2024年 4月 19日 (金)

漫画村ブロッキング、作家と出版社の微妙な差 ちばてつや「諸刃の剣」声明の内幕とは

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   「あしたのジョー」などで知られる漫画家のちばてつやさんが、2018年4月14日、政府が短期的な緊急措置として発表した、「漫画村」をはじめとする海賊版サイトの接続を遮断するブロッキングについての声明を公式サイト上で表明した。

   ちばさんは声明の中で、政府の決定を「力強さを感じました」としながら、作家の立場から「表現の自由」と「知る権利」の2点を重視し、「諸刃の剣になりかねない」とブロッキングへの懸念をのぞかせた。

  • ちばてつやさんが「懸念」示す(画像は公式サイトから)
    ちばてつやさんが「懸念」示す(画像は公式サイトから)
  • ちばてつやさんが「懸念」示す(画像は公式サイトから)

「守るべき理念と、酷い現実のはざまで身を引き裂かれる思い」

   ちばさんは、13日に知的財産戦略本部の打ち出した海賊版サイトのブロッキングを促す措置に関し、

「まずは日本が国をあげて『マンガの危機』に真剣に向き合ってくれていることに、とても心強さを感じました」

とつづったが、漫画家、表現者としての立場から

「しかし僕たちは表現者として常に大切にしてきた『表現の自由』や『知る権利』において、今回の『ブロッキング』という手段が諸刃の剣になりかねない、と危惧してもいます」

と、政府が示した接続遮断の方針への懸念を示し、慎重な姿勢を取った。続いて、

「だからなお一層、そんな手段すら検討せざるを得ない『海賊版サイト』の存在には、強い憤りを感じるのです。才能あふれる若い漫画家の皆さんが今、本当に苦しめられています」

と強い怒りをにじませながら、

「その酷い現実を見るほどに、守るべき自由の理念と、綺麗事では済まないかもしれない醜い現実のはざまで、身を引き裂かれるような思いを味わっているところです」

と苦悩をのぞかせた。

漫画家と出版社で異なる「ブロッキング」の見方

「海賊版サイトなど悪質な侵害行為に関しては、これからも刑事・民事両面で厳しく対応してまいります」(集英社)
「海賊版サイトを始めとするあらゆる権利侵害行為に対して、講談社は今後も刑事告訴や民事での提訴など断固たる姿勢で臨んでまいります」(講談社)
「海賊版サイトをはじめとする悪質な著作権侵害行為に対して、当社は今後も関係各機関と 連携しながら断固として戦う姿勢で厳しく対応してまいります」(KADOKAWA)

   政府が13日に方針を明らかにして以降、出版社は立て続けにブロッキングについての声明を発表している。内容は共通しており、ブロッキングを海賊版対策の一歩と評し、今後も厳しい対応を続けるというものだ。

   一方、ちばさんや、漫画家の業界団体である一般社団法人マンガジャパンは、

「しかし僕たちは表現者として常に大切にしてきた『表現の自由』や『知る権利』において、今回の『ブロッキング』という手段が諸刃の剣になりかねない、と危惧してもいます」(ちばさん)
「今回『違法サイトブロック』の措置が取られる動きについて、『生み出す側』としてはとても心強い支えだと受け止めました。しかし、同時に、そのような形でブロックすることが『表現の自由』を損なう方向につながるのではないかという不安も感じています」(マンガジャパン)

と、ともに「表現の自由」の観点から、海賊版サイトのブロッキングそれ自体に慎重な姿勢を取っている。

   ちばさんは漫画家の団体である公益社団法人漫画家協会で理事長を務めているが、団体としての声明は16日現在発表されていない。このことに関して、同協会の理事を務める漫画家の赤松健さんはツイッターで、

「公益社団法人『日本漫画家協会』は、理事会を通さないと公式声明などを出しにくいため、一旦ちばてつや先生が個人として声明を発表」

と見解をつづっており、ちばさんやマンガジャパンの漫画家側と出版社の声明のトーンの違いを

「マンガ系の権利者団体は『政府の発表はとても心強いが、手法(ブロッキング)には不安も』という内容。出版社は『大きな前進であり、今後も厳しく対応していく』としながらも、手法についての言及は微妙に避けた。良いと思う。ここからの入念かつ素早い議論が求められる」

と、まとめた。

   政府はブロッキングを緊急避難措置と位置付けており、それと並行して次期通常国会での成立を目指して法整備を進めるとしている。

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