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睡眠は「キレイ、賢い、優しい」のモト! 寝苦しい夏の快眠術は「デート」と「朝食」

【美と若さの新常識 カラダの秘密】(NHKBSプレミアム)2017年7月13日放送
夏も快眠!睡眠は美と健康のメンテナンス!

   美と若さにとってとりわけ大切なもの、それは睡眠。世界の歌姫マライア・キャリーは、ライブの前には数日前から15時間も寝るそうだ。

   アナタは睡眠時間が足りているだろうか。睡眠不足はダイエットとお肌の大敵であるばかりか万病のもと。寝苦しい夏、心地よく眠る秘訣を紹介する。

  • よく寝る人はキレイになる!
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寝不足になるとモリモリ食べたくなる理由

   番組の冒頭、MCのお笑い芸人・後藤輝基がこんなクイズを出した。

後藤「睡眠不足が続くと、太ると思いますか? やせると思いますか?」

   答えは「太る」だった。米国コロンビア大学が約7000人を対象に、睡眠時間と肥満の関係を10年以上追跡した研究が紹介された。平均「7時間睡眠」の人の肥満率を100とすると「5時間睡眠」の人は150になり、「4時間睡眠」では173に跳ね上がった。約2倍だ。なぜ太るのだろうか。夜遅くまで起きていると、ついつい食べてしまうが、最新研究からカラダには睡眠不足の時に積極的に食べさせようとする仕組みがあることがわかってきた。

   胃の働きは、食欲を抑えるホルモン「レプチン」と、食欲を増進する「グレリン」のバランスで成り立っている。ところが、睡眠不足になるとホルモンバランスが乱れ、レプチンが減少し、グレリンがどんどん分泌される。いくら食べても満腹感が得られなくなる。しかもこのグレリン、脂っこい物と甘い物が大好きときているのだ。

   もう1つ、睡眠不足女子の悩みは「肌荒れ」。なぜ肌が荒れるのだろうか。カギは「成長ホルモン」。成長ホルモンは子供の時には成長を促進、大人になると細胞を修復して肌の新陳代謝を促進してくれる。その成長ホルモンは寝入りばなの2時間、しかも深い眠りの時に1日分の9割近くも集中して分泌される。ダイエットのためにも美肌のためにも睡眠がとても大事なのだ。

   睡眠環境を研究している東北福祉大学特任研究員の水野一枝さんは、いつも学生たちに「キレイ、賢い、優しい」の3つのキーワードに集約して睡眠を教えている。

水野研究員「睡眠には3つのメンテナンス効果があります。まず、細胞やお肌を修復しカラダのメンテナンスをすることで『キレイ』になります。『賢い』というのは、日中起こった出来事の記憶を整理し、きちんと定着させるのが睡眠中に行なわれるから。つまり記憶のメンテナンスです。そして、眠ることでイライラを抑えて心が穏やかになります。心のコントロールのメンテナンスができることで、人に『優しく』なれるのです」

   睡眠を脳の仕組みから研究している杏林大学の古賀良彦名誉教授がこう付け加えた。

古賀教授「記憶と睡眠でいえば、よく悲しいことや嫌な出来事があると、夜なかなか眠れなくなりますね。あれは、寝てしまうと嫌な出来事の記憶が脳に定着してしまうので、脳がわざと眠らせないようにしているのです」
ゲストのフリーアナ・高橋真麻「ええっ、本当ですか! 脳ってスゴイことをするのですね」

「眠りたいなら逆にカラダを熱くしろ!」

古賀教授「睡眠不足になると、肥満や美容面のデメリットだけでなく、糖尿病や高血圧、がんのリスクも上がります。あらゆる体の不調のもとです」

   それでは、この暑い夏、どうすればよく眠ることができるだろうか。実は、人間は寝る時にカラダの中心部の体温を下げないと深い眠りに入っていけない。そのために必要なのが放熱だ。手足や表面の皮膚から熱を外に出すことによってカラダの中心部の温度が冷える。そもそも体温よりも周りの気温がずっと低ければ体温は簡単に下がる。しかし、気温が高い夏は当然下がりにくい。夏になると寝苦しくなるのはそのためだ。

   では、どうしたらよいのか。そこで有効なのが眠りの新常識。MCの後藤が「眠りたいなら逆にカラダを熱くしろ!」と強調した。表面の体温を周りの気温より上げてしまえば、皮膚から放熱して中心部の体温が下がるという逆転の発想だ。体温を急に上げるには風呂に入るのが一番だという。

   秋田大学で理学療法を教える上村佐知子准教授は「入浴、特に温泉がいいです。体温を上げて眠りをよりスムーズにし、熟眠に誘います」と語った。その効果のほどを上村准教授が実験で見せた。風呂の入り方による睡眠の質の違いを4人の学生で調べた。1人目は天然の温泉成分に近い塩化物泉に入った。2人目は炭酸を多く入れた風呂。皮膚に細かな泡がつくのが特徴。3人目は水道水を湧かした家庭にある風呂。4人目は風呂に入らない。

   風呂はぬるめの39度。時間15分の半身浴。風呂から出て、4人には同じ部屋で寝てもらい、脳波や体温を測って眠りの深さを割り出した。その結果、もっとも眠りの質が悪いのは風呂に入っていない人。家庭の水道水の風呂に入った人は、それに比べて深い眠りが約20%増えた。そして残り2つの風呂に入った人は約30%増の深い眠りを実現した。家庭用風呂より温まったからだ。

上村准教授「夏だからとシャワーで入浴を済ませるのは、実は損な話です。しっかり浴槽に入って入浴をした方が、むしろ涼しく寝やすい夜を過ごせるのです。寝る2時間前に入浴するのがコツです」

   さらにオススメの快眠術は「朝食」だ。体内時計の観点から食事と睡眠を研究している産業技術総合研究所の大石勝隆グループ長が、マウスを使った実験を見せた。マウスを2つのグループに分け、片方は朝食を抜き、片方はいつでもエサが食べられる状態にして2週間、昼間の活動を比べた。すると朝食抜きマウスは寝ぼけている状態が続き、活発な活動が見られなかった。脳波を調べると、朝食抜きマウスがしっかり覚せいしている時間は3割も少なかった。

大石グループ長「最近、私たちのカラダに時計の役割をする遺伝子が発見され、それがカラダ全体の様々な働きをコントロールしていることがわかりました。私たちの体温は24時間サイクルで変動します。朝しっかり食事をして体温を上げると、夜には体温は下がり、眠りやすくなります。ところが、朝食を抜くと体温を上げきれなくなり、リズムが狂って、夜寝ている時に体温が上がってしまうのです」

デートで脳を気持ちよく疲れさせよう

   さらにもう1つ、快眠の秘策はなんと「デート」だという。

古賀教授「夜深く眠るためには昼間の脳の使い方がポイントになります。昼間に脳を活性化しておかないと、逆に夜、脳は休んでくれない。脳が一番活発に働くのは、やはり人とコミュニケーションをしている時になります」

   特にデートは、相手を喜ばせるために大事なコミュニケーションの連続となり、脳の活動が大幅に上がる。古賀教授は2009年に1か月間、複数のカップルに協力してもらい、テーマパークでのデートの前後に、脳がどれだけ活性化したかを脳の血流計測機器で調べた。その実験の脳の映像が公開された。男女とも4時間のデートの前と後を比べると、デート後の脳の前側部分が真っ赤になった。これほどわかりやすい血流の増大はないだろう。

古賀教授「2人の間でステキな時間を過ごすと、コミュニケーションが高まります。脳が気持ちよく働き、よい意味での疲れをもたらします。夜は脳がゆっくり休みましょうということになり、望ましい睡眠が得られるのです」
高橋真麻「デートしてもケンカしたりするとどうなるのでしょうか?」
古賀教授「ストレスは睡眠不足の一番の原因ですから、夜の睡眠の質を悪くします。ケンカは禁物です」
MCの後藤「(高橋真麻を見ながら)パートナーのいない女性はどうしたらいいのですか?」
古賀教授「『女子会』がオススメです。女友だち同士でもポジティブに会話することで脳は十分に活性化されます」

眠れない時はゆっくり息を吐こう

   最後に、夜どうしても眠れなくなった時はどうすればよいのだろうか。古賀教授が呼吸法のアドバイスをした。

古賀教授「呼吸を上手にするのです。布団に入って膝を軽く曲げ、自然にカラダの力を抜きます。ゆっくり息を吐き、その時に小さい声で『あーっ』と声に出してみてください。大事なのは、吐き終わったら大きく吸わないこと。吐いた分だけ自然に吸います。なぜかというと、息を吐く時には気持ちをなだめる副交感神経が働きます。しかし、息を吸う時には緊張を高める交感神経が働いてしまうのです。だから、ゆっくり『あーっ』と息を吐いて気持ちをなだめていると、知らないうちに眠ってしまいますよ」