ミニッツ・シンキング

美術はこんなに面白い

西洋と日本 表現の違い

生涯学習センター講師 伊藤 淳

「ウサギ」 絵本の人気者

西洋美術と日本美術は、雰囲気が違いますね。具体的にはどんな違いなのでしょう。表現のしかたにどんな違いがあるでしょう。これから並べて見ていきます。まずは、皆さんが子どものころから親しんでいるウサギの絵。

このコースのみかた: 青線で囲んだところをクリックすると、拡大表示します。また下線の青い文字にポインターを合わせると、「ひとこと解説」を読むことができます。

作者名について: 導入編では各作者名を一般に知られている呼び方で表示しました。フルネームの記載がない場合がありますので、ご了承ください。

デューラー vs 鎌倉時代の僧


デューラー 『 野兎 』
(1502年)©Web Gallery of Art

『 鳥獣人物戯画 』 (甲巻部分)
(12世紀中ごろ)高山寺 Wikimedia Commons

デューラーの『 野兎 』は毛の一本一本まで写実的に再現。
一方、日本の『 鳥獣人物戯画 』は最小限の線で表現し、余白が絶妙に活かされています。

1471~1528年。ニュルンベルクで生まれ、
イタリアで学んだドイツ・ルネサンスを代表する画家・版画家。
当時の世相を反映して動物や人物を戯画的に描いたもので、
複数の手による全4巻構成の国宝作品。日本最古の漫画とも言われる。
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「ライオン」 伝説の獅子

古代のギリシャやエジプトにも生息し、スフィンクスとして神格化されたライオン。
インドから中国経由で伝わってきたその勇猛なイメージは、日本の武将たちの好む画題となり、彼らの居城を飾る絵となります。
その表現は…

ルーベンス vs 狩野永徳


ルーベンス
『 ライオンの穴の中の預言者ダニエル 』
(1615年ごろ) ©Web Gallery of Art

狩野永徳 『 唐獅子図屏風 』
(16世紀)宮内庁 Wikimedia Commons

見たままの姿で精密に描かれたルーベンスの作品には、猛獣が与える恐怖感が漂います。イメージで描かれた日本の獅子は、斑点で筋肉が表現され、顔はどことなく人間的。会話ができそうな雰囲気さえあります。

1577~1640年。アントウェルペンで学び、
イタリアのマントヴァの宮廷画家となり、
大工房を経営した。北方バロック最大の画家で外交官。
1543~1590年。安土桃山時代に活躍した狩野派の絵師で、織田信長や豊臣秀吉などの権力者に重用された。
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「人体」 永遠のテーマ

古代から現代まで、芸術のテーマとして何度も取りあげられている人体。人体表現には、その時代の人間観が見られるといわれます。
西洋と日本の芸術家たちは、人体をどのように表し、生命を吹き込んだのか…彫刻作品で比較してみましょう。

『 ダヴィデ 』 vs 『 金剛力士 』

 

ミケランジェロ 『 ダヴィデ像 』
(1504年、フィレンツェ)
© Web Gallery of Art

法隆寺中門 『 金剛力士 』
(阿形、6世紀)
Photo by ©Tomo.Yun
http://www.yunphoto.net

ミケランジェロの彫刻は、解剖学的に、胸筋・腹筋などが極めて正確に彫られ、再現されています。
いっぽう日本の力士像の筋肉のつけ方は任意的ですが、力強さが強調されています。

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「顔」 どう捉えるか

顔は個人をあらわし、感情を発信する器官です。
複雑で多様ともいえるモチーフを、画家たちはどのように描いたのでしょうか。

ダ・ヴィンチ vs 菱川師宣


レオナルド・ダ・ヴィンチ 『 男性頭部の横顔 』
(1490年ごろ) © Web Gallery of Art

菱川師宣 『 見返り美人 』 部分
(17世紀) 東京国立博物館
Wikimedia Commons

ダ・ヴィンチは、素描の顔に陰影をつけ、さらに目盛りまでつけて、プロポーションをしっかり計っています。
日本の浮世絵では、顔は線と色面だけで描かれています。

菱川師宣(1618~1694年)江戸初期に活躍した絵師。
当初版本の挿絵を手掛けたが、後に挿絵を独立させて芸術作品とした浮世絵を確立した。最初の浮世絵師とされ、『 見返り美人 』は肉筆浮世絵の代表作とされる。
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「山」 距離と奥行き

景色を描くには、画面に奥行きをつくり、距離を描かなければなりません。
遠くにある山…日本の画家と西洋の画家は、どのように画面に表したのでしょうか。

ダ・ヴィンチ vs 雪舟


レオナルド・ダ・ヴィンチ 『 受胎告知 』 (1475年ごろ)
© Web Gallery of Art

雪舟 『 破墨山水図 』 部分
(15世紀)東京国立博物館
Wikimedia Commons

ダ・ヴィンチは、時間をかけて油絵の具を塗り重ねた「空気遠近法」で山を描いています。雪舟は、筆の勢いと墨の濃淡をつかい、短時間で空気の奥行き感を表現。「破墨」という技法です。

雪舟(1420~1506年)室町時代の水墨画家で禅僧。備中(岡山県)に生まれ、京都相国寺で修業した後、明国に渡り、水墨山水画の画法を学んだ。代表作は「破墨山水図」の他に「秋冬山水図」、「天橋立図」などがある。
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「空気」 風を感じ、描く

画家の目は、空気をどのように捉え、感じ取るのでしょう。
そしてどんな方法で、観る者に伝えたのでしょうか。

ロラン vs 酒井抱一


クロード・ロラン
『 エジプト逃避途上の休憩 』(1666年)
©Web Gallery of Art

酒井抱一 『 夏秋風図屏風 』 (1821年ごろ)東京国立博物館
© Salvastyle.com http://www.salvastyle.com/

大きくうねる木々、遠くを流れる雲の勢い…ロランの絵には、今、まさに強い風が吹いています。いっぽう抱一は、左隻(向かって左)に秋風で飛ばされた枯葉を置き、右隻(向かって右)には小川と共に、小雨にしたたる夏草を描きました。真夏の一瞬の清涼感、その空気をみごとに感じさせます。

クロード・ロラン(1600~82年) シャンパーニュ地方出身の画家。
若くしてイタリアに行き、生涯ローマで過ごして歴史的・宗教的な
題材を織り込んだ風景画を多く制作した。
酒井抱一(1761~1829年)江戸時代後期の絵師、俳人。尾形光琳に私淑し琳派の雅な画風を取り入れ、江戸琳派の祖となった。    
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