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運動会に「人間ピラミッド」は必要なのか

ブラック部活動

 著者の名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授、内田良さんは「危険な部活」に警鐘を鳴らし続けている教育専門家として有名だ。

 本書『ブラック部活動』は、依然として学校現場にはびこる「部活偏重」とその実態についてまとめたものだ。

ネットで議論白熱、ついに大事故

 「組体操はいま、見世物としての性格を強め、巨大化・高度化、さらには低年齢化が進んでいる」――。内田さんは2014年9月16日、「Yahoo!個人」に運動会の花形演目「組体操」の問題点を指摘する一文を寄稿した。すると、あっというまに反響がネットで広がり、J-CASTニュースがすぐに記事にした。「巨大化する組体操ピラミッド、最大200キロの負荷 大学准教授『これのどこが<教育>なのか』」。この記事にも編集部の予想を超えて読者の「コメント」が殺到した。

 組体操は、チームで長期の努力をした結果だから続けるべきなのか。それとも一歩間違えば重大事故につながりかねない危険な集団技だから、止めるべきなのか。

 議論が続く中で15年9月27日、大阪府八尾市の中学体育祭で、1年生から3年生の男子生徒約150人が参加した10段ピラミッドが崩れ、6人が重軽傷を負う事故が起きた。一気に崩れる場面も含めて、事故の一部始終が収められた動画が公開され、ネットでは怒りと驚きの声があがる。「組体操推進派」の形勢が悪くなった。

「部活全廃論者」ではない

 この事故を契機に、少なくとも組体操については高さ制限を設けたり、取りやめたりする学校が増えてきた。しかし、学校現場では他にもあやふやな責任体制で続けられている部活が少なくない。自主的なはずの部活が強制され、顧問になると、放課後や土日も駆り出される。生徒も先生も部活に振り回され、一部では授業よりも部活を重視するかのような、いわば本末転倒がまかりとおっているのだ。

 メディアで「部活」の問題が取り上げられるたびに、内田さんが登場する機会が増えた。というわけで、本書もすでにあちこちのメディアで紹介されている。「中央公論」の2017年11月号「著者に聞くでは内田さんがインタビューを受けている。

 自身のスタンスについて、「部活全廃論者」ではないという。「運動部だけでなく吹奏楽部など文化系も含め、どうやって部活を良くするかを考えている」と語っている。「『ゆとり部活動』を提案したい」とも。

 タイトルをやや刺激的に「ブラック」としたのには理由がある。それは日本の教員を「世界一忙しい」存在にしている原因は部活動であり、改革が必要だと思っているからだ。今後は部活のない小学校教員も含めた「働き方改革」に取り組んでいきたいという。

  • 書名 ブラック部活動
  • サブタイトル子どもと先生の苦しみに向き合う
  • 監修・編集・著者名内田 良 著
  • 出版社名東洋館出版社
  • 出版年月日2017年7月31日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数B6判・256ページ
  • ISBN9784491033334
 

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