2024年 4月 24日 (水)

アオウミガメ、45万円「売約済」で大騒ぎ 「絶滅危惧種」でも売れるのか

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   絶滅危惧種が売られている――。あるツイッターユーザーが投稿した写真に、ネット上が騒然となった。アオウミガメが泳ぐ水槽に「売約済 45万円」と書かれた値札が貼られている。

   写真は拡散され、まとめサイトに転載。「アウトなのでは」「飼育していいの?」と批判が飛び交った。一部の来場者が警察へ通報して静岡南署の署員が駆けつけるアクシデントも起こったという。

  • 「合法的に」売れる理由とは
    「合法的に」売れる理由とは
  • 「合法的に」売れる理由とは

ワシントン条約の「除外規定」

   ツインメッセ静岡(静岡市)で17年1月14日、15日に行われたイベント「ジャパンレプタイルズショー」(以下、「レプタイルズショー」)。レプタイルズは英語で爬虫類のこと。

   03年にスタートし、今回で19回目を迎える。毎年多くの来場者が訪れ、出店業者のブース内で爬虫類を買ったり、爬虫類と触れ合ったりする。14年から冬と夏の年2回開催となり、ファンから「冬レプ」「夏レプ」の愛称で親しまれている。

   そんなレプタイルズショーで今回、最も注目を集めたのは、「生きものや 菊家」(静岡市、以下「菊家」)だった。同店の目玉商品が、45万円のアオウミガメだったからだ。

   ウミガメの泳ぐ水槽は物珍しさから来場者に写真撮影され、SNSに投稿された。すると、

「アウトなのでは」
「飼育していいの?」
「売買は原則禁止では?」

といった反応が噴出。そうした投稿がまとめサイトに転載され、さらなる批判を呼んだ。

   確かに、アオウミガメを含むウミガメ7種類(アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ、オサガメ、ヒメウミガメ、ヒラタウミガメ、ケンプヒメウミガメ)の譲渡(あげる、売る、貸す、もらう、買う、借りる)は原則禁じられている。ワシントン条約などを根拠にする「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(「種の保存法」)で保護されているためだ。

   しかし、「除外規定」もある。環境省によると、ワシントン条約の登録前であること、養殖などの手段で国内繁殖されていること、関税法の輸出入許可を受けていることのいずれかを満たせば、環境省に委託された「自然環境研究センター」(東京都)への事前登録で譲渡可能になるのだという。

   またこれに加え、各都道府県の海区漁業調整委員会が、漁業法と水産資源保護法に基づき採集を認めることもあるという。

反響大きすぎて、販売・展示を中止

   実は、菊家のアオウミガメは、漁業調整委員会の許可を受け、合法的に採集されていた。J-CASTニュースが取材した菊家の担当者は、採集場所は沖縄県で、業者を通じて仕入れたという。

   仕入時には、警察や水産庁にお墨付きをもらったり、漁師が沖縄海区漁業調整委員会から取得した「ウミガメ採捕承認証」のコピーを見たりと、「合法性」を十分確認しているという。

   それだけに

「正直なところ、ここまで大事になるとは想像していませんでした。事前にウミガメの販売に関わる法令等を各方面に確認して『合法』という回答を頂いていましたので正直驚きました」

と振り返る。

   一般客だけでなく、動物園や水族館にも爬虫類を販売している同店。レプタイルズショーに来場する全国の動物園・水族館関係者にアピールするべく今回、他の業者があまり扱わないウミガメを思い切って販売した。

「今後の取引ができるきっかけとなれば良いなという短絡的な考えから、『一般の皆様にペットとしても誰にでも販売している』という誤解を与えてしまった」

   ちなみに、ウミガメは結局売れなかったらしい。

「いくつかお問い合わせはいただきましたが展示していた個体は売れていません。あまりにも反響が大きかったため売約と表示して販売を停止しました。そして、イベント初日に展示を取りやめました」

「食用」「はく製用」でも採集OKとなるケースも

   レプタイルズショーの主催企業「レップジャパン」(静岡市)も、J-CASTニュースに対して、承認証の写真を公式フェイスブックページに投稿し、「このウミガメの商取引は合法」だとしている。

   とはいえ、レップジャパンの担当者は、こうも話す。

「アオウミガメ、アカウミガメに関しては確かに、デリケートな部分があります。個人的に、衆人環視の場で販売するのは、やや刺激が強すぎたのではないかと思いますが、そこは業者の節度の問題になるので口出しできません」

   担当者によると、レプタイルズショーでウミガメが販売されたのは今回初。一部の来場者が警察へ通報して静岡南署の署員が駆けつけるアクシデントも起こったという。

   ちなみに、沖縄海区漁業調整委員会は「食用」「はく製などの工芸品」「展示用」「試験研究用」の4つを主な条件とし、頭数制限つきでウミガメの採集を認めている。ただ、食用やはく製用として漁師が採集したものも、と殺処理は業者に任されることが多いと明かす。そして漁師から業者にわたったウミガメは、最終的にどう使われたのか把握できていないという。

   食用やはく製用での採集を認める理由、ウミガメの頭数管理方法について、同委員会を運営する沖縄県農林水産部は「食や工芸といった伝統文化を守っていくためです。もちろん、採集頭数や譲渡先の情報は承認証の交付者から報告をうけています」と話した。

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