2024年 4月 17日 (水)

和食:最もヘルシーな献立の時代いつ がんを減らし運動能力も向上する食事

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   「和食」は2013年にユネスコの世界無形文化遺産に登録された。「美しさ、季節の表現」「新鮮な食材」などいくつか理由があるが、中でも「優れた栄養バランス」が評価されたことが大きい。

   ところで、和食といっても時代によって変遷が激しい。いつの時代の料理が健康的なのだろうか? 江戸時代? 昭和? それともすっかり西洋化された現在? 実は、いろいろな年代の料理を比べた結果、1975年(昭和50年)頃の日本料理が最もヘルシーだったというユニークな研究がある。

  • 1975年型の食事の献立例(東北大学の発表資料より)
    1975年型の食事の献立例(東北大学の発表資料より)
  • 1975年型の食事の献立例(東北大学の発表資料より)

4つの時代の献立を比べて最高だったのは

   この研究をまとめたのは、東北大学大学院農学研究科の都築毅准教授らのグループだ。2014年3月28日と2016年10月2日の2回、ともに日本農芸化学会のシンポジウムで発表した。2回に分けて発表したのは、1回目はマウスの実験、2回目は人間を対象にしたテストを行ない、1975年当時の日本料理がいかに健康によかったかを念には念を入れて実証したからだ。

   東北大学の発表資料(1回目=2014年3月25日付、2回目=2016年10月3日付)をもとに、和食のヘルシーさを追求した研究を紹介しよう。まず、初回の研究から。

   都築准教授らは、栄養管理士の指導を受けながら、厚生労働省(旧厚生省)の国民栄養調査に基づき、1960年(昭和35年)、1975年(昭和50年)、1990年(平成2年)、2005年(平成17年)の4つの時代の平均的な和食の献立を、それぞれ1週間、朝昼晩21食分を再現した。15年ごとの和食の変化を比較するためだ。そして、それぞれの時代の献立を実際に調理したものを凍結乾燥・粉末化し、マウスに食べさせ、寿命や健康状態、学習能力などを分析した。

   その結果、1975年の和食を食べたマウスが一番長生きをし、学習機能の維持の成績もよく、がんや糖尿病の発生率が低かった。逆に老化が一番早く、がんや糖尿病の発生率が最も高かったのが、現在に近い2005年の和食だった。たとえば、体重を比較すると、最悪の2005年を100%として1990年は99%、1975年は89%、1960年は100%と、1975年だけが突出して低い。また、内臓脂肪量も2005年の100%に対し、1990年は77%、1975年は46%、1960年は86%で、1975年がずば抜けて少ない。

食べるだけでストレスが減り、ダイエット効果抜群

   マウスの実験で、1975年の和食が最も健康的だとわかったので、そのメニューを実際に人間に食べてもらい、実証したのが2回目の研究だ。テストは、実験1と実験2が行なわれた。実験1では、肥満度を表わす体格指数BMIが24~30以下の軽度肥満の60人(20~70歳)を次の2つのグループに分けて比較した。

(1)1975年型食事を1日3食、計28日間食べてもらうグループ。
(2)現代型食事(現在の日本人の食事摂取基準に準じたメニュー)を1日3食、計28日間食べてもらうグループ。

   一方、実験2では、実験1と同じ食事を、BMIが18.5~25未満の標準体型の人々(20~30歳)を16人ずつの2グループに分けて食べてもらった。さらに、全員に試験期間中週に3回、1日1時間以上の中程度の運動(速足ウォーキングなど)を行なってもらい、運動能力などの変化やストレスチェックを記録した。つまり、1975年型食事と現代型食事が、肥満者(実験1)と、もともと健康な人(実験2)の双方に、どんな影響を与えるかを調べたのだ。

   その結果、次のことが明らかになった。

(1)肥満者を対象にした実験1では、1975年型食事の人は現代型食事の人に比べ、BMI指数と体重が明らかに減り、悪玉のLDLコレステロールやヘモグロビンA1c(糖尿病の指標)、腹回りの長さに減少傾向が見られた。また、善玉のHDLコレステロールが増加傾向を示した。
(2)健康な人々を対象にした実験2では、試験期間中に運動をしたこともあって、(1)のような体の面での差はなかった。しかし、1975年型食事の人は現代型食事の人に比べ、ストレス軽減と運動能力向上の面で明らかに効果がみられた。

秘密は調理方法と調味料にあった

   「肥満者を健康に」「健康な人は、身心ともにもっと健康に」というわけで、「凄いぞ、1975年型和食!」と喝采を贈りたくなるが、いったいどんな食事だったか。発表資料の中で、1975年頃の典型的な献立として次の例をあげている。

【朝食】ご飯、卵焼き、納豆、みそ汁(キャベツと油揚げ)、果物(ミカン2個)。
【昼食】きつねうどん(具は、油揚げ、カマボコ、ホウレンソウ、刻みネギ)、果物(ミカン2個)。
【夕食】ご飯、五目豆、サバのみそ煮、すまし汁(ハクサイとワカメ)。

   こうした食事のどこがいいのだろうか。都築准教授は次の点を指摘している。

(1)多様性:一汁三菜(主食、汁物、主菜、副菜×2)を基本として、色々な食材を少しずつ食べ、バランスがよい。
(2)調理法:「煮る」「蒸す」「生(なま)」を優先し、次いで「ゆでる」「焼く」が多く、油を使う「揚げる」「炒める」が控えめだ。
(3)食材:タンパク質の多くを大豆製品や魚介類から摂っている。また、野菜(漬物を含む)、果物、海藻、キノコ、緑茶を積極的に摂取し、食物繊維が豊富だ。一方、卵、乳製品、肉は食べすぎにならない程度に摂っている。
(4)調味料:出し汁や発酵系調味料(しょうゆ、みそ、酢、みりん、お酒)を上手に使って、糖分(砂糖)や塩分の摂取量を抑えている。

   こうした食事がエネルギーの燃焼効率をアップし、肥満を防ぎ、生活習慣病やがんから体を守っているというわけだ。

   逆にもっとも不健康とされた、現在に近い2005年の献立の1例をみると―。

【朝食】トースト、オムレツ、アスパラのベーコン巻、果物、牛乳。
【昼食】ハンバーガー、サラダ、ジュース。
【夕食】ご飯、豚のショウガ焼き、ポテトサラダ、タマネギと豆のスープ。

   脂肪分が多い食材に加え、調理法も「炒める」「揚げる」が増えて油を多く使っている。塩分、糖分も多い。「メタボリック症候群になってください」といわんばかりのメニューだ。

   「和食はヘルシー」と言っても、現在の日本食は欧米の食生活の影響を受け、健康度を失いつつあると都築准教授は指摘し、発表資料の中でこうコメントしている。

「現在の食生活を見直し、老化の防止に役立つ『日本食』を世界にアピールするためにも、健康な日本食のルーツである1975年の食事を発信していきたい」
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