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産経「別冊正論」が「霊界はハッピー」 編集長が語った「日本の美点」との関係

   「霊性・霊界ガイド」「あの世を感じて生きる」「霊界はハッピー」――スピリチュアル雑誌のようなタイトルが表紙に踊るこの雑誌はなんと、季刊の保守系オピニオン誌「別冊 正論」(産経新聞社)だ。

   最新号でフォーカスしたのは、東アジアの世界ではなく「物質世界の向こう側」(表紙より)。発売後から、ネット上を中心に「イメージが変わった」と話題になっている。J-CASTニュースは同誌編集長に、気になる特集の意図を聞いた。

  • 読者の反響は大きい
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「正論のイメージが変わりました」

   16年11月21日(首都圏など)発売の「別冊 正論28」は読者に衝撃を与えた。表紙にあしらわれたのは、タレント・壇蜜さんの写真。壇蜜さんは巻頭インタビューにも登場し、死後の世界や自らの死生観を語った。

   続く記事も「異例づくめ」だ。ノンフィクション作家で僧侶の家田荘子さんが吉原遊郭で命を落とした遊女の霊に導かれて吉原神社を参り、音楽家・つのだ☆ひろさんが兄じろうさんの身に起こったポルターガイスト現象を振り返っている。

   そして、村上和雄・筑波大名誉教授が「すべての生物のDNAを書いた」という「現代の科学では証明できない」物質「サムシング・グレート」を熱く解説する。

   編集部名義の記事も、「ぼち墓地散歩」と称して東京都内の墓地を散歩したり、創価学会や幸福の科学など新宗教の成り立ちを紹介したり、と普段の「正論」にないテイストだ。

   日韓、日中関係や歴史認識問題など硬派なテーマを中心に扱ってきた同誌。これまでのイメージを覆すような内容に、ツイッターで

「新たな次元に突入した」
    「正論のイメージが変わりました」
    「生まれてはじめて正論を買ってしまいそう」

と大きな反響が寄せられた。

「大っぴらに言えない空気」にとらわれることなく

   一体なぜ、こうした特集を組んだのか。「正論」の八並朋昌編集長はJ-CASTニュースの22日取材に、前号「『美しい日本』ものがたり」(7月22日発売)で「日本の美点」を取り上げたことがきっかけだったと明かす。

   前号では、現在に続く「日本の美点」や「戦後著しくねじ曲げられ、誤解されている戦前の事物、人物」を取り上げる中、神道や仏教について触れた。

   そんな経緯もあり、

「(日本の美点とは)人々が目に見えぬもの(たとえば神や仏など)への畏れを持っていることではないか。その畏れが信仰心となり、宗教を形づくり、人々自ら霊性をそなえ、霊界を感じてきたのではないか。それは現在の日本人にも受け継がれているのではないか」

と考えるようになったという。

「霊性や霊界とはどういうものか、死とは何か、あの世はどういうところか、葬送・埋葬はどうなっているのか、そして『畏れ』『信仰心』を人はどうしているのか、などを改めて見つめたいと考えました」

八並編集長はそう振り返る。とはいえ、読者の反応はさまざまだ。発売前のチラシを見た「正論愛読者」の30代男性には「保守論壇を支える月刊正論の系列誌で硬派なテーマを取り上げてきた別冊正論が壇蜜とは何だ」と激しく叱られた。

   一方、「思い切ったテーマだ、新聞社が出す雑誌で霊界をテーマにするとは...。読み応えがありそうで勉強になる」(50代男性)、「私もあの世はあると漠然と思っている方でしたが、知らないことがいろいろ乗っているので、これからじっくり読みたい」(40代女性)といった称賛の声も寄せられているという。

   取材の最後、八並編集長は

「現在の日本には『霊魂』や『あの世』を感じたり信じたりしても、大っぴらに言えない空気があるように思います。『別冊 正論』はタブーを気にせず、とらわれることなく、必要なこと、大切なことを、勇気をもって問いかけていく所存です」

と意気込みを述べた。