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カゴメが米食品会社買収 海外M&Aは、味の素など幅広い食品企業に広がる

   カゴメが、米食品会社「プリファード・ブランズ・インターナショナル(PBI)」を買収する。2015年4月15日発表した。買収額は約96億円。頭打ちの国内市場に成長の余地は乏しいため、海外に活路を求める。

   食品企業では日本たばこ産業(JT)や酒類大手が海外M&A(企業の買収・合併)で先行してきたが、それ以外にも幅が広がっている。成長が見込めるが不安要素もある新興国より、米国など先進国で安定的に稼ぎたい、との思惑ものぞく。

  • 国内市場低迷は海外企業買収を後押ししている
    国内市場低迷は海外企業買収を後押ししている
  • 国内市場低迷は海外企業買収を後押ししている

エスニック加工食品が得意な会社

   カゴメは、PBIの創業家などから発行済み株式の70%を5月15日付で取得し、連結子会社化する。カゴメはPBIの取締役会の過半の議決権を持つが、経営執行体制に大きな変更はなく、現状を維持する。

   PBIは1994年に米コネティカット州で創業した食品メーカー。売り上げの8割を占める米国のほか、インドやオーストラリア、英国などでも事業を展開している。米国では、インド・アジア風の「エスニック」と呼ばれるジャンルの電子レンジで温めて食べる加工食品を、「コストコ」など全米の主要なスーパーで販売。「パスタやピラフのインド・アジア版」と言えるシリーズで、原料を有機栽培するなど健康志向も特徴。2015年3月期まで7期連続で連結売上高を伸ばしたが、50億円程度にとどまっており、カゴメのテコ入れも受けて早期に100億円を目指す。

   カゴメは現在、米国で業務用トマトソースなどを手がけているが、今回のPBI買収により、米国の消費者向け事業に再参入する。カゴメはコスト負担が重いことなどから、2008年に米国での消費者向け野菜飲料販売から撤退したが、PBIの販路を活用して再チャレンジする方針。PBIの有機栽培商品に関心を持つ健康志向の高い消費者を取り込むことで、相乗効果も狙う。

   カゴメは2012年に「トマトの成分はメタボリック症候群対策に効果がある」との研究成果が発表された直後から、国内でトマトジュースブームが起きたものの長き続きせず、野菜飲料の販売減に苦しむ。海外、特に米国のような先進国は消費者に購買力があり、健康に良いとされるものが好まれるため、販売拡大の足がかりをつかみたいところ。現状1割台の海外売上高比率を早期に3割に引き上げたい考えだ。

国内市場の低迷で海外へ

   味の素が2014年11月に全株取得したのは、米国テキサス州の冷凍食品メーカー「ウィンザー・クオリティ・ホールディングス」。買収額は約870億円で、味の素として過去最大の案件だ。味の素は得意のうまみ調味料や飼料用アミノ酸を武器に、既に海外売上高比率が5割程度に達しているが、今回の買収をバネに7割にすることを目指す。

   味の素が買収したウィンザー社は中華・アジア料理に強みを持つ。味の素自身は、米国で健康志向の人々の間で関心の高い「和食」の冷凍食品が強みで、米国でも着実に販売を積み上げている。味の素としては、ウィンザー社が全米に張り巡らせた販路を活用して一気に和食冷食の市場を拡大することを目論む。

   一方、昨年夏に自社の年間売上高(2014年2月期で1642億円)を上回る約2150億円の買収に踏み切ったのは「味ぽん」で知られる調味料大手のミツカン。対象は英蘭ユニリーバの北米パスタソース事業だ。海外売上高比率は一気に過半となる。ミツカンは味ぽんを米国で売りまくろうとしているわけではないが、味ぽんが肉料理などに用途を広げた経験を生かし、パスタソースの用途拡大にも挑む。

   国内市場の低迷は食品のような日本の内需産業による海外企業買収を後押ししており、円安の逆風下でもやむ気配はない。今後もさまざまな案件が出てくるとみられている。