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新たに「フロン排出抑制法」が施行された まだ知られていないので対策が遅れている

   冷蔵庫やエアコンの冷媒として使われる「代替フロン」というガスの排出規制を強化した「フロン排出抑制法」が、2015年4月から施行された。「フロン回収・破壊法」を改正し、法律名も変えたもの。

   オゾン層を破壊する「特定フロン」の代わりとして代替フロンへの転換を進めてきたが、この代替フロンは、地球を温暖化させる温室効果が極めて高いことが問題になったためだ。法施行で「ノンフロン冷媒」の開発・普及などが期待されるが、課題も多いようだ。

  • 代替フロンには強力な「副作用」があった(画像はイメージ)
    代替フロンには強力な「副作用」があった(画像はイメージ)
  • 代替フロンには強力な「副作用」があった(画像はイメージ)

代替フロンに「副作用」

   フロンは炭素とフッ素の化合物で、人工的に開発された。1980年代、オゾン層破壊が問題になり、その原因がクロロフルオロカーボン(CFC)やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)といった特定フロンだとされ、国際的に規制された。CFCは2009年に全廃、HCFCは先進国が2020年、途上国が2030年までに原則全廃することが決まっており、使用量は着実に減少。かつて、南極の「オゾンホール」が問題になったが、現在は回復に向かっているという。

   その一方で開発され、急速に普及したのがハイドロフルオロカーボン(HFC)という代替フロンだが、これには強力な「副作用」があった。同じ量の二酸化炭素(CO2)に比べて数百倍~数千倍になるという温室効果だ。2013年度の日本の温室効果ガスの排出量(CO2換算)は約14億トンで、このうち代替フロンは約3200万トン(2.3%)と、2005年度の2.5倍に増えており、このままでは2020年度に4000万トン以上、2030年度には4800万トン以上に膨らむ恐れがあるという。

   世界は今、温暖化防止への国際的な取り組みを進めており、今年末の気候変動枠組条約締約国会議(パリ)での合意を目指し、各国が温室効果ガス削減目標を続々と表明している。日本はまだ目標値を決めていないが、削減目標には代替フロンも含める方針で、今回の法律改正もこうした流れの中でのものだ。

   従来はフロンの回収・破壊が規制対象だったが、機器廃棄時の回収率は3割程度と低迷しており、使用時の漏洩も多いことから、今回の法施行で、業務用エアコンなどのユーザーまで規制対象を広げ、企業には設備の定期点検や整備内容の記録を義務付け、また一定量以上の漏出があれば国に報告することなども規定された。また、フロンメーカーや機器メーカーに温室効果の低い代替フロンやノンフロン冷媒への転換を促している。

時計の針が逆戻り?

   法施行を受けて、企業は今、温室効果が低い代替フロンか、自然冷媒かの選択を迫られている。代替フロンの開発では、ハイドロフルオロオレフィンという新物質があり、HFCの一種だが、温室効果は自然冷媒と変わらない。ただ、可燃性で、燃えると有害ガスが発生するほか、環境中に放出された際の影響についても分からない部分があり、将来のリスクを指摘する向きもある。

   自然冷媒は炭化水素、CO2、アンモニア、水、空気が代表例。産業用の冷凍装置などは、かつてはアンモニアが使われたが、扱いが難しいためフロン類に切り替わった歴史がある。この歯車を逆回転させる形になる。ただ、CO2を使った冷媒は、気温が高いと性能が落ち、アンモニア冷媒は毒性があるため居住空間には不向きなど、デメリットも目立つ。ノンフロン冷媒は、温室効果が低くなるほど燃えやすい特徴があるため、物質や機器の規模に応じ、都道府県への届け出や許可が義務付けられるという問題もある。自然冷媒を使った機器は、概してフロン類使用機器に比べて価格が1.5~2倍と高いのも大きな障害になる。

   それでも、導入を進めるローソンは、2010年からCO2冷媒システムを入れ、現在は全店舗1万2000店の5%(約600店舗)に導入済みで、2015年度中には倍増させる計画という。現状は割高でも、将来的に代替フロンへの規制がさらに強化されれば、二重投資になる恐れがあるからとされる。

   それぞれの企業の判断が問われることになるが、現状は「法改正の認知度は低く、自社が対象だと知らない企業もある」と関係筋は指摘する。法改正の周知を図るとともに、新技術開発など、国の本腰を入れた取り組みが必要と言えそうだ。