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日テレ、「首相発言テロップ誤表示」で謝罪 ビビり過ぎ?当然の事?

   自民党の党大会での安倍晋三首相(自民党総裁)の発言をめぐり、日本テレビがニュース番組内でのテロップに誤りがあったとして陳謝した。安倍首相は「選挙のためだったら何でもする、無責任な勢力に負けるわけにはいかない」と発言したが、テロップでは前半部分だけを切り出して「安倍首相『選挙のためだったら何でもする』」と表示。安倍首相が批判の対象としている野党ではなく、自民党が「選挙のためだったら何でもする」とも読めるようになっていた。

   ナレーションやVTR中の発言と合わせて聞けば、趣旨が誤って伝わる可能性は必ずしも高くないとの擁護論もあるが、ネット上では「発言をねじ曲げた」といった批判が出ていた。

  • 日本テレビが字幕の誤りで陳謝した
    日本テレビが字幕の誤りで陳謝した
  • 日本テレビが字幕の誤りで陳謝した

ナレーション内容は正確で、VTRでも発言伝えていた

   問題が指摘されたのは2016年3月13日11時30分から放送された「NNNストレイトニュース」。2番目の項目で、同日午前中に始まった党大会の様子を報じた。冒頭、アナウンサーが

「安倍総理大臣は今日開かれた自民党の党大会で、夏の参議院選挙について『選挙のためだったら何でもする、こんな無責任な勢力に負けるわけにはいかない』と述べて、民主党などへの対抗心をあらわにしました」

と原稿を読み上げた。読み上げた内容は安倍首相の発言内容を正確に伝えていたが、テロップは

「中継 自民党大会 安倍首相『選挙のためだったら何でもする』」

という内容。直後に始まった党大会会場からの生中継でも、画面右上に

「安倍首相『選挙のためだったら何でもする』 LIVE 都内」

と表示された。その後、画面は安倍首相の発言を伝えるVTRに切り替わり、その中で安倍首相は

「選挙のためだったら何でもする。誰とも組む。こんな無責任な勢力に、私たちは皆さん、負けるわけにはいかないんです!」

と発言。この安倍首相の発言には字幕はつかなかった。

夕方には「安倍首相『無責任な勢力に負けるわけにはいかない』」に

   直後から、ネット上ではテロップと実際の発言内容に齟齬があることを指摘する声が出ていた。こういった声を踏まえたのか、18時の「真相報道 バンキシャ!」では、アナウンサーがリード文を読むときのテロップが

「自民党大会で安倍首相 参院選 民・共との対決姿勢強調」

になり、VTRの右上の文字も

「安倍首相『無責任な勢力に負けるわけにはいかない』」

に軌道修正された。3月14日未明の「Going! Sports&News」でも、それぞれ

「自民党大会で安倍首相 参院選 民主・共産への対決姿勢強調」
「『無責任な勢力に負けるわけにはいかない』」

と同様のテロップが入った。この番組では、党大会のニュースを伝えた後にアナウンサーが

「本日放送のストレイトニュースでこのニュースを取り上げた際、安倍総理の発言に関する字幕スーパーが誤っていました。お詫びし、訂正いたします」

と陳謝し、画面には

「× 安倍首相『選挙のためだったら何でもする』」
「○ 安倍首相『選挙のためだったら何でもする
       無責任な勢力に負けるわけにはいかない』」

というテロップが出た。

過去には訴訟に発展したケースも

   一部では「テロップの改行の位置がおかしい」という声がくすぶっているものの、この対応で総じてネット上の騒ぎは収まった模様だ。ただ、テロップの不適切な表示をめぐっては、過去には訴訟にまで発展した事例もある。テレビ局には引き続き細心の注意が求められると言えそうだ。

   03年11月にTBSが放送した情報番組「サンデーモーニング」では、「私は日韓合併の歴史を100%正当化するつもりはない」という東京都の石原慎太郎知事(当時)の発言に「100%正当化するつもりだ」というテロップをつけた。このVTRを受け、出演者は「問題発言」などと石原氏を批判していた。

   TBSは放送から3日後の別の情報番組や翌週の「サンデーモーニング」などで陳謝。TBS側は「発言をテープから起こす際のミス。語尾が聞き取りにくかった」などと説明したが、石原氏は「製作意図そのものが事実を強引にねじ曲げるもの」などと納得せず、04年2月に名誉棄損容疑で警視庁に告訴。同庁は04年12月にTBSのプロデューサーら男性社員4人を書類送検したが、東京地検は05年3月、嫌疑不十分で不起訴処分にした。これとは別に、石原氏は約8000万円の損害賠償を求めて民事訴訟を起こし、06年2月に和解している。