出身者」で占められることになる。実質的な「若返り」が実現するまでには時間がかかりそうだ。

TBS井上氏は実質的に15年以上の「長期政権」

TBSでは「長期政権」が続く
TBSでは「長期政権」が続く

   認定放送持株会社のTBSホールディングス(HD)の発表によると、事業会社のTBSテレビの石原俊爾社長(69)が4月1日付で退任し、後任に武田信二取締役(62)が就任する。石原氏は事業会社とHDの社長を兼任しており、今回の人事で石原氏がHDに専念できるようにする。石原氏は09年に事業会社社長に就任。5年ぶりの社長交代だ。

   ただ、HDと事業会社の井上弘会長(75)は留任する。井上氏は02年にTBSの社長に就任し、HDと事業会社に分かれた09年には両社の会長に就任していた。実質的に13年以上の「長期政権」だと言える。

   フジテレビは13年に事業会社の社長に亀山千広氏(58)が就任し、「若返り」を果たしたとの声もある。だが、実態はTBSよりも「長期政権」だという解釈もできる。原因は日枝久氏(77)の存在だ。日枝氏は1988年にフジテレビ社長、01年に会長に就任。08年には、認定放送持ち株会社として設立されたフジ・メディアHDと事業会社にあたるフジテレビ双方の会長に就任し、今でも両社の会長職を続けている。25年以上にわたってグループ内に強い影響力を及ぼしていることになる。

    日枝氏をめぐってはさすがに批判も強く、14年6月に行われたフジ・メディアHDの株式総会では、株主から「役員の75歳定年の導入」が提案された。日枝氏への引退勧告とも言えるが、あえなく否決されている。

   フジテレビとTBSに共通するのが、視聴率が不振だという点だ。15年の正月には、一時的にテレビ東京にすら抜かれるという事態も起き、業界内では「ついに不振もここまで来たか」という声も出ている。

元日テレ会長の故・氏家齊一郎氏はナベツネ氏の「盟友」

    残りの日本テレビ、テレビ朝日、テレビ東京は、系列新聞社の影響を強く受けている。

   例えば日本テレビでは、12年に日本テレビホールディングス(HD)と事業会社の日本テレビが発足し、両社の社長を読売新聞出身の大久保好男氏(64)が務めている。

   さらに、会長を務めていた氏家齊一郎氏=2011年死去=は読売新聞出身で、読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆の渡邉恒雄氏(88)の盟友として、日本テレビグループ内に大きな影響を及ぼしていたことが知られている。

「クロスオーナーシップ」規制は民主党敗北で足踏み

   テレビ朝日は14年4月から認定放送持ち株会社「テレビ朝日ホールディングス(HD)」と事業会社のテレビ朝日に移行した。両社の会長にはテレビ朝日生え抜きの早河洋・旧テレビ朝日社長(71)、社長には朝日新聞社で東京本社編集局長や常務を務めた吉田慎一氏(65)が就任した。

   テレビ朝日社長は代々朝日新聞出身者が務めており、早河氏の社長就任は話題になった。それだけに、吉田氏の就任に対しては「先祖がえり」だとの評価が根強い。

   テレビ東京も状況は似たようなもので、13年6月まではテレビ東京ホールディングス(HD)と事業会社のテレビ東京の社長を日本経済新聞出身の島田昌幸氏(70)が兼務。それ以降は、島田氏がHD社長のまま事業会社の会長になり、事業会社の社長は日経新聞出身の高橋雄一氏(63)が務めている。

   特にこの3局にみられるような、新聞社が放送局に多大な影響を及ぼす状態は「クロスオーナーシップ」と呼ばれ、メディアの多様性を阻害するとの批判も根強い。09年の民主党政権発足時にはクロスオーナーシップの規制も検討されたが、後に民主党が各種選挙で大敗し、規制が見送られたという経緯がある。