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ゆるキャラグランプリ「家康くん」雪辱の裏事情 2年前の「油断」教訓に地元浜松の必勝策

   ご当地キャラクター日本一を決める「ゆるキャラグランプリ2015」で優勝したのは静岡県浜松市の「出世大名家康くん」だった。

   「家康くん」は13年のグランプリで首位を独走していたものの、土壇場で逆転されるという「痛恨」の過去があるだけに、浜松市民の、今大会にかける意気込みは凄まじいものがあった。そして、地元浜松市で決選投票が行われなければトップになれなかった事情もあった。

  • 「家康くん」は愛媛県の「みきゃん」を直接投票で破り優勝した。(写真は2015年7月撮影)
    「家康くん」は愛媛県の「みきゃん」を直接投票で破り優勝した。(写真は2015年7月撮影)
  • 「家康くん」は愛媛県の「みきゃん」を直接投票で破り優勝した。(写真は2015年7月撮影)

2年前は1ヶ月半まで独走して逆転負け

   「苦い経験は繰り返さない」―――今回の大会では、市民からこうした声があがったのだという。13年のグランプリで「家康くん」は、ネット上の投票結果が非表示になる1カ月半前まで2位に10万票もの差をつけトップを独走し、市民は優勝を確信していた。それが油断につながり、11月の最終結果では栃木県佐野市の「さのまる」に5万票もの差を付けられ破れてしまった。

   優勝の公約を守れなかった「家康くん」はウナギの形をしたちょんまげを切り落とし、「出世大名」を「出家大名」に 改名して一から修行をすることになった。そのため、14年は出場を取りやめ、15年の決選投票が浜松市で行われる事が決まった14年12月、浜松市の鈴木康友市長は「来年は浜松で一気に勝負をかける」と宣言した。

   実は浜松市、13年のグランプリでは市の職員が頑張りすぎて「組織票が酷すぎる」などとネット上で批判を浴びた。そのため、今回の「選挙活動」の主体は地元のNPO法人が行い、市は形式的にはサポート役に回ることにした。それでもで、市の観光・シティプロモーション課によると、15年8月17日の投票スタートから市役所内では、

「グランプリ獲得のため、本日も投票お願いしますのじゃ」

という「家康くん」のアナウンスを毎日昼休みに流した。投票は一日一回、一つのメールアカウントごとにできる。例えば、メールアカウントを3つ持っていれば一日3回投票できる。市は各課の所属長をリーダーとし、部下が持っている個人アカウント数を把握し、土日を含め毎日投票するよう呼び掛けた。そして家族、友人にも投票に協力してもらうよう働きかけた。また鈴木市長が選対本部長に就任し街頭演説をしたり、イベントに出席したりした際は、「家康くん」への投票をお願いした。

今年は直接投票で首位の10倍得票で逆転優勝

   さらに、13年までネット投票のみで優勝を決めていた方式が、14年からはネット投票と本選での直接投票で優勝が決まることに変更されたことも有効に活用した。15年の本選は、浜松市西区のキャンプ場で11月21日から23日まで「ゆるキャラグランプリ2015 in 出世の街浜松」として開催され、直接投票はネット投票の1票に対し1.5票で計算される事になった。

   ネット投票は11月16日に締め切られた。結果は「家康くん」は690万4159票で、691万1592票の愛媛県の「みきゃん」に次ぐ2位だった。

   21日から23日までの本選では、市が、投票に行ってほしい、「家康くん」を勝たせてほしいと市民に呼びかけた結果、直接投票は「家康くん」4万9302票、「みきゃん」の4182票と10倍以上の差が付いた。総合結果は「家康くん」の695万3461票、「みきゃん」の691万5774票で「家康くん」が逆転優勝を果たしたことが発表されると、本選に集まっていた観衆から大歓声が上がった。地の利が生きた結果となり、これについて観光・シティプロモーション課は、

「決選投票が地元の浜松でなければ優勝は難しかったとおもいます。市民が投票に駆けつけてくれたことは、ゆるキャラグランプリ自体が地域のPRと活性化を目指すという狙いに合致していて、そうした点でも成功と言えるのではないでしょうか」

と話している。