2024年 4月 26日 (金)

豊洲市場の地下水「有害物質」基準超え 仲卸業者激怒、専門家は「理解できない」

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   豊洲市場(東京・江東区)の土壌汚染対策をめぐり、東京都が実施している地下水モニタリング調査の最終結果が2017年1月14日午後、都が開いた外部有識者による「専門家会議」で報告された。

   環境基準を上回る有害物質の検出量が急上昇した今回の調査結果を受け、会議に出席した築地市場の仲卸業者からは、「(過去の調査に)改ざんがあったと疑われても仕方ない」といった厳しい指摘が相次いだ。

  • 築地の仲卸業者からは厳しい質問が相次いだ(画像は東京中央卸売市場のインターネット中継より)
    築地の仲卸業者からは厳しい質問が相次いだ(画像は東京中央卸売市場のインターネット中継より)
  • 調査が行われた豊洲市場の地下空間(共産党都議団9月14日夕撮影・提供)
    調査が行われた豊洲市場の地下空間(共産党都議団9月14日夕撮影・提供)
  • 築地の仲卸業者からは厳しい質問が相次いだ(画像は東京中央卸売市場のインターネット中継より)
  • 調査が行われた豊洲市場の地下空間(共産党都議団9月14日夕撮影・提供)

ベンゼンは最大で基準値の79倍

   9回目となる今回の調査では、全201か所の調査地点のうち、約70か所で環境基準を上回る有害物質が検出された。ベンゼンは最大で基準値の79倍(0.79ミリグラム)、これまで検出例が無かったシアンも、最大で基準値の12倍(0.38ミリグラム)検出された。

   過去8回の調査で、基準値を超える有害物質が検出されたのは3例のみ。いずれも、16年9月に公表された前回調査で、環境基準をわずかに上回るベンゼンとヒ素が、青果棟がある「5街区」の3か所で検出されていた。この時は、ベンゼンが基準値の1.4倍、ヒ素が同1.9倍だった。

   今回の調査では、「5街区」だけでなく調査対象となった地下空間の広い地域で、基準値を大きく上回る有害物質が検出されている。こうした数値について、東京都は、

「急激に変動している箇所が多くあり、採取方法などを確認中のため暫定値とする」

としている。

   だが、目に見えて大きく「悪化」した今回の調査結果には、専門家会議に集まった有識者からも戸惑いの声が相次いだ。会議の座長を務めた、放送大学和歌山学習センター所長の平田健正(たてまさ)氏は、

「(結果に)戸惑っているというのが事実。ずっと不検出だったものが、突然激増したという経験はなく、どう述べていいのか......。なぜ、こういうデータになったのかは理解ができません」

と漏らす。その上で、今回の数値は「慎重に扱うべきで、暫定値とするのは妥当」だと述べ、

「採水方法に問題が無かったのかを含め、どうしてこうした結果になったのか、原因究明を行いたい」

と話していた。

築地関係者「(都の調査は)本当に信用できない」

   有識者さえ戸惑う今回の調査結果をめぐり、質疑応答に入ると「当事者」である築地市場関係者から都の姿勢を問う意見が次々と上がった。最初にマイクを手にとった男性は、

「まったくこれ、どうしてこうなってしまったんだろうという思いです。1回目から7回目、8回目と9回目の調査ではどこが違ったのか、何が違うんだ。過去の調査は惰性でやっていたということか、真剣味が足りなかったということなのか」

とまくし立てるように問い詰めた。続けざまに、基準値を超える有害物質が8回目と9回目の調査で検出されたことについて、

「移転が決まったから数字の扱い方が変わったのか、その辺が疑問です。前回までは安易な形で取り扱われていたのではないか。そもそも、これまで東京都の職員だけの調査をただ信用してやって来たこと自体、おかしいんじゃないか」

と声を荒げた。

   築地市場で仲卸業を営んでいるという別の男性も、コメントは厳しい。

「東京都さん、申し訳ないんですけど、本当に信用できないですね。1回目から7回目まで不検出で、8回目と9回目で急に(有害物質が)出てきて、一体何があったんだと。素人からして見たら、『改ざんがあったのか』『ウソをついた数字を出していたのか』と疑われても仕方がないじゃないですか」

   男性は続けて、多数の場所で基準値超の有害物質が検出された今回の調査結果について、「これじゃあ、実験場みたいですよ」と表現し、

「僕らは、市場を作って欲しいんですよ」

と声を張り上げた。この意見を受けた別の市場関係者も、

「今までの調査がいかにデタラメだったか、誰が見ても分かりますよ。信用できないです、はっきりいって」

と発言。東京都だけではなく、民間業者を加えた「クロスチェック」(複数調査)でないと「安心できない」と強く訴えていた。

   実際、今回の専門家会議では、外部の有識者から(1)「複数の利害関係者」による調査の必要性、(2)採水時に外部の専門家が立ち会うべきなど、調査の信頼性を担保するための提言が複数出た。

科学的に問題なくても「消費者に納得して頂くのは難しい」

   ただ、質疑応答の中では、地下水モニタリングでの有害物質検出は「食の安全には直接の影響がないのではないか」という質問も出た。座長の平田氏は、

「(市場関係者は)地下に汚染があることによって、豊洲市場のブランドに影響が出ないかということを心配されている。科学的に見れば、土壌汚染対策法上では何の問題もないのですが、一般の消費者に納得して頂くのは難しい。安心のために、地下水の調査を続けています」

としていた。

   今回の調査結果を踏まえて、小池百合子・東京都知事は豊洲市場への移転可否について難しい判断を迫られそうだ。日本経済新聞(電子版)などの14日午後の報道によれば、小池知事は調査結果について記者団に、

「想定を超える高い数値が出て驚いている。専門家会議が科学的な分析を進める」

などと話すにとどめたという。

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