J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

スマホ需要で電子部品7社の決算が絶好調 TDKや日本電産など売り上げ1兆円企業へ

   電子部品大手7社の2015年3月期連結決算が出そろった。世界的なスマートフォン市場の成長の恩恵を受け、各社とも業績は好調。TDK、村田製作所、日本電産の売上高は円安も追い風に初めて1兆円を超えた。

   もともと1兆円台の京セラを含め、7社中4社が「1兆円クラブ」入りした。各社とも自動車の部品メーカーとしても存在感を増しており、さらなる成長が見込まれている。

日東電工も急伸

電子部品メーカーの真価が問われる局面
電子部品メーカーの真価が問われる局面

   京セラ1兆5265億円(前期比5.5%増)、TDK1兆825億円(10.0%増)、村田製作所1兆435億円(23.2%増)、日本電産1兆283億円(17.5%増)。電子部品7社の2015年3月期の売上高一覧を眺めると、前期との大きな違いは京セラ1社だった1兆円企業が、2ケタ成長で一気に4社に増えたことだ。売上高5位の日東電工も10.1%増の8252億円となり、1兆円を射程にとらえる。

   売上高の伸びに伴って、利益も着実に増えている。

   TDKの純利益は前期比約3倍の494億円。TDKは、得意のセンサー技術を生かしたスマホ部品が強み。特に、回路から必要な周波数の信号のみをキャッチする「高周波部品」と呼ばれる部材の受注が、中国の新興メーカーから急増しているという。「スマホブームに乗り遅れた」と指摘された時期もあったが、底力を見せている格好だ。

   今のTDKクラスの技術水準になると、主要なスマホメーカーすべてが納入先となり、市場拡大の恩恵をほぼそのまま受けられる。リーマン・ショック後の業績落ち込みでリストラの嵐が吹いた時期を乗り越え、2008年3月期の最高益715億円も達成不能な目標ではなくなった。

村田製作所の稼ぎっぷりが際立つ

   2001年3月期以来、14年ぶりに純利益が過去最高を更新したのは村田製作所。前期比80.0%増の1677億円を記録した。スマホにも使われる積層セラミックコンデンサーや高速通信「LTE」用部品など、世界トップクラスのシェアを持つ部材を擁するため、TDK同様、スマホ市場拡大はそのまま収益の伸びにつながる。

   村田製作所で驚くべきは売上高営業利益率。本業のもうけ=営業利益が売上高に占める割合で、高いほど効率よく稼げている。2015年3月期は20.6%に達した。工場を維持管理し、多くの従業員を雇用する製造業にあって、電子部品大手各社の売上高営業利益率は優秀な部類。それでも村田製作所以外で10%を超えたのは、日東電工(12.9%)、日本電産(10.8%)、ローム(10.7%)の3社に限られる。製造業でハイレベルとされるトヨタ自動車でも、2015年3月期に10.1%にとどまるだけに、村田製作所の稼ぎっぷりが際立つと言えよう。中国などのスマホメーカーの信頼を勝ち取り、「他に替えられない存在」の地位を確保していることが支えとなっている。

   村田製作所のほかにも、日本電産、日東電工、アルプス電気も純利益が過去最高を更新した。日東電工はスマホの液晶パネル用光学フィルムが世界シェアトップ。それでも手綱を緩めず常に改良を加えて競争力を保ち、収益に貢献している。

   新たな成長に向けて各社が取り組んでいるのが、自動車部品だ。スマホ部品の技術はいずれ韓国勢などが追いつき、価格低下が見込まれる。自動車には現状でも各社の部品が採用されているが、今後は「自動運転」化が進むことでさらに活躍の素地が広がり、利益を確保できる公算があるからだ。ただ、それはBtoB色を強めるパナソニックや東芝など、新たなライバルとの戦いの号砲でもあり、電子部品メーカーとしての真価が問われる局面でもある。