2024年 4月 25日 (木)

マスク「値上がり」を叩く前に 苦闘する卸業者、原料費「何十倍」も薄利で輸入...世界中で「奪い合い」が

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でマスク不足が続き、一部小売店では価格が平時の10倍程度に高騰する例がある。高額転売が規制された中での値上がりに消費者から賛否の声があがったが、中国からマスクを輸入する業者が、仕入れ価格の高騰に四苦八苦している実態が取材で浮かび上がった。

   大手スーパーに不織布マスクを卸した神戸の企業は「仕入れ値が何十倍にもあがっている」とし、「できる限り輸入コストを抑え、価格交渉も強く行い、できる限り薄利で卸しました」と話す。また、東京で貿易商社に勤め、マスクの中国輸入を手掛ける男性(30)は「中国のマスク工場から見積もり提示が届きますが、とても高いです」と仕入れの内情を明かす。

  • マスクの価格が高騰している(写真はイメージ。記事中の商品とは無関係です)
    マスクの価格が高騰している(写真はイメージ。記事中の商品とは無関係です)
  • イズミヤで販売されていたマスク(写真提供:kk(@kk03068964)さん)
    イズミヤで販売されていたマスク(写真提供:kk(@kk03068964)さん)
  • マスクの価格が高騰している(写真はイメージ。記事中の商品とは無関係です)
  • イズミヤで販売されていたマスク(写真提供:kk(@kk03068964)さん)

「できる限り輸入コストを抑え、価格交渉も」

   関西を中心に85店舗を構えるスーパーマーケットチェーン「イズミヤ」の一部店舗では2020年3月下旬、50枚入り不織布マスクの商品を税抜3980円で販売。同社は23日のJ-CASTニュースの取材に、原料費高騰などの影響で仕入れ値が上がってしまうといった背景を明かしていた。ツイッターでも「高すぎじゃない?」という声の一方、現状のマスク不足に鑑みて「妥当な価格だと思う」と理解を示す声もあった。なお、同チェーン以外でも50枚入りマスクを数千円単位で販売している店があるとの書き込みもある。

   実際に同チェーンにこの商品を卸した輸入業者フクセン(神戸市)の担当者は27日、取材にこう明かす。

「具体的な価格は申し上げられませんが、仕入れ価格はかなり高騰しています。弊社は日本向けにマスクを製造している中国工場から直接輸入していますが、通常時に比べ、不織布を中心とした原料費が何十倍にも上がっています。弊社としてもできる限り輸入コストを抑え、価格交渉も強く行い、できる限り薄利で卸しました。

50枚パック数百円で流通している不織布マスクは、1~2層の薄めのタイプが多いです。弊社が輸入したマスクは不織布を重ねた3層構造で厚みがあります。性能試験ではBFE(細菌濾過率)、PFE(微粒子濾過率)それぞれ99%以上をクリアしています。他社様やネット販売の商品などと比べても、1枚あたりの価格を考えると適正だと認識しております」

「日本で多くの方がマスクを購入できていない状況から、スポット的に」

   50枚3980円だと1枚あたり79.6円。複数の通販サイトから在庫があるマスクの価格情報を集約した、アスツール(東京都渋谷区)のウェブサイト「マスク在庫速報」によると、3層タイプのマスクは1枚あたり70~80円代が多い(27日時点)。中には同50円代のものもあるが、同100円を超えるものも少なくない。

   同社は主に靴の輸入を手掛けているが、「付き合いのある中国工場でマスクを生産しているため、今回優先的に輸入することができました」という。担当者は「中国の感染が深刻化し、多くの工場で輸出自体をしていない時期がありました。現在、中国で感染状況が収まりつつあり、徐々に輸出が再開されるようになりましたが、まだ稼働していない工場もあります。日本で多くの方がマスクを購入できていない状況から、スポット的に輸入したほうがいいと考えました」としている。

   この数日で国内生産が急ピッチで進んでいることから、再度のマスク輸入は予定していないという。

マスク販売の小売店は「非常に勇気のある行動」

   冒頭の貿易商社勤務の男性(30)も、取材に卸業界の事情をこう明かす。

「中国のマスク工場から見積もり提示が届きますが、とても高いです。工場担当者の話では、欧米がオークション形式のように発注をしており、マスクの価格が高騰しているようです。世界中でマスクの奪い合いが起きています」

   実際に中国工場から男性に送られてきた見積書のメールを見せてもらった。1パック50枚入りのマスクで、提示価格は平時の約30倍に値上がりしているという。メールには新型コロナウイルスが世界中に拡大した影響で、マスクの需要が各国で高まっていると説明されている。「消費者の方に供給出来る様に、高い値段でもリスクを抱えて発注出すか、検討をしました」と明かす男性。しかし、最終的にこの見積もりには応じられず、発注は断念した。

   02~03年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した際も、国内のマスク需要が高まり、同社を含む各社が発注を増やした。だが流行の収束に伴い、各社大量の在庫を抱えたという。

   男性は「今回もその様なリスクがある中、在庫を抱えて市場に供給をしようとした方々が、知らない消費者に批判をされてしまうのはかわいそうでなりません」とし、高額でもマスク不足に応えようとする小売店を支持する。

「消費者の方から『高い』という意見が出て企業イメージにも悪影響となってしまう可能性が想定されるなか、マスク不足に対応するため自社でリスクを負い、販売に踏み切ったのは非常に勇気のある行動であったと思います。

今までマスクをつける文化のなかった国も含めて、世界中でマスクの奪い合いが起きておりますので、当然高騰します。原料の高騰についても間違っておりません」

解消には「日本での生産力アップが必要と思います」

   男性は慢性的なマスク不足の現状と、その解消方法について、サプライチェーンの点から次のように指摘した。

「コロナウイルスの収束が見通せない中では、国産マスクの製造が増えない限り安定供給は見込めません。各国が自国で生産したマスクは自国で消費します。

少し前の話では日本の某小売店が中国工場からマスクを出港させようとしたところ、中国政府に没収されたそうです。業界内での噂ですが。

中国以外の国もマスクの輸出に制限をかけています。それくらいひっ迫した状況です。シャープさんがマスク生産をスタートしますが、日本での生産力アップが必要と思います」

(J-CASTニュース編集部 青木正典)

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