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バズってわかった「バイラル」の意味 7万人が回答「難読地名クイズ」舞台裏

【意外とバズったJ-CAST記事(9)】ネット業界における「バイラル」という言葉は、いつの間にやら「質の低いニュースサイト」の代名詞と化している。

   だが「まるでウイルスのように、SNSでユーザーからユーザーへと伝わっていく」という本来の意味での「バイラル」の威力は、やはり目を見張るものがある。J-CASTニュースの姉妹サイト「トイダス」に2016年3月30日掲載された

いくつ読める? 北海道の難読地名【全10問】

が、7000件近いツイート、1万5000件を超えるフェイスブックのシェアを得た過程は、その好例と言えそうだ。

  • 「北海道の難読地名」クイズと、これに対するツイッターでの反響
    「北海道の難読地名」クイズと、これに対するツイッターでの反響
  • 「北海道の難読地名」クイズと、これに対するツイッターでの反響

始まりは静かに、そして突然に

「こないだ出した『北海道の難読地名』、急に回答数が伸びてません?」

   4月13日の午前中である。同じ「トイダス」の運営チームのメンバーが、意外そうな声を上げた。

   「トイダス」はJ-CASTニュースの姉妹サイトとして、3月30日に開設したばかりのクイズ投稿サイトだ。ローンチから2週間、徐々にアクセスが伸びてはいたが、まだまだ低空飛行、というのが正直なところ。その「北海道の難読地名」も、地元出身の運営メンバーの1人が、オープン直後に投稿したものだったが、数千回程度の回答数に留まっていた。いわゆる「難読地名」を10個並べ、4択で応えてもらうというオーソドックスなクイズである。

   ところが、見てみるとそれが、すでに1万回に迫ろうとしている。「なんかあったんですかね?」と、当の製作者も首を傾げる。

   ところが、その勢いは昼ごろ、さらには夕方になっても止まらない。「どこかに晒されて、炎上してるんじゃないだろうか」――J-CASTニュースでの経験上、そんな不安さえよぎる。

スタートダッシュ成功しないと、普通は...?

   不審に思いながらツイッターを見て、その答えがわかった。

「くぅぅ!!北海道出身なのに全問正解出来ないとは...」
「雄武が読めなかった」
「難しすぎてワロタw」
「まあ、札幌出身としては、当然よね」

   タイムラインでは、早い時には十数秒に1度、というほどのペースで、クイズに挑戦したユーザーが、自らの成績や感想などをツイートしていたのだ。そう、流入元はツイッターだったのである。

「......でも、なんでツイッターから?」

   周囲に心当たりを尋ねてみるが、誰も知る人はいない。などと言っている間に、回答数はすでに5万に達しようとしている。

   ニュースサイトのコンテンツが「バズる」場合、掲載直後にキュレーションアプリや著名人に取り上げられるなど、スタートダッシュに恵まれることが多い。逆に初速が付かないと、そこからの浮上は困難だ。

クイズならではのバズり方

   そうした常識からすると、公開から2週間が経ち、特にプッシュもかけていないものがこんなに伸びるというのは、正直珍しい。その経緯を知るべく、ツイートの時系列をたどってみた。

   まず12日の22時ごろ、ツイッターユーザーのAさんが偶然この難読地名クイズを見つけたらしく、挑戦してその結果をつぶやいた。これを見て、興味を覚えたのがAさんのフォロワーのBさんだ。約15分後、同じようにこのクイズに回答、自らの成績をつぶやく。同じようにしてさらに約15分後、BさんをフォローするCさんもクイズにチャレンジした。

   Aさん、Bさんはそれほどでもないが、Cさんは比較的多くのフォロワーを抱えている。Cさんの投稿をきっかけに、30分ほどの間に数十人がクイズに挑み、ツイッターで結果を報告――あとは、玉突き式だ。フォロワーからフォロワーへとクイズは波及。夜には1時間当たり100件規模だったツイッターでの言及数は、運営が回答者増に気付いた13日昼ごろには10倍近くに伸び、ツイッター全体の「トレンド」ワードにランクインするまでになった。さらにSNSの枠を超えフェイスブックへ、また他の類似するクイズへとユーザーは流れる。ただ見ているばかりだった運営側としては、まさに「バイラル」、ウイルスのよう、の一語だった。

   結局、その拡散はおよそ丸2日間にわたって続き、回答数は最終的におよそ7万、ツイッターでの言及数は確認できただけで7000件近く、フェイスブックでのシェアも1万5000件超。クイズというコンテンツの特性を生かした今まで体験したことのない「バズり方」は、少なからぬ刺激となった。

「あとは、これが狙って出せるようになればいいんですけどね」

   運営チームはそんな軽口を叩きつつ、ただいま2匹目のどじょうを探している。