2024年 4月 20日 (土)

岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 銃規制支持は「社会主義者」という感覚

   前回、フロリダ州の高校銃乱射事件を受け、銃規制について私が書いた記事「教師に銃で生徒を守らせる大統領」の最後で、クリス(70代男性、フロリダ州ダニーデン在住)は、次のように語った。

「個人が銃を持つ権利は守られるべきだし、ほとんどの銃保持者は、きちんと銃を管理している。精神疾患のある人の銃保持や、アサルト銃は禁止すべきだ。銃規制に反対する人たちは、何かひとつ規制して取り上げられたら、ずるずるとすべて規制されてしまうと恐れている。
銃規制を求めて今、全米の高校生たちが怒り、動き出した。こうした若者たちが、やがて投票できる年齢になり、彼らや女性たちがさらに声をあげ、銃規制はこれから徐々に強化されていくはずだ。でもそれには、10年、20年と長い年月がかかるだろう」
  • クリスが住むフロリダ州ダニーデンの中心部
    クリスが住むフロリダ州ダニーデンの中心部
  • クリスが住むフロリダ州ダニーデンの中心部

クロゼットに立てかけた銃

   日本人にはわかりにくい「銃所持を支持するアメリカ人の思い」を、理解できるヒントがあるかもしれないと思い、私はクリスにもっと話を聞いてみることにした。

   初めて出会った時、クリスは私の耳元に口を近づけて、「I love Trump.(私はトランプが大好きなんだよ)」とささやき、いたずらっ子のように笑った。

   彼は銃のある家庭で育ち、子供の頃から父親に狩猟に連れていってもらったという。

「鹿が繁殖しすぎているから、狩猟しなければならない。鹿肉をホームレスの人たちに配給するプログラムもある。スポーツの射撃は多くの人の娯楽になっているし、オリンピック種目にもある。銃はいいものだ(Guns are good.)」

   妻と住むこの家にも、保身や狩猟のための銃があるという。

   「見せてもらえませんか」と聞くと、クロゼットを開けたところに立てかけてある銃を手に取り、見せてくれた。

   子供の時にも、手の届くところに銃はあった。自分の子供にも孫にも、銃を隠しはしない。でも、鍵はきちんと本棚のブックケースの中に隠してあるという。

   保身のためにクリスが銃を使ったことが、一度だけあった。6、7年前のことだ。午前1時頃、自宅の屋根の上で足音がした。まだ起きていたクリスは、ショットガンを手に外に出た。人影に銃を向け、「飛び降りろ。逃げたら撃つぞ」と叫んだ。

   男は飛び降り、地面に身を伏せた。妻が警察に電話し、男は手錠をかけられた。背が高くがっしりした35歳の白人だった。

「さっき君が来た時に私が電話で話していた男は、金持ちなんだが、ミシガン州の家で夜、寝ていると、男2人が侵入してきた。気づいた彼は、『俺はショットガンを持ってるぞ』と脅し、駆けつけた警察官が逮捕した。保身のために銃を持つ人は多い。私の車の修理をしてくれる男に、現金を狙われないのかい、と聞いたら、ポケットから拳銃を取り出して見せたよ。
この国はドラッグが大きな問題なんだ。テレビでもパソコンでも盗めるものは盗み、金に換えて、ドラッグを手に入れるんだ。我が家には金になる絵画もある。パソコンがあるのも、窓の外から見えるだろう。買った時には2千ドルしたこのパソコンは、盗んで売っても2百ドルくらいだろうが、それでも現金がすぐに手に入る。覆面をして銃を手に家に侵入してきた男が、何をしでかすかわからない。たかが2百ドルのために殺されるかもしれない。相手に撃たれる前に、妻や子供や孫を守るために相手を撃つしかない」
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