2024年 4月 19日 (金)

フジ系ドラマ「いつ恋」は介護労働への偏見生む? 介護福祉士会「意見書」に「過酷なのは事実」との声続出

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   フジテレビの月9ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」が介護職のイメージを損ない、人材確保に影響を及ぼす内容だとして、日本介護福祉士会がフジテレビに対し配慮を求める意見書を出した。

   これに対してネット上では、実態を描いて何が悪いのか、という批判が相次ぎ、介護福祉会の中でも意見が分かれた。介護労働の実態をあらためて議論するきっかけになったことは確かなようだ。

  • 有村架純演じる「いつの恋」の主人公杉原音は介護施設「春寿の杜」で働いている(写真はイメージ)
    有村架純演じる「いつの恋」の主人公杉原音は介護施設「春寿の杜」で働いている(写真はイメージ)
  • 有村架純演じる「いつの恋」の主人公杉原音は介護施設「春寿の杜」で働いている(写真はイメージ)

「ドラマを見て身内に介護をやめさせようと思った」

   ドラマは女優の有村架純さん(23)演じる杉原音が主役のラブストーリーで、音は介護施設「春寿の杜」で働いていて、厳しい介護士の職場の様子が度々登場する。

   ドラマへの反響は大きく、日本介護福祉士会は2016年2月10日付けでフジテレビに「意見書」を送り、ホームページで公表した。

   それによると、ドラマを見た人から、番組で主人公は24時間勤務という過酷な労働条件の中、上司やオーナーからハラスメントまがいの仕打ちを受けている。しかも月収は14万円。世間では労働環境や条件が3K、4Kと言われているが、「そうであれば身内が目指している介護の資格取得をやめさせようと思っているのです」というメールが会に届いたのだという。

   福祉士会はこのメールに対し、 多くのマスコミが介護や介護職に関してかなり偏った情報を流しているように感じている、と返答した。働いている施設や持っている資格によって職場の環境や労働条件は異なり、女性の賃金も他の職業とあまり差がない。そして多くの事業所が働きやすい環境作りに真剣に取り組んでいる。介護は3Kなどと言われているけれども、けっして単なる肉体労働のみの仕事ではなく、「人間性」や「考える」ことが求められている。そしてメールの主に、身内の方に是非とも勉強を続けてもらい、自分たちの仲間になってほしいと強く願っている、としたという。

   そのうえで、フジテレビに対しては、ドラマは給与の低さや労働環境の悪さを訴えているのではないことは十分に承知しているけれども、介護人材が不足し国を挙げてその確保・育成に取り組んでいる状況であるため、

「御社ではそのあたりも考慮していただき、番組作りをして頂きますようお願いいたします。介護は決して夢のない仕事ではありません。この仕事に真剣に取組み、一生をかけている人間もいることを忘れないでください」

と要望した。

   意見書を受け取ったフジテレビはJ-CASTニュースの取材に対し、

「このドラマは、さまざまな方から監修を受け、実際の介護の現場を取材した上で制作しておりますが、意見書で寄せられたお考えも、貴重なご意見として今後の参考にさせていただきたいと考えております」

と回答した。

「臭いものに蓋をしようなどと決して考えていない」

   福祉士会の「意見書」が公表されると、ネット上では「フジは悪くない」「何でもかんでもクレーム」「事実隠蔽?」などと福祉士会への批判が相次いだ。あるネットの掲示板には、

「実際に施設で働いてるけど本当にあんな感じだから。クリーンなイメージ植え付けようとしてるのかな福祉士会は。もしくは現場の現状を知らないのか」
「介護福祉士会はドラマに難癖つけている暇があれば、その事実を受け止めて対策をして欲しいです」
「過酷な労働環境なのは確かなんだから、それをなんとかする方が先だろ」
「介護の現場が過酷なのは事実。ドラマを見ようが見まいが、介護福祉士になるなんて覚悟がないと無理だと思う」

などといった意見が続々と書き込まれている。

   こうした意見を福祉士会はどうとらえているのか。J-CASTニュースが福祉士会に取材すると、

「フジテレビに出したものは抗議ではなく、あくまで意見なんです。臭いものに蓋をしようとか、オブラートに包んでほしいなどといったものでは決してありません」

と強調した。

   今回のドラマについて会員からは「実態はここまでは酷くない」「これでは介護職のなり手が無い」といった意見と、「これが現場の実態だ」といった意見が錯綜したのだという。意見書にあるように介護職の待遇や職場環境は様々であり、非常に厳しい環境に置かれている施設が存在するのは事実だ。そうした状況の中で介護に携わる人材を増やす必要に迫られている。

「『酷い職場だよね、私たち』で終わったり、諦めたりするのはやめて、処遇や職場環境の改善をますます進めなければいけません。フジテレビさんに意見書を出したのは、フジテレビさん、そして今回の件を知ってもらったみなさんに、一緒になってこの介護の世界を変えていく手助けをしてもらえないか、というお願いだったんです。どうか協力をお願いします」

と福祉士会の担当者は話している。

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