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池内恵東大准教授「著書の剽窃記事掲載」と抗議 東洋経済オンライン編集部はコメントせず

   過激派組織「イスラム国」についての著書を書いた池内恵(さとし)東大准教授が、文体を変えて著書を引き写すなど剽窃した記事を載せたとして、東洋経済オンライン編集部に抗議していたことが分かった。

   池内恵氏は、2015年1月に文春新書から「イスラーム国の衝撃」を出したが、今回は、その著書やブログなどが引き写しの被害に遭ったと訴えた。

  • 池内氏が「剽窃被害」を訴えた著書
    池内氏が「剽窃被害」を訴えた著書
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ポスドクの日本学術振興会研究員からは謝罪メール

   引き写すなどされたというのは、東洋経済オンラインに2月28日と3月14日に載った2つの記事だ。それぞれ、「『イスラム国』の呼称、避けるべきではない」「イスラム国は、『2020年の勝利』を信じていた」とタイトルが付けられている。筆者は匿名で、「宗教学たん」のペンネームだった。17歳の女子高生との設定でイラストが付いており、「見た目は『萌え』だが、中の人は世界で活躍する気鋭の宗教学者」と紹介されていた。

   2つの記事は、もともとは、有料メルマガを手がける「夜間飛行」が配信したもので、東洋経済オンラインには、転載という形でアップされていた。

   これに対し、池内氏は、フェイスブックで15日、「コピー商品を発見」と報告した。記事は、著書やブログでの議論に依拠しており、イスラム国に至る組織の沿革はそのまま流用したと訴えた。記事には、池内氏の文献を参照したという記載はなかった。

   池内氏のブログによると、池内氏はこの日、東洋経済オンラインの編集部にメールで抗議をした。すると、編集部からは「至急社内で確認のうえ、しかるべき対応を検討したい」と返信があった。さらに、翌16日には、夜間飛行からの連絡はなかったものの、「宗教学たん」を名乗るポストドクターの日本学術振興会研究員から謝罪のメールが来たという。

   その後、17日になって、夜間飛行のサイト上では、記事についての説明とお詫び文が掲載された。

日本学術振興会「初耳で、事実関係が分からない」

   そこでは、メルマガの配信を停止したことを明らかにし、「宗教学たん」が池内氏の著書などを参考にしたことを認めて謝罪した。謝罪文では、具体的な箇所を挙げ、どのように参考にしたかを説明していた。ただ、メルマガを継続するなら筆者の実名を公開するが、今回は打ち切るため、筆者と話し合って公開しないことを決めたとした。メルマガについては、読者に全額を返金するとしている。

   東洋経済オンライン上では、3月18日夕現在も2つの記事が載っており、夜間飛行のサイトで説明とお詫びがあると、リンクしただけになっている。

   これに対し、池内氏は、東洋経済オンラインなどの対応に疑問があるとブログで明かした。抗議した池内氏に、編集部から連絡はなく、ライターが書いた記事については直接答える義務がないと考えているのかと不満をぶつけている。夜間飛行については、ライターに責任を押し付けているのかと、疑問を呈した。また、筆者についても、自ら挙げた箇所以外にも剽窃したところがあると指摘している。

   東洋経済オンラインの編集部では、取材に対し、「転載記事ですので、夜間飛行に聞いて下さい。こちらでは、特にコメントすることはありません」と答えた。

   そこで、夜間飛行に取材すると、記事に一部で盗用があったため対応したと認めたものの、それ以上については、「サイトにアップした謝罪文がすべてです」とした。

   なお、日本学術振興会の企画情報課では、「初めて聞いたことで、事実関係を把握していませんので、何も答えることができないです」と取材に話している。