こんにちは。「ネットニュースの明日」編集部です。
今回のテーマは、2015年4月に発足した日本男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE(Bリーグ)」でした。
まずは山里亮太編集長の感想から。取材してみてどうでしたか? 「千葉ジェッツ対新潟アルビレックスBB戦」は相当楽しんでいましたね。
「何より試合を観て高揚感を感じました。とにかく面白かったです」
富樫選手や島田社長にもお話を聞きました。
「メディアの選択肢が増えた今、そこに柔軟に合わせて、新しい巨大なブームを作るのはBリーグなんじゃないか? と感じました。この時代をバスケが待っていたかのようなどんぴしゃなタイミング。お話を聞くうち、これからの日本でのスポーツ観戦に、新しい歴史が刻まれ始めていると感じました。今試合を観に行くことは、歴史の証人になれることかなと思います」
最後は、Bリーグの歴史やこれからの課題、将来について、雑誌「月刊バスケットボール」編集長の飯田康二さんに、編集部がお話を聞きにいきました。
――今回の取材を通して、山里編集長も私たち編集部員も、バスケットボールの見方が変わりました。「bjリーグ」と「NBL」という2リーグ体制からひとつになったBリーグ。何が1番変わったのでしょうか。
1番変わったのは「外に開かれたこと」だと思います。それまでは、『俺たちは俺たちのバスケができればいいや』という意識が少なからずあったと思うのですが、各チームがまわりを意識し始めて、情報発信の仕方が外を向きました。
少し歴史の話になりますが、Bリーグができるまで、日本のバスケットボール界は混沌とした状態でした。
元々、企業チームによる日本リーグが発展した「JBL」という団体がありましたが、プロ化に消極的な企業チームとプロ化を目指すチームが並存。プロ化を検討するも進展せず、しびれを切らしたチームがJBLを飛び出し「bjリーグ」というプロリーグを立ち上げます。
「bjリーグ」は、企業ではないので設立当初は経済的に苦しくはありましたが、地元に根差しスポンサーを探したり、ファンとの交流を積極的にしたりしながら、地道に頑張っていきました。一方、JBLもプロ・アマ混在の「NBL」を2013年に立ち上げます。千葉ジェッツはこのとき、bjリーグからNBLに加盟しました。この「NBL」と「bjリーグ」という2つのトップリーグの在り方が問題視され、代表チームの国際試合への出場も停止されていたんです。
そこに改革をもたらしたのが、元サッカー日本代表で日本代表監督も務め、Jリーグ初代チェアマンとなった川淵三郎さんです。川淵さんがリーグ統一に乗り出しました。
――そして今のBリーグが出来上がったのですね。
はい。今のBリーグの仕組みをつくり、Bリーグの初代チェアマン、日本バスケットボール協会会長を務めました。こうして、リーグや各チームの運営も「外に向けた情報発信」が徹底されるようになりました。
――試合中の演出もそのひとつですか?
バスケットのファンや関係者はNBAを知っている人が大半で、NBAの演出は一種の憧れでもあります。Bリーグの演出もNBAに倣ったところは多いと思います。ただ、今は日本人に合った演出も目立っていると思います。
――どんなところが?
みんなで同じ応援しましょうよ、というのは日本人ならではだと思います。米国では音楽流しておけば勝手に盛り上がりますが、日本ではお客さんみんなが盛り上がれるように、応援の仕方も分かりやすくレクチャーしてくれます。
――そうですね。初めてでも分かりやすくてすぐになじめました。
特に千葉ジェッツさんなんかは、家族連れで来ているお客さんも多く、演出面でも子どもたちを喜ばせることに長けていると思います。子どもたちがバスケに興味を持って、「あそこのチームでプロになりたい」と思ってもらうのはBリーグ成長にとっても非常に大事なことですから。
――ポイントは「子ども」ですね。
ええ。そういった意味では千葉ジェッツさんは、元々地元にある千葉県のバスケットボール協会と上手に手を組んでいると思います。
協会は、小学生や中学生を含め地域のチームを束ねており、千葉ジェッツさんは、地元の協会とタッグを組むことで、子どもたちに向けてのプロモーションや一緒に地域を盛り上げる座組みができた。
つまり、内と外、両方でフォローできるから「厚み」がでていると思います。
――千葉ジェッツのような成功例は他にもあるんですか?
「栃木ブレックス」「琉球ゴールデンキングス」、最近では「レバンガ北海道」さんもうまくいっていると思いますよ。
――飯田編集長からみた次のBリーグの課題はなんでしょうか。
次は「箱」ではないでしょうか。千葉ジェッツさんなんかは1試合5000人が観に来ます。それだけ入ればアリーナはパンパン。自由に行き来するのもままならなくなります。もうひとまわり大きな、1万人前後収容のアリーナは必要でしょうね。
今の「体育館」が悪いわけではありませんが、やっぱり演出にも限りが出てくるし、5000人入れば、経営的にできることは増えるけれど、「箱」がストッパーになっているのかもしれません。
新しいバスケ用のアリーナを作るというと、障害があることは容易に想像がつきますし、なかなか難しいとは思います。ただ、すぐにではないですが、少しずつ前進すると思います。
――今後ですが、興業としてのバスケットボール、日本でも定着するでしょうか。
競技人口はあるので、強化だけでなく普及も大事になります。日本全国でバスケを発信していくチームが増えると、将来バスケットを選ぶ子どもが増えます。
B2やB3のチームであっても近くにいて選手に会えたり、教えてくれたりするのは嬉しいですよね。スター選手ももちろん重要ですが、身近に感じられるスポーツというのも大切。その先に、海外で活躍するスター選手がいるわけですから。
――まさにサッカーがたどってきた道と同じですね。
そうですね。「bjリーグ」は参入障壁を下げて、全国にたくさんのチームができました。「バスケットみてね!」「バスケットってこんなに面白いよ」と、全国津々浦々、いろんなところで声をあげてくれたんです。それが今のBリーグにも好影響を残していると思います。
――家の近くで試合を楽しめて選手と触れ合えて、なおかつ憧れるスター選手がいて、1万人収容できるアリーナが満員になるというのを仮にゴールとした場合、今は何割くらいだと思いますか?
まだ1割くらいじゃないですか。5000人集客する千葉ジェッツさんが"普通"になってほしいんです。現状1番のチームが5000人ですから。たとえば1番のチームが1万人集客できるとなるとまったく違ってくるでしょうね。競技人口は多いですし、女子も強い。期待をしています。
――ありがとうございました。
(続く)