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安倍首相「読売新聞熟読を」発言 「黙殺」した新聞と「見出し」にした社

   安倍晋三首相が、2020年までに憲法を改正して施行したいとする自らの発言について、国会での具体的な答弁を拒んだ。国会では「首相」として答弁しているのに対して、改憲をめぐる意見は「自民党総裁としての発言」だというのが理由だ。そこで安倍首相が口から飛び出したのが、発言が掲載されている読売新聞を「熟読していただいてもいいのでは」という言葉だ。

   こういった特定の媒体の熟読を勧めるような答弁は異例で、大半の大手新聞は発言を取り上げたが、「黙殺状態」の社もあった。

  • ほぼ同時期に行われた夕刊フジ(左)と読売新聞(右)の首相インタビュー。その内容は大きく異なっている
    ほぼ同時期に行われた夕刊フジ(左)と読売新聞(右)の首相インタビュー。その内容は大きく異なっている
  • ほぼ同時期に行われた夕刊フジ(左)と読売新聞(右)の首相インタビュー。その内容は大きく異なっている

「新聞読めって言うのかい!」「そんなバカなことないでしょ!」

   安倍氏は憲法記念日にあたる2017年5月3日の読売新聞朝刊1面のインタビューや、同日に開かれた改憲派の集会に寄せたビデオメッセージで、2020年までに憲法を改正し施行を目指す意向を表明した。

   この発言は5月8日の衆院予算委員会で取り上げられた。発言の真意を問う長妻昭衆院議員(民進)に対して、安倍氏は

「国会における政党間の議論を活性化するためのもの」
「大いに国会両院の憲法審査会において各党間で是非議論していきたい」

などと答弁。改憲の具体的内容についての答弁がないことに

「なんで国会でおっしゃらないのか」

といらだつ長妻氏に対して、安倍氏は

「自民党総裁としての考え方は、相当詳しく読売新聞に書いてありますから、是非それを熟読していただいてもいいのでは」

と答弁した。すると議場は、

「新聞読めって言うのかい!」
「そんなバカなことないでしょ!」

などと紛糾し、浜田靖一委員長(自民)は

「一部新聞社の件等々あったが、それはちょっとこの場では不適切なので、今後は気をつけていただきたい」

と、その場を収めた。

夕刊フジにも首相インタビューは掲載されたが...

   翌5月9日の朝刊各紙(いずれも東京最終版)では、朝日、毎日、読売、日経が安倍氏の「読売新聞」をめぐる発言を伝えた。朝日と毎日は見出しにも「読売」発言を取り上げた。一方、産経新聞は、2面で「改憲発言 『議論活性化のため』」の見出しで首相答弁の内容を伝えたものの、大手5紙では唯一「読売新聞」の4文字が登場せずじまいだった。

   読売新聞の首相インタビューは4月26日に約40分にわたって収録され、その前日の25日には、産経新聞が発行する夕刊フジの単独インタビューにも応じていた。このインタビューは5月4日付(5月2日発売)の紙面に「北の核・ミサイル放棄へ 国民の平和な暮らし守る」の見出しで掲載されたが、その中で安倍氏は憲法について

「憲法9条があっても、拉致被害者の横田めぐみさんの人生を守ることはできなかった。北朝鮮に日本国憲法を渡して、『この通りにやってくれ』と言っても無理だ」

などと述べた程度で、具体的な改憲論には踏み込まなかった。翌日に収録された読売インタビューと比べれば、ニュース価値は雲泥の差であることから、安倍首相は産経を「袖に」し、その結果、産経の紙面では安倍首相の「読売新聞」発言が「黙殺」された、と受け取る向きもあるようだ。安倍氏の「読売新聞」発言は、9日(10日付)の夕刊フジ(AB統合版)にも登場しなかった。