2024年 4月 19日 (金)

「ウィキ」の「寄付バナー」がデカすぎ 「広告にしたら?」の声、元管理者にぶつけると...

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   世界最大のオンライン百科事典「ウィキペディア」。その日本語版サイトに登場した新たな「寄付募集バナー」が、SNS上で「サイズ的には過去最大」「邪魔すぎる」などと話題になっている。なかには、「広告を出さない理由がわからん」との声までみられる。

   そこでJ-CASTニュースは今回、ウィキペディア日本語版の『管理者』(ページの編集を一時的に止める『保護』など特別な権限を持つユーザー)の一人として約5年活動していた男性に、「ウィキペディアが広告を載せない理由」について聞いた。

  • ウィキペディアが「お願い」を続ける理由とは・・・
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「もう広告貼ったほうがいいんじゃないか」

   2001年に英語版や日本語版などが開設されたウィキぺディアは、非営利団体のウィキメディア財団が運営するウェブサイト。誰もが自由に記事を執筆できる「自由な編集方針」に基づき、幅広いジャンルの項目を網羅。掲載されている記事の数は、日本語版だけでも100万本を超える。サイト上に広告を掲載せず、全ての運営費を「寄付」で集めていることでも知られる。

   そんなウィキペディアの日本語版サイトに、16年9月7日朝頃から「寄付のお願い」を呼び掛ける黒塗りのバナーが表示されるようになった。バナーはかなりの大きさで、スマートフォンのブラウザで閲覧した場合には画面の半分近くを占めるほどだ。

   過去にもこうした寄付募集の呼びかけはウィキペディア上に出た例があるが、今回のバナーは「さすがに邪魔すぎる」などとネットユーザーの不満が噴出。ツイッターなどには、

「サイズ的には過去最大」
「広告年々でかくなっていってない?」
「デカすぎてびっくりした」

といった批判が相次ぐことになった。なかには、「もう広告貼ったほうがいいんじゃないか」「そのスペースに広告載せとけ」などとして、同サイトが開設以来続けている「広告不掲載」の方針に疑問を呈する声も目立った。

   だが、ウィキペディア記事の編集管理については、基本的には全て一般のネットユーザーが無償で行っている。不適切なページの『削除』や、自由な編集を一時的に止める『保護』など、「読者が気持ちよく利用できるようにする」作業も、ネット上での信任投票で選ばれた『管理者』と呼ばれるユーザーが担当。日本語版では、8日時点で49人の管理者が作業にあたっている。

   このように、サイトを構成するほとんどの要素が「ユーザーによる自治」で成り立っているウィキペディア。それでは、財団が集めている「寄付金」は、いったい何に使われているのだろうか。

広告掲載は「ウィキペディアを崩壊させる」

   2007年から12年まで「海獺」(らっこ)というアカウント名でウィキペディア日本語版の「管理者」を務めた経歴を持ち、過去に複数のメディアから取材を受けたことがあるという男性は16年9月8日、J-CASTニュースの取材に、

「集めた寄付金のほぼ全てがサーバー維持などにかかるシステム管理費と、ウィキメディア財団への訴訟などに対応する専門スタッフの給料に使われているそうです」

と説明する。そのほか、ウィキペディアが全世界で実施するイベントの助成金などに使われる例もあるそうだ。

   寄付を求めるバナーについては、海獺さんの元にも以前、「どうすればユーザーから募金が集まるようになるか」のアドバイスを求めたアンケート協力の依頼が、ウィキメディア財団の募金活動チームから届いたことがあるという。

   また、ウィキペディアが広告を掲載しない方針を続けている理由については、

「財団が掲げる編集方針の1つである、中立的な観点を自己否定することになるからです」

と説明する。海獺さんによれば、自治を重んじるウィキペディアにおいて、記事の編集方針は「トップダウン形式で財団がユーザーに要求した唯一のものといえます」。こうしたルールを自ら反故にしてしまう広告掲載という選択を、財団がとることは「まずありえない」と話した。

   海獺さんは一時間弱に及ぶ電話取材の終わりに、「個人的な思いになりますが」と断った上で、

「仮に広告を載せることになった場合、記事の執筆や編集を行うユーザーはサイトから離れるでしょう。広告掲載はウィキペディアを『崩壊』させると思いますよ」

とも話していた。

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