2024年 4月 19日 (金)

記念硬貨?メダル?偽造? 謎の「むつ小川原国家石油備蓄基地」コインを探る

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   見た目は一見記念硬貨なのに、正体は不明――「謎の記念硬貨」が先日から、ツイッターで話題になっている。

   ツイッターユーザーの「ハリジャンぴらの」さんが2019年10月14日にアップしたのは。「むつ小川原国家石油備蓄基地開発事業記念」「日本国」「千円」と刻印されたコインだ。一見、青森県の国家石油備蓄基地を記念した硬貨に見えるが、このようなものが正式に硬貨として発行された記録が残っていないのだ。ユーザーの関心と謎を呼ぶが――。

  • こちらが「むつ小川原国家石油備蓄基地」を記念した「記念硬貨」の表と裏。備蓄基地の絵が完成後の写真と異なることから、基地完成前に作られたのではとハリジャンぴらのさんは推測する
    こちらが「むつ小川原国家石油備蓄基地」を記念した「記念硬貨」の表と裏。備蓄基地の絵が完成後の写真と異なることから、基地完成前に作られたのではとハリジャンぴらのさんは推測する
  • こちらが「むつ小川原国家石油備蓄基地」を記念した「記念硬貨」の表と裏。備蓄基地の絵が完成後の写真と異なることから、基地完成前に作られたのではとハリジャンぴらのさんは推測する

一見すると実在しそうな記念硬貨だが...

   入手経緯についてハリジャンぴらのさんは、J-CASTニュースの取材に対し、10年ほど前に働いていた職場の同僚が、同僚が知人の引っ越しを手伝った際に記念硬貨と共にもたったもので、それをハリジャンぴらのさんが同僚からもらったと答えた。当時同僚が所有していた記念硬貨を換金した際も、これだけは換金できなかったので硬貨ではないのではと思いつつ、そのまま放置していたという。

   むつ小川原国家石油備蓄基地は1969年に小川原湖一帯の開発が決定し、1985年に完成しているから、この時期に作られた可能性が考えられる。コインの大きさは直径40㎜ほどで、500円硬貨より少し大きいくらいとのこと。

   しかし、財務省造幣局のサイトに掲載されている、「記念貨幣一覧」を見ても、1964年の東京オリンピック記念硬貨から現在に至るまでのリストには、むつ小川原国家備蓄基地に関するものは一切ない。造幣局も取材に対し、「記念硬貨一覧が発行したもののすべて」と語る。むつ小川原石油備蓄株式会社もJ-CASTニュースの取材に対し、このようなコインを発行したことはないという。

   ところが、同じデザインのコインはヤフオク!でも出品されたことがある。19年の8月3日から8月10日にかけて出品、落札されていた。ある程度まとまった数が作られたことも想像できる。

互いに食い違う取材結果

   財務省発行の記念硬貨でないとすると、観光地などによくある記念メダルの類だろうか。表面の鳥や青森県をかたどった絵も、やや稚拙な造形は硬貨より記念メダルに近いように思える。全国の観光地向けに広く記念メダル販売機とメダルを製造する茶平工業(大阪市)に、問題のコインの写真を送付して発行したことがあるかを取材したが、

「画像を拝見いたしましたが、これは弊社の製品ではありません。記念硬貨のようなので造幣局以外は製造することはできないのではないでしょうか?貨幣の印があるので造幣局へ問い合わせるのがベストかと思います」

という回答だった。古銭やコインの販売・鑑定を手掛ける「銀座コイン」にやはり写真から鑑定を依頼したが、回答は

「結論から申し上げますと、こちらは貨幣ではありません。私的につくられたメダル的なものであるかと思います。材質等は判断ができません」

というものだった。コイン鑑定業者は「貨幣ではない。メダルでは」と言い、メダルメーカーは「貨幣ではないか」と答える。さらに謎は深まる。

「通貨偽造」でお縄になるか?

   現在ハリジャンぴらのさんらツイッターユーザーの間では、「関係者の間でひそかに作られた記念品」「小川原湖周辺の原野商法で、詐欺の信ぴょう性を高めるために作られた」さらには「パラレルワールドから流れついた記念硬貨」といった荒唐無稽な仮説まで生まれている。今のところ、正体不明と言わざるを得ない。

   とはいえ、コインにははっきり「日本国」「千円」と刻印されている。発行年こそ刻まれていないが、正式な記念硬貨と勘違いされるかもしれない。これはニセ金、通貨偽造罪にあたらないのだろうか。弁護士法人・響の坂口香澄弁護士は取材に対し、以下のように見解を示した。

「実在する硬貨に似せたものを製造すると、通貨偽造罪(刑法148条1項)や模造罪(通貨及証券模造取締法1条)に該当する可能性があります。しかし、実在しない硬貨を製造したとしても、これらの罪に当たることはありません」(坂口弁護士)

とのことである。通貨の偽造は偽通貨の「流通可能性」、すなわち本物と間違えられる可能性が問題になる。偽の通貨で本物の通貨の価値が損なわれるのを防ぐのも通貨偽造罪の目的で、最初から存在しない貨幣を偽造しても、それが本物として流通する可能性が低い、という考え方がある。しかし今回のようなケースが本当にお咎めなしかは解釈が分かれるところで、坂口弁護士は

「今回のように、『記念硬貨かなにかかな?』と思わせるデザインであっても、似ている記念硬貨が発行された記録がない以上、それが通貨として流通するおそれはないと考えられます。したがって,今回見つかった記念メダルを製造することは罪には当たりません。ただし、例えば、言葉巧みにこの記念メダルが記念硬貨であるとして人を騙して、通貨として使用すると詐欺罪にあたる可能性は十分にあります」

とも解説した。

   ※J-CASTニュース編集部では、引き続き「むつ小川原国家石油備蓄基地開発コイン」についての調査を進めております。情報をお持ちの方は、投稿フォーム(https://secure.j-cast.com/form/post.html)などからご一報ください。

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