「育休とりたいか?」理系男子の反応


2016/2/22 19:30

『思い通りの人生に変わる 女子のための仕事術』著者の竹之内幸子さん
 帝国データバンクが2015年におこなった調査によると、日本における女性管理職の割合は平均6.4%、さらには「女性管理職ゼロ」という企業が50.9%にものぼることが分かっている。
 
 これらのデータを見る限り、「ダイバーシティ」や、そこに含まれる「女性の社会進出」はいまだ道半ばといったところ。「女性の社会進出」は日本社会が今後真のダイバーシティを獲得していくための一里塚だといえる。『思い通りの人生に変わる 女子のための仕事術 会社では教えてくれない女性のためのビジネス作法とルール36』(ダイヤモンド社刊) の著者、竹之内幸子さんにお話をうかがった。

――まずは、竹之内さんが普段どのような活動をなさっているのかについて教えていただけますか。

竹之内:ダイバーシティ推進のための活動の一環として、企業のなかで女性が活躍できるよう、コンサルティングや研修をさせていただいています。
今年の4月から「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」が施行され、301人以上の従業員を抱える企業は女性の活躍推進に向けた行動計画の策定などが新たに義務づけられるため、最近はこれから真剣に取り組んでいきたいと考える企業様向けに、「多様なリーダーシップスタイルを持つ女性管理職」を生み出していくための支援をさせていただくことが増えていますね。

――「多様なリーダーシップスタイルを持つ女性管理職」を生み出すための支援とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

竹之内:女性の管理職候補の方向けに、リーダーシップやキャリアデザインについて学んでいただくための研修をおこなっています。前者については、従来の「私についてきなさい」というトップダウン型のリーダーシップだけでなく、「皆を称えながら、一緒に進むべき方向に導くタイプのリーダーシップだってある。そもそもリーダーシップはリーダーだけに求められるスキルではなく、自分の役割を全うするために、周りを巻き込み目標達成するスキルなんだ」ということを知ってもらいます。後者については、通常の階層別で行うキャリアデザインもありますが、特に、最近企業が力を入れている「育休(育児休暇)前研修」の場合「出産後も働き続ける女性社員の存在は特別なものではなく当たり前」になりつつあることを当事者も認識し「復職後どのような働き方をしたいのか」についてグループワークをしながら考えてもらい、しっかりとした個人のビジョンを持っていただくことを意識しています。実際に復職し育児と仕事を両立させる中で「思いがけないこと」が立て続けに起こり自信をなくす方も出てきます。研修ではそのような方々に自信をつけていただくためのフォロープログラムも入っています。
また、「多様なリーダーシップスタイルを持つ女性管理職」を生み出すためには、そのための土壌づくりも欠かせません。そこで、女性管理職を「育てていく」側に向けてのコンサルティングや研修をすることもあります。

――女性管理職を「育てていく」側というのは男性管理職を指すのですか。

竹之内:現状、男性の方に向けてお話する機会が多いです。ただ、これは必ずしも「男性に向けた研修」というわけではなくて「管理職向けの研修」という位置づけでおこなっています。要するに、これまで「決まったパターンの管理職」しかいなかったという課題を抱える企業様に向け、多様性に富んだ管理職を生み出すための支援をさせていただいているのです。

――日本でも、「ダイバーシティ」や「多様性」といった言葉はごく普通に使われるようになりました。にもかかわらず、依然として日本企業の多くはダイバーシティを実現できていないようにも映ります。竹之内さんにとって「ダイバーシティが実現された企業」とはどのようなものを指すのでしょうか、また、その理想に対して日本の現状はどのような進捗状況にあるのかについてご意見をお聞きかせください。

竹之内:まず私が考える「ダイバーシティが実現された企業」とは「対話のできる組織」です。つまり、一人ひとりが思い込みを捨て、お互いの違いを認め合いながら、しっかりと対話できる組織。
そういう理想に対して、日本の現状はどうなのかと言われれば、「まだまだ」だと思っています。ただ、このような変化というのは、5年や10年でドラスティックに起きるものではなく、長い時間をかけて徐々に変わっていく性質のものだとも思いますね。

――その意味では、ここ10年ほどの間に起きた小さな変化のなかで、竹之内さんが注目しているのはどのようなものですか。

竹之内:男子学生の働き方に対する意識の変化ですね。今の若い人たちは共働きがマストだと思っているし、自分も育児休暇をとるのが当たり前だとも思っている。就職する企業選びにもその考え方が反映されるようになってきています。理系男子を例にとると、約36%の人が「育児休暇を取って、積極的に子育てしたい」と思っているようです(※1)。
背景としては、1992年に共働き世帯の数が専業主婦世帯の数を逆転し、そこから20年近く経ったことが大きいでしょうね。つまり状況の変化に対して人々の意識がようやく追いついてきた。あとは、生涯賃金が上がらない、「1億総活躍社会」になり定年が延びて70歳ぐらいまで働くことになりそう……といった将来的な不安があることも影響していると思います。

――たしかに、それは10年前には考えられなかったことですね。そのように男性側の意識が変化するなかで、日本企業においても自ずと多様性が徐々に実現されていくのかも、と希望を持てます。ところで本書は、特にどんな層の女性に読んでもらいたいですか。

竹之内:あるアンケート調査(※2)によると、「管理職になりたい」と答えた女性が18.7%だったのに対し、「管理職になりたくない」と答えた女性は49.0%にのぼったそうです。つまり、管理職に「なりたい」とも「なりたくない」とも答えていない女性が32.3%いる。この本は、この「どちらでもない」層の女性たちに読んでもらいたいですね。

――本書は仕事から育児まで様々な切り口が扱われています。そのような層の女性に、特に伝えたいメッセージは何ですか。

竹之内:その質問にお答えする前に、まず、なぜこれほど多くの女性が「どちらでもない」と答えたのかに触れておく必要があると思います。男性と女性とでは、脳の仕組み上、「視野の広さ」が異なります。女性の場合、物を見たり考えたりするときに「手前のもの(こと)」に意識が向いてしまいがちですが、男性は空間認識能力が高いことから、奥行きにまで意識が向くといわれています。
この視野、奥行きの違いは、たとえば車の運転にも現れます。私は一つ前の信号しか見ませんが、夫は三つ先の信号まで見て運転するといった具合に。キャリアに関しても同じことが言えて、女性は半年先のことならリアルに考えることが可能ですが、男性は3年先、5年先、10年先のことを考えることに対する心理的抵抗が少ないと言われています。

――なるほど。その違いは大きいですね。

竹之内:言い方が難しいのですが、女性は実際の視野同様キャリアに関しても近視眼的になりがちといえます。ただ、「どちらでもない」というのは、決して「どちらでもいい」と投げやりになっているという意味ではありません。女性は「今、ここ、自分」を大切にしたいという意識が強い。「今、ここ」の自分が幸せであれば、過去の自分も、未来の自分も幸せと考えるわけです。
なので、そういう女性にはぜひ、本のなかにも書いた「65歳の誕生日をイメージしてみる」ということにトライしてみてほしいです。漠然としたもので構いません。65歳になったとき、自分はバリバリ働いていたいのか、それとも子どもや孫たちに囲まれた穏やかな生活を送りたいのか……といったことをイメージするだけでも、見える風景が変わってきます。
もちろん「いきなり65歳のときのことを考えるのは難しい……」と感じる方もいるでしょうから、その場合は「1年後、どういう自分になっていたら、自分で自分のことを好きになれるか」をイメージするだけでもいいと思います。そうすれば自然と「何をすれば、そうなれるのか」「どういうことからなら始められるのか」といった具合に思考できるはずですから。

※1『2015年卒 マイナビ大学生のライフスタイル調査』より
https://saponet.mynavi.jp/enq_gakusei/lifestyle/data/lifestyle_2015.pdf
※2 クレイア・コンサルティング株式会社が2014年6月に実施した調査にもとづいたデータ

(後編に続く)

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