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朴大統領は弾劾から復活? 韓国「政・司法界」の前例

 

   朴槿恵(パククネ)大統領の弾劾訴追案が2016年12月9日午後、国会本会議で可決された。朴氏は職務停止となり、憲法裁判所が180日以内に罷免の是非を判断することとなった。

 

   韓国での弾劾訴追案の可決は、2004年の盧武鉉(ノムヒョン)大統領以来。盧氏の時は憲法裁が弾劾訴追を棄却したが、朴氏はどうなるか。カギを握るのは「世論」だ。

  • 朴槿恵大統領の今後は
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可決ラインを大きく上回る賛成票

 

   弾劾訴追案を提出したのは、野党3党と無所属の172人だった。可決には国会議員の3分の2にあたる200人以上の賛成が必要なため、与党の「非主流派」の投票に注目が集まっていた。結果は賛成234人、反対56人。可決ラインだった28人を大きく上回る62人が賛成票に回ったことになる。

 

   これにより朴氏の大統領権限が停止され、憲法裁判所は最長180日間の審理に入る。9人いる判事のうち6人以上が賛成すれば弾劾が確定し、朴氏は失職する。その場合は60日以内に大統領選が行われる。

 

   朴氏は6日、与党幹部との会談で「弾劾訴追案が可決された場合は、憲法裁判所の審理を見守り、国と国民のために淡々と進む覚悟はできている」などと述べたと報じられている。今後は、審理過程の中で「無実」を主張していくことになりそうだ。

 

   韓国では2004年3月、盧武鉉大統領(当時)が弾劾訴追されている。選挙前に中立を守らず、実質的に与党を支持する発言を繰り返したことや、側近の不正資金問題に対する責任を理由にしたもので、国会で可決された。

 

   ところが憲法裁は5月、盧氏の違法行為は認めつつ、罷免するほど重大な違反ではないと結論付けた。弾劾訴追は棄却され、盧氏は大統領に復帰した。

 

   朴氏も今回、弾劾が棄却される可能性はゼロではない。だが、盧氏の時と比べると、国民の受け止め方は大きく異なる。そしてこの世論の動向は、韓国の司法判断の重要なポイントとなり得る。

盧氏の弾劾可決「間違ってる」7割

 

   04年3月当時の世論調査によると、盧氏の弾劾案可決について「正しかった」とする回答は21%にとどまり、「間違っている」が76%にのぼった。憲法裁に対しても「弾劾反対の決定を下すべき」とする回答が75%に達していた(中央日報調査より)。

 

   当時の国民の目には、盧氏に対する弾劾案発議は、野党ハンナラ党と新千年民主党が総選挙直前の「党利党略」のために行ったものと映っていたのだ。

 

   そのため、世論は弾劾に反発した与党ウリ党を支持する流れとなり、翌4月の総選挙では、ウリ党が議席を3倍以上に増やして第1党となった。これが事実上の「大統領信任」とみなされ、1か月後、憲法裁は弾劾を棄却した。この時、世論の動向は憲法裁の判断でも重要なポイントの1つになっていた。

 

   「世論」という点から朴氏の現在を考えてみると、挽回は極めて難しそうだ。政治スキャンダルが取り沙汰されて以降、首都ソウルでは朴氏の退陣を求める大規模デモが毎週のように行われてきた。韓国ギャラップが16年12月9日に発表した世論調査結果によると、「弾劾賛成」は81%となり、反対の14%を大きく上回った。支持率は前週より1ポイント増の5%だった。

 

   今回の弾劾可決について、菅義偉官房長官は9日の会見で、「本件は韓国の内政に関わることなので、政府としてコメントは差し控えたい」とした上で、「日本にとって韓国は戦略的利益を共有する最も重要な隣国。様々な分野における日韓協力というものをしっかり進めていくということには変わりない」と述べた。