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モーツァルトを聴くと血圧が下がる リラクゼーション効果まで期待が

   1990年代に「モーツァルトを聴くと頭がよくなる」という研究が出され、米国で「モーツァルト効果(The Mozart effect)」が商標登録されるほど大ブームを巻き起こしたモーツァルトの曲。その後、「知能向上」を否定する論文が出されたこともあり、ブームは落ち着いた。

   今度は「モーツァルトを聴くと血圧が下がる」という研究が発表され、再び話題になりつつある。血圧が下がるばかりか、ストレスホルモンの量が減り、リラクゼーション効果が期待できるという。

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ABBA(アバ)の軽快な曲では血圧は下がらない

   この研究をまとめたのは、ドイツのルール大学ボーフム医学部のチーム。ドイツ医師会誌国際版「Deutsches Aerzteblatt International」の2016年6月20日号に発表した。

   研究チームは、音楽療法の一環として、音楽ジャンルによって心身に与える健康効果にどんな違いがあるかを調べるため、120人を対象に、音楽を聴く60人と、何も聴かずに安静にしてもらう60人の2つのグループに分けた。さらに音楽を聴く60人を、次の3つの音楽にグループ分けをして、それぞれ25分間にわたり曲を聴いてもらった。

(1)モーツァルトの曲を聴く20人。

(2)ヨハン・シュトラウスの曲を聴く20人。

(3)ポップ・ミュージック・グループ「ABBA(アバ)」の曲を聴く20人。

   そして、この25分間の前後に120人全員の血圧、心拍数、コルチゾールの血中濃度を測定した。コルチゾールは、ストレスを感じると分泌されるホルモンで、血中濃度の量によってストレスの度合いがわかる。

   その結果、次のことがわかった。

(1)モーツァルトの曲とシュトラウスの曲を聴いたグループでは、血圧と心拍数が顕著に下がったが、ABBAを聴いたグループでは、両方とも下がらなかった。モーツァルトの曲では最高血圧が4.7ポイント、最低血圧が2.1ポイント下がり、シュトラウスの曲では最高血圧が3.7ポイント、最低血圧が2.9ポイント下がった。

(2)音楽が聴かなかったグループは、仰向けの姿勢で休んでいたため、血圧と心拍数が若干下がったが、モーツァルトとシュトラウスの曲を聴いたグループに比べると、下がり方がずっと低かった。

(3)コルチゾール濃度は、音楽を聴いた60人、聴かなかった60人全員で下がった。下がった割合は、モーツァルトとシュトラウスの曲のグループがほぼ同程度で一番高く、次いでABBAの曲、最後が安静グループだった。リラックス効果は、やはり音楽を聴いた方が安静より高いようだ。また、音楽を聴いたグループでは、男性の方が女性よりコルチゾール濃度の低下が大きかった。意外なことに、男性の方が音楽で癒されやすいのである。

クラシック嫌いでもクラシックを聴くと癒しの効果が

   以上のことから、モーツァルトとシュトラウスの曲には血圧と心拍数を下げるとともに、ストレスを解消する効果が認められたが、ABBAの曲はストレス解消効果だけは認められた。そして、血圧を下げる効果が最も強かったのはモーツァルトの曲だったわけだ。ちなみに実験に使われたモーツァルトの曲は「交響曲第40番 ト短調 KV550」である。

   研究チームは、事前に120人全員に好きな音楽の種類を尋ねていたが、音楽が血圧や心拍数に与える効果と、個々の被験者の音楽の趣味との間で関連はみられなかった。だから、ポップ・ミュージックは好きだがクラシックは嫌いだという人でも、クラシックを聴くと自然に血圧が下がってしまうことになる。

   研究チームのハンス・ヨアヒム・トラッペ博士らは、モーツァルトに限らず、血圧を下げてくれる曲には次のような特徴があると指摘している。

(1)同じメロディーが繰り返されて、曲の周期性が高い。

(2)メロディーラインが印象的で、1度聴いただけで覚えられるほど。

(3)音量やリズムがあまり変化しなくて、調子(キー)が心地よい。

(4)和音の進行(harmony sequences)が気持ちを高ぶらせないもの。

(5)歌詞が存在しない楽器だけで演奏する。

(6)作曲がテクニカル(技巧的)である。