読むべき本、見逃していない?

先進国でなぜ「ダメ男」が増えているのか

  • 書名 男子劣化社会
  • サブタイトルネットに繋がりっぱなしで繋がれない
  • 監修・編集・著者名フィリップ・ジンバルドー、ニキータ・クーロン著 高月園子訳
  • 出版社名晶文社
  • 出版年月日2017年7月25日
  • 定価本体2000円+税
  • 判型・ページ数四六版・342ページ
  • ISBN9784794969682
BOOKウォッチ編集部コメント
 

 あるテレビ局の採用担当者がこんなことを言っていた。「成績だけで採用したら、新卒社員は全員女子になってしまいます」。これはここ数年、特に顕著な傾向だという。

 

 学業だけではない。男女交際でも、例えば婚活パーティの参加者では女子のほうが圧倒的に積極的だという。各種アンケートでも、一度も女性と付き合ったことがない男子は高い数値を示している。就職できず、彼女もできず、自室でゲームやネットを相手に興じて外に出て行かない男子――。ゲーム中毒、草食化、引きこもりの男子が急増し、社会から取り残されているのは、日本だけではなく先進国共通の社会問題だと本書はいう。

 

 いったいその原因は何なのか。高名な心理学者である著者のフィリップ・ジンバルドーと共同執筆者のニキータ・クーロンは、実際に社会から取り残された男子たちや研究者に取材をし、あらゆるデータを検証し、あらゆる側面から今、若い男性にどんな変化が起きているのかを探っていく。

失敗の苦しみがないゲームとポルノに走る

 

 まず家族構成の変化の影響が検証される。核家族化や離婚率の上昇に加え、仕事での拘束時間が増加により、家庭内での「父親不在」が顕在化した。大人への移行期にある少年にとって、大人の男性のロールモデルの存在は、他人に心を開き、他人を信頼できるようになるために重要な意味を持つことがわかっている。父親不在の影響は大きいのだ。

 学校でも大きな変化の波が起きている。理科の実験や課外実習の減少、暗記中心の学習、社会性を育てる休み時間の縮小などで、エネルギー発散の場を失った男子は学校への興味を失っていく。そんな男子が行き着く先は、ネットやゲームの世界である。

 

 男女関係においても、男の役割は多様化した。もう昔のように強い男を演じていればいいというわけではなくなった。優しさや礼儀正しさを求められる一方で、場合によっては強さも求められる男子は、もう男女関係においてどのように振る舞ったらいいのかわからなくなっているというのだ。そんな彼らが行き着くのは現実の恋愛ではなく、決して拒絶されることがないネットとポルノだという。

 極め付きは自己愛の肥大化だという。子供時代から欲しいものを与えられ、トラブルは事前に取り除かれて育ってきた彼らは、辛抱強さも成功のための努力も学んでいない。失敗の苦しみに耐えられなくなった男子は、自分で結末をコントロールでき、拒絶される恐れもない安全地帯、すなわちゲームとポルノに逃げ込むようになった。

 

 本書では、こんな最新の研究結果や統計データ、実例が山のように述べられる。そのそれぞれが、深刻な問題を孕んでいるのはわかるのだが、男子劣化の原因と結果が多くの項目で混同されている。例えば、ゲームやポルノは原因でもあるが結果でもある。だが、そうしたわかりづらさを超えて訴えてくるものがある。それは、先進国で男子劣化を引き起こしているのは、男子自身の問題ではなく社会の問題だということだ。

 本書でも解決策を提案しているが、真新しいものではない。その解決策の乏しささえも、未来に向けて何とかしなければ......大変なことになると痛感させてくれる説得力になっている。(BOOKウォッチ編集部 スズ)

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