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みうらじゅんは「エロ」であっても野卑ではない

ラブノーマル白書

 さて本書『ラブノーマル白書』(文春文庫)である。著者はみうらじゅんさん。漫画家、イラストレーター、ミュージシャン、エッセイスト、仏像オタク、「マイブーム」評論家など、いくつもの貌をもつ売れっ子だ。「週刊文春」に「人生エロエロ」と題したエッセイを連載している。毎週、「人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた」というキメ文句で始まる名物エッセイだ。それをまとめた単行本を文庫にしたものだ。

エロのネタは尽きない

 毎週、あまりのくだらなさに、よくもまあネタが尽きないものだ、と感心しながら評者は愛読している。みうらさんと同世代なので、なんとなく昭和感のある内容も好ましい。

 巻末に当時「週刊文春」編集長だった新谷学さん(現在は「週刊文春」編集局長)との対談が収められている。この連載が始まったいきさつなどが書かれていて面白い。数々の不倫スクープや「文春砲」で有名になった新谷さんが、2012年に編集長になって、かなり優先順位が高い「やりたいこと」にみうらさんの連載があったという。正式な内示の前に「連載お願いします。エロで」とフライング気味に依頼したそうだ。

みうらさんの『瘋癲老人日記』

 そのこころは「みうらさんの『瘋癲老人日記』が読みたかった」ということだ。文豪谷崎潤一郎がおのれの性的嗜好と向き合い、「足フェチです」など、文学の形をとり赤裸々に告白した、と新谷さんは考えている。

 連載の中で、「アパート」と書いている話と「マンション」と書いている話があり、「アパート」は独身時代、「マンション」は結婚後、という区別がある、とみうらさんが明かしている。だから「マンション」とあるのは「ゲス不倫」の話だ、と。これには新谷さんも気がつかなかったという。

 目次からタイトルをいくつか抜粋するだけで、内容はわかるだろう。

 オフィス・ラブの現場、キャバクラ退場、不倫の代償、熟女化について、コンパニオン付旅館、夜のビキニ問題、豪華熟女写真集、帰国子女プレイ......。

 もう7年近い連載なのに、まったくボルテージが落ちないのもすごい。しかも、ほとんどみうらさんが体験した話だから、どれだけ「エロ」を追求してきたか、ということだ。

 でも読むとわかるが、「エロ」であっても決して野卑ではない、のである。「エロ」を書きながらも下品に堕ちないのは、みうらさんの筆力もあるが、基本的な人格のおかげなのだろう。

 対談で、みうらさんは「週刊文春」に書いていると思うのでアガるから、「毎回原稿は"エロ本に書いているんだ" と自分を洗脳してから書き始めるんです」と告白している。

 新谷さんも「できることの陣地をどんどん広げていかないと面白くならない」と独特の「週刊誌」論を語っている。

 みうらさんの「エロが枯れる」まで連載は続くそうだし、枯れることもまあないだろう。

 本欄では、谷崎の『瘋癲老人日記』のヒロインのモデルとなった渡辺千萬子さん(谷崎の義妹の息子の妻)について、桐野夏生さんが書いた小説『デンジャラス』(中央公論新社)を紹介済みだ。その渡辺さんもさきごろ(2019年4月14日)89歳で亡くなられたことも付記しておく。  

  • 書名 ラブノーマル白書
  • 監修・編集・著者名みうらじゅん 著
  • 出版社名文藝春秋
  • 出版年月日2019年5月10日
  • 定価本体700円+税
  • 判型・ページ数文庫判・257ページ
  • ISBN9784167912871

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