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財務省の「日本を黒字化するゲーム」 注目度が高まっているワケ

   財務省が公式サイトで「日本の財政を考える」ページを立ち上げた。パソコンやスマートフォンで誰でも遊べる、シミュレーションゲーム「財務大臣になって、2020年までに日本を黒字化するゲーム」を同ページであらためて公開したところ、注目度が上がっているようだ。これまで存在を知らなかった人たちが、ゲームに参加し、その感想をネット上に書き込んでいる。

   プレイヤーが財務大臣になったつもりで財政改革を断行。国の収支を健全化させるためにはどうすればいいのか、を考えることができるようになっている。

  • 財務省に、なにか意図があるのか?!
    財務省に、なにか意図があるのか?!
  • 財務省に、なにか意図があるのか?!

財務大臣の気持ちで予算を編成してみる

   財務省のシミュレーションゲーム「財務大臣になって財政改革を進めよう」は、2016年度予算をもとに、2020年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス、国債などの収入以外の租税収入と、国債の利払い費用などを除く歳出との収支)の黒字化を目指すゲーム。

   たとえば、基礎的財政収支がマイナス28.4兆円。つまり、国の財政状況が28.4兆円の赤字の場合、それを黒字化するために社会保障や公共事業、教育、科学技術振興、経済協力、防衛、食料安定供給、中小企業対策、エネルギー対策、地方交付税交付金、財政改革の各項目の予算を増額したり減額したり、あるいは現状維持することで、収支バランスを改善していく。

   財務大臣になった気持ちで、国の財政収支を健全化するため、各項目の予算を編成してみるわけだ。

   「社会保障」では、「社会保障制度が充実していないと、将来が不安」であることを理由に「増額」を求めるボタンと「社会保障制度は大事だけど、このままでは維持できない」という「減額」を求めるボタン、「現状維持」のボタンを用意。その3つから「予算の方針」を選ぶ。さらに「減額」(あるいは「増額」)を選ぶと、どのくらい減額(増額)すればよいかを、5つから選ぶようになっている。

   そうやって各項目からどの程度、減額あるいは増額すればよいかを考え、黒字化に漕ぎつける。黒字化できないと、どんよりしたイメージのイラストとともに「目標を達成することができませんでした。行政サービスの停滞など、将来世代にさらなる負担を残すことになりました」などと表示される。

「『だから増税仕方ないね!』って言いたいがためのゲームだろ」

   そんなゲームを財務省がつくったということもあって、インターネットではさっそく話題になっている。

「そのゲームに(おカネを)いくら使ったのかが知りたいわ」
「結論ありきのゲームじゃねぇかwwwしかも現実には政治家がムダ遣いして黒字になんてなるわけがない」
「これって財務省のワナだわ。議員や公務員の削減に給与カット、他にできることがたくさんあるのにワザと書いてないwww」
「『だから増税仕方ないね!』って言いたいがためのゲームだろ」

といった、財務省による「増税」のためのプロパガンダと見る向きや、「税金のムダ遣い」との指摘は少なくない。

   なかには、試しにチャレンジした人だろうか、

「速攻でクリアしたわ。ってことは俺を財務大臣にしろw向いてるらしい」
「でも、これ結構いいよな。自分がその場に立たないと相手の気持ちがわからないっていうから。ちっとは考えるんじゃね」
「日本の将来が地獄であることがよくわかった」

などの声も寄せられている。

   そんなに悲観的な結末なのだろうか・・・

社会保障と景気対策のコスト増、「歳出」急激に膨らむ

   歳出が税収などを上回る「財政赤字」が続くなか、政府は2013年8月に「当面の財政健全化に向けた取組等について~中期財政計画~」で、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)について、2015年度までに2010年度に比べて赤字の対GDP比を半減すること、2020年度までに黒字化すること、その後の債務残高対GDP比の安定的に引き下げること――の財政健全化目標を掲げた。

   財務省がゲームで設定している「2020年度までの黒字化」は、この財政計画に基づいている。

   じつはこのゲーム、公開されたのは国債・地方債の残高が500兆円を突破したばかりの2005年だった。財務省は、「(国の)財政の現状については、これまでパンフレットやホームページで広報してきましたが、今回、よりわかりやすく広報したいと考え、新たに『日本の財政を考える』のページを立ち上げました。ゲームはそのコンテンツの一つとして、財務省のページから移しました」と話す。「●●年までに」の部分を随時、更新していた。

   「日本の財政を考える」では、「2016年度においても基礎的財政収支は相当程度の赤字となっていますが、今後、2020年度にかけて、経済成長により税収が伸びる一方、高齢化の進展により社会保障関係費も毎年度0.5兆円規模で急激に伸びることが予想されます」と、赤字がなかなか減らない理由を説明。公共事業をはじめとした景気対策で歳出が伸び続けたことも「赤字」の背景にある。

   ゲームでも、おそらく思っている以上に「財政改革」は進まないと感じるかもしれない。「老後生活が大変だろうから...」などと温情をみせたり、教育は「日本の将来のため」と減額の対象から外したりすると、「歳出」は一向に減らない。一方、大増税しなければ「歳入」は増えない。

   安倍政権の経済政策であるアベノミクスに停滞ムードが漂い、消費税率の10%引き上げも見送り論が台頭。なにやら混とんとしてきた中で、財布を預かる財務省にしてみれば、気が気でないのかもしれない。