ラファエロの工房からは、ジュリオ・ロマーノほか多くの著名な芸術家が巣立っています。またその死後、彼の作品はフランス・アカデミーで西洋美術の理想的な手本となりました。

フランス・アカデミーとは？
画家・彫刻家・音楽家が「芸術は知的学問であり徒弟制はやめるべき」と主張して結成。後に国王直属機関となり、芸術家育成・表彰・展示などを独占します。フランス革命で一時廃止され、1795年に再興します。

アカデミーでラファエロの影響を受けた代表格は、右のナポレオンを描いた、ドミニク・アングル （1780～1867年）。彼はラファエロの死後2世紀以上を経てこの世に誕生しています。
フランス新古典主義のダビッドをから学び、当時台頭してきたドラクロワを中心とするロマン派に対抗しました。

パリのアカデミーで学んだアングルは、ラファエロの作品に大きな感銘を受けました。そしてローマ留学の直前に描いた『玉座の皇帝ナポレオン』の中に、ラファエロを賛美するメッセージを描き込んでいます。いったいどんな印なのでしょうか。
見つけるのは難しいですが、絵をクリックすると拡大できます。捜してみましょう。

サインのすぐ上の刺繍模様は、『小椅子の聖母』。
アングルは、皇帝の肖像画にラファエロのオマージュを秘かに入れたのです。
彼の作品には、他にもラファエロを感じさせるものがあります。

画面中央の上部に描かれた、雲上のマリア。よく似た構図ですが、一方がラファエロ、もう一方がアングルの作品です。
さてどちらがラファエロ、そしてどちらがアングルでしょう？

右は29歳のラファエロが、教皇ユリウス２世の依頼で描いたもの。画面左に聖人シクストゥスがいますが、モデルはユリウス２世だと言われます。 画面下に描かれた可愛い２人の天使は、今もいろいろなデザインに使われています。

このミニッツ・シンキングは、鎌倉女子大学の伊藤 淳講師（生涯学習センター）のお話を元に構成しました。