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「米ハフポス」創設者が退任 アリアナ氏の「次なる関心事」

   米ニュースサイト「The Huffington Post(ハフィントンポスト)」は、共同創設者で米国版の編集長を務めていたアリアナ・ハフィントン氏(66)が退任することを明らかにした。米ブルームバーグなどが2016年8月11日、報じた。

   アリアナ・ハフィントン氏は2003年の米カリフォルニア州知事選に、アーノルド・シュワルツェネッガー氏に対抗して出馬。その後、ハフィントンポストを2005年に創設。09年にはフォーブズ誌の「メディア界の最も影響力のある女性」や、ガーディアン紙の「メディア界の100人」に選出されており、その影響力は大きい。

  • 創設して11年。アリアナ・ハフィントン氏の次の一手は……
    創設して11年。アリアナ・ハフィントン氏の次の一手は……
  • 創設して11年。アリアナ・ハフィントン氏の次の一手は……

日本版は2013年にスタート

   ハフィントンポストは、米国のリベラル系ニュースサイトで、さまざまなコラムニスト(ブロガー)の執筆や、オンラインメディアからのニュースをまとめて配信。政治やメディア、ビジネス、エンターテイメント、生活・スタイル、自然環境などの題材を幅広く扱うことで人気。2012年には、優れた報道などに贈られるピュリツァー賞を受賞した。

   米国版のほか、英国やカナダ、フランス、スペイン、イタリア、ドイツなどに展開していて、日本版は13年4月に朝日新聞社との合弁会社「ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン」を設立してスタート。世界中で1億8000万人超が利用しているとされる。

   経営では、2011年2月に米インターネット大手のAOLが3億1500万ドル(約319億円)で買収。15年6月には、そのAOLが米通信大手のベライゾン・コミュニケーションズによって買収され、現在はベライゾンのメディア事業の一角を構成している。

   アリアナ・ハフィントン氏は、ハフィントンポストの創設者の一人であり、米国版の編集長として有名。また、トヨタ自動車のハイブリッドカー「プリウス」に初期のころから乗っていたり、オーガニックフードが好きだったりするというから、環境問題に関心を寄せていることがうかがえる。

   そんなハフィントン氏の関心事に、新たに「働き方」が加わったようだ。ブルームバーグによると、同氏はハフィントンポストの運営を続ける意向だったが、「自らのベンチャー企業である『スライブ・グローバル』に注力することを決意した」と、創設から11年になるハフィントンポストを退任する理由を伝えている。

   すでに投資家から関心が寄せられ、スタッフも採用したとし、新たに健康関連のサイト「Thrive」を、11月にもオープンする予定。「健康的な働き方」を広めるためのコンサルティングなどに専念するとされる。

「働き方改革」に取り組む企業、日本では3割超

   アリアナ・ハフィントン氏は2016年4月、世界約70か国でクルマの配車サービスを運営する米Uberの取締役に就任している。一般に、配車サービスのドライバーは男性が多く、セクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントなど、女性ドライバーには働きづらい職場環境といえる。もしかしたら、こうしたことがハフィントン氏の「働き方」への関心を高めた可能性がないとはいえない。

   一方、日本でも政府が「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を制定。その取り組みに向けて、最近は「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」が「働き方」のキーワードの一つとして注目されはじめている。

   働き方への意識や職場環境が、女性の社会進出や非正規雇用者の増加などの変化に適応しきれずに、仕事と生活が両立しにくいのが現実。誰もがやりがいを感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育てや介護の時間や、家庭や地域、自己啓発などにかかる時間をもてる「健康で豊かな生活」ができるよう、「働き方改革」が求められている。

   NTTデータ経営研究所の「働き方変革 2016」(有効回答者数1157人、2016年5月20日発表)によると、働き方改革に取り組む企業はこの1年で約1割増えたものの、なお32.1%にとどまる。たとえば、育児や介護を抱える人への休暇や勤務時間の短縮など、「健康で豊かな生活」への対応を迫られている企業は多いようで、ハフィントン氏の「出番」は少なくないのかもしれない。