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人手不足の介護現場にロボットを 目覚ましい技術の進歩も導入には賛否

【クローズアップ現代+】(NHK) 2016年6月23日放送
「介護ロボット最前線」

   高齢者の介護にロボットを活用する研究が進んでいる。体の不自由なお年寄りの動作を助け、時には会話の相手をしてくれる。今、世界各地で技術競争が激しさを増している。

   海外では積極的に介護ロボットを使う国がある一方、日本の高齢者の中には、人の手ではなくロボットに介護を委ねるのに抵抗を感じる人がいるのも現実だ。

  • 近い将来ロボットが介護の現場で活躍するか
    近い将来ロボットが介護の現場で活躍するか
  • 近い将来ロボットが介護の現場で活躍するか

右半身不随から4年、自力歩行で外に散歩

   スタジオに、漫才師の宮川大助が両足に器具を付けて歩いて入ってきた。歩行を助けるロボットだ。動きが少々ギクシャクしているが...。

MCの井上あさひアナ「いかがですか」
宮川「初めて自転車に乗った感じです。ロボットが勝手に動いてくれる。それにうまく(体が)乗れるか」

   歩行補助ロボットは、腰のセンサーがわずか2、3歩でその歩行者に応じたリズムと力加減を判断し、足を振り上げる力を助ける。青森県の高齢者施設で暮らす久慈実さん(68)は脳出血で倒れ右半身不随になり、リハビリでこのロボットを活用してきた。リハビリ開始から半年後には、誰の助けも借りずに自分の足で立ち上がれるようになった。病気を発症してから4年たった今では、ロボットも使わず自分の足だけで外に散歩に出るまでに回復した。

   かつては「息子に負担をかける」とつらそうな表情を浮かべていた久慈さんだが、今は「うれしくてしょうがない」とこう語る。

久慈さん「何もできないと思っていたのが、何でもできるようになったと思えて」

   以前脳出血を患った宮川は、久慈さんに大いに共感した。実は今も、漫才の最中に下半身のしびれを感じるときがあると明かす。

   もう1種類紹介されたのは、コミュニケーション型ロボット。高齢者の話し相手を務める。例えば「今日の朝ごはんは」と問いかけると、「今日の朝ごはんは、パンを食べました」と答え、会話が成り立つ。まだ症例は少ないが、認知症患者の会話を促して笑顔が増えたという。

全部ロボット任せでなく、あくまで補助

   介護の現場では、高齢者の手足のリハビリ、食事やトイレの介助、話し相手といった用途でロボットが活躍する余地は大きい。介護・福祉ロボットの国内市場規模は、2015年の167億円から20年後の2035年には4043億円に拡大するとの予測も出た。

   だが、現在国内の高齢者施設でロボットを導入している割合は、わずか1.3%にすぎない。背景には、ロボットが誤作動して人を傷つけるかもしれないという不安、コストがかかりすぎる、またロボットを導入する人手そのものが足りないという現実がある。

   スタジオの大阪工業大学・本田幸夫教授は「介護の人手不足を補う有効ツールとして、(ロボットの)導入を進めていく必要がある」と指摘した。介護ロボットを積極的に活用しているデンマークは、あえてリスクをとりながらもロボットを使い、データやノウハウを蓄積して改良を加え、より優秀なロボットをつくっていこうとの考えだ。

   番組でアンケートをとったところ、日本人で「ロボットによる介護・リハビリを受ける」と答えた人は72%に上った。肯定派は「排せつや風呂など、人による介護では恥ずかしい」「高齢者と同じ会話を繰り返すと、感情的になってしまう」と、ロボットならではのメリットを見いだしている。一方否定派からは、「介護は温かい人の手で行ってほしい」「ロボット相手では惨めな気持ちになる。家族に見放された気になる」との意見があった。

井上アナ「介護ロボットの受け止めは、いろいろですね」
宮川「ロボットを『杖』と思ったら、少し気楽で身近なものに感じられるんじゃないですか。あくまでも補助。全部ロボット任せではなく、上手に付き合う」
本田教授「『(ロボット相手で自分が)モノのように扱われる』のではなく、ロボットは人を助けるアシスタント。うまく使っていけば、介護をする人に気を遣う必要もなくなるでしょう」