トヨタ労組「ベア要求」の深謀遠慮 グループ内賃金格差との関係

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   トヨタ自動車労働組合(鶴岡光行委員長、約6万8000人)は、2017年春闘で、ベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分として月額3000円を求める執行部案をまとめた。ベア要求は4年連続で、2016年春闘と同水準になる。ニッポン製造業のトップランナーであるトヨタ自動車の労使交渉は、国内大手企業の春闘の相場感に与える影響が大きいだけに、17年春闘は3000円の要求に対する労使の攻防が焦点となりそうだ。ただ、トヨタ労組としては、グループ内の賃金格差是正に取り組むことも引き続き課題になる。

   トヨタ労組は17年1月末に執行部案として組合員に提示し、2月に正式決定する。既に上部団体である全トヨタ労働組合連合会(315組合、約33万9000人)は16年12月19日、加盟するトヨタグループの労働組合の幹部を集める会議を愛知県内で開き、「ベア3000円以上」を要求する方針を確認した。17年1月半ばの「全ト」の中央委員会で正式決定する。全トとしてのベア要求も4年連続で、16年春闘と同水準。また、自動車メーカーなどで構成する産業別労組の自動車総連も12月16日、「ベア3000円以上」を要求する方針案を確認している。

  • グループ各社の事情も頭を悩ませる
    グループ各社の事情も頭を悩ませる

2016年春闘と同水準

   さらには、電機メーカーの労働組合でつくる産業別労組「電機連合」も12月22日、17年春闘では定期昇給相当分を確保した上で3000円以上のベアを統一要求するとの方針案をまとめた。16年春闘と同水準で、上部団体の金属労協の方針を踏まえたものとなっている。言ってみれば産業界全体に「要求ベア3000円」の波が広がっているわけだが、こうしたなかでトップランナーであるトヨタの単組がきちんと「ベア3000円の要求」を決めることは、全体の弾みになるというわけだ。

   トヨタの2016年春闘は、16年3月期連結決算が過去最高益を更新したものの、3000円のベア要求額の半分の1500円で妥結した。16年初頭から世界経済の変調を受けて円高傾向が続いたことで、東日本大震災などの逆風を乗り越えて続いた近年の右肩上がりの状況について「経営環境の潮目が変わった」(豊田章男社長)ため、労使が歩み寄って半額で妥結したといえる。

   ただ、「1500円」にはトヨタグループ内の賃金格差を縮小しようという意図もあった。トヨタ本体を1500円という超えやすい水準にあえて抑えることで、トヨタグループ各社に思い切った賃上げを促したということだ。政府の賃上げ要請に応える形で15年春闘では4000円のベア(要求は6000円)で妥結したが、グループの下請け会社はこの水準について来られず、グループ内格差が開いてしまったことの反省だ。一時金と違ってベアは退職金にまで波及する賃金水準の底上げのため、高額のベア実施に二の足を踏む企業も多いことが背景にある。16年春闘は、「トヨタ本体の回答を超えてはならない」とグループ各社の「習性」を脇に置いて、労使ともに「トヨタ超えを」と下請け企業にハッパをかけた結果、10社程度が「1500円」を超えた。

17年3月期で大幅な減益が予想されるなか...

   一方、17年春闘では、経営環境としてトヨタは17年3月期で大幅な減益を予想している。足元では「トランプ相場」で円安傾向が強まっているとはいえ、年間を通じては前期より円高になった影響が重荷になっている。電気自動車への本格参入や自動運転への対応などで研究開発費もかさんでいる。このため、17年春闘は前年よりも厳しい環境での交渉となる。そもそもベア要求の根拠となる物価上昇率がマイナス基調というのも労働側にはマイナス要素だ。

   こうしたなか、トヨタ労組が要求水準を前年より下げればグループ企業はそれを超えた要求はしづらくなる。こうしたことも勘案し、トヨタ労組としてはひとまず、経営環境からみればやや高めの3000円という要求を維持することで、グループ企業の労組の要求水準を引き下げにくい格好にしたということだろう。今後本格化する労使交渉が注目される。

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