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「バズフィード」日本版の稼ぎ方がユニーク ページビューでなく、「バズる広告記事」で勝負

   ソーシャルメディアで拡散する話題を扱うニュースサイト「バズフィード」の日本版が2016年1月19日に本格オープンした。日本版は海外版としては11番目で、運営会社「バズフィード・ジャパン」は米バズフィード社とヤフーが合弁で設立した。「楽しまれ・信頼され・シェアされる」をキーワードに、動物の写真記事から硬派な調査報道まで、幅広いジャンルから他国版からの翻訳を含めて1日に20本程度の記事を掲載する。

   課金制は採用せずに広告収入で運営する。従来のバナー広告は設置せずに、広告記事を主な収入源として見込んでいる。

  • バズフィード・ジャパンは2016年1月19日に本格オープンした。左からバズフィードのベン・スミス編集長、日本版の古田大輔・創刊編集長、高田徹・代表取締役
    バズフィード・ジャパンは2016年1月19日に本格オープンした。左からバズフィードのベン・スミス編集長、日本版の古田大輔・創刊編集長、高田徹・代表取締役
  • バズフィード・ジャパンは2016年1月19日に本格オープンした。左からバズフィードのベン・スミス編集長、日本版の古田大輔・創刊編集長、高田徹・代表取締役

検索エンジンではなくソーシャルメディアからの流入が多いのが特徴

   米国版ではフェイスブック、スナップチャット、ユーチューブといったソーシャルメディアから流入する読者が大半で、グーグルの検索エンジンからの流入はわずか2%。ひとつのプラットフォームに依存しない「クロス・プラットフォーム」型のノウハウを日本版でも生かす。

   バズフィードは1月18日にプロテニスの八百長疑惑を報じたばかり。1月19日には日本版独自の記事として東京電力福島第1原発の現地ルポを掲載するなど、硬派な記事も比較的多い。古田大輔創刊編集長は1月20日に開かれた記者発表会で、

「人々は、ネット上で面白いコンテンツもシェアすれば、ハードでシリアスなコンテンツもシェアする」

と話し、硬軟両方の記事が支持されているという感触を得ているようだ。古田氏は朝日新聞社出身。シンガポール支局長などを経て、バズフィード移籍直前までデジタル部門に勤務していた。朝日新聞や他のニュースサイトと比較した場合、バズフィードが大きく勝っているのが技術面だと説明する。

「毎日が感動の連続。とにかく自分たちで記事を作るときに、ストレスがない。記者・ライターとして、『こういった機能があればいいのに』というものがすべてある感じ」

ページ分割なしでストレスなく長文記事読めるのが売り

   具体的には、写真や文字の配置が細かく簡単にできるほか、クイズコンテンツを作成する際の機能がすでに実装されている点が有利だと説明。こういった技術面はデザインにも生かされており、記者側、読者側の双方からストレスが少ない仕組みになっていることを強調した。

「8000字もの(福島第1原発の)ルポを1度のページ分割もなく、スマートフォンで1度もクリックすることなく、ひたすらページをスクロールしていくだけで、8000字の長行のルポが読める。そういったつくりをしているサイトは、今は日本、世界にもほとんどない。しかも、そこにはひとつの広告も入っていない」

   古田氏が「広告が入っていない」と強調するように、ニュースサイトで一般的なバナー広告は設置しない方針。従来のニュースサイトと比べて、指標としてのページビュー(PV)の優先順位も下がる。

「我々の成功の指標はPVだけではない。そもそもバナー広告がないので、『1クリックいくら』というビジネスをしているわけでもない。私たちが目指さないといけないのは、どれだけ人々に影響を与えられるメディアになるか」

広告記事は編集部とは別の部署が作成する

   運営会社の代表取締役でヤフーと兼務の高田徹氏は、掲載する広告は、

「イメージ的には、バズフィードが作っているコンテンツの物作りのプロセスを広告記事でも、ノウハウを同様に使ってソーシャル(メディア)上で拡散させていくタイプの広告商品」

を想定する。広告記事は広告記事だと分かるように明記する方針だが、編集記事と同様にSNS上の拡散を狙う考えで、

「目指すは、古田が書いた編集記事よりも、バズる(話題になる)広告記事を書く」

ことだと説明している。

   こういった記事は、古田氏が率いる編集部とは別の部署が作成する予定だ。古田氏は、

「編集部門のトップとして、広告サイドの方々が編集の人たちに編集内容について何かを言うことは絶対に認めない。記者が広告主の人たちの記事を書く時に、広告サイドにそれを相談することもない。そこはきっちりと切り分けていく」

と説明している。