2024年 3月 28日 (木)

社員が「うちの会社は危ない!」とふれ回っています

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   「うちの会社の経営は大丈夫だろうか・・・」。そんな漠然とした不安を抱くこともあるかもしれないが、それを取引先の前で言ってしまったら、取引に悪影響が出るに決まっている。ある会社の人事担当は「そんなことも分からない子がいるんですよ」と嘆いている。

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取引先に「ウチがつぶれちゃったら雇って下さいね」

――流通業の人事担当です。都内3支店のうち、A支店の売り上げが急激に減ってきました。支店長に原因を調査させたところ、取引先が減少していることまでは分かりましたが、取引先の社長に話を聞いても曖昧に言葉を濁されてしまいました。

   ある日、顧問税理士から社長に連絡があり、気になる内容の話を聞かされました。以前、A支店のB子から、顧問税理士に突然連絡があり、

「先生、うちの会社の業績は大丈夫なんですか? 賞与は出るんですか?」
と、唐突に尋ねてきたのだそうです。顧問税理士は、「経営に関する話は会社に聞いて下さい」と答えたそうですが、B子は支店内でも、同僚たちに、

「うちの業績は相当悪いらしいわね。今年いっぱい持つかどうか」
「早く転職先を見つけた方がいいわよ」
とふれ回っていたのだそうです。また、取引先に行ったときも、

「ウチの会社、不景気で業績が最悪なんです」
「つぶれちゃったら雇って下さいね」
など、冗談にもならない話をしているようです。

   確かに当社の営業利益は、不況の影響を受けて昨年比で2割ほど落ち込んでいますが、潰れるほど悪化はしていません。しかし取引先は、どうやらB子の噂を真に受けて取引を絞り込んでいたようです。B子の言動を知った社長は激怒し、本社に呼んで確認すると、

「業績悪化は事実じゃないですか。事実を言って何が悪いんですか? まさか解雇なんてしないですよね。そんなことしたら私もしかるべき対応をしますから、覚悟した方がいいですよ!」
と逆ギレとも取れる開き直りで、社長は怒りを通り越して呆れてしまいました。

   B子は感情の起伏が激しく思い込みも強いことから、過去にも誤解を招くような言動をしていました。同僚は「また始まった」と受け流しているようですが、業績悪化の原因のひとつになったことは間違いありません。こんな社員はどうすればいいでしょう――

社会保険労務士・野崎大輔の視点
「噂の中身が本当であっても解雇の対象になりうる」

   B子さんが解雇処分となることは、十分考えられます。まず、ウソの噂を流したのであれば、就業規則の「会社に対する誹謗中傷等によって会社の名誉信用を傷つけ・・・」という規定に抵触します。業績への影響の有無にかかわらず、この時点で会社に対する重大な名誉毀損行為とみなされ、厳しい処分をされてもしかたがないでしょう。

   また、仮に業績悪化が事実であったとしても「会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え・・・」という規定に抵触します。ただし就業規則にこのような規定を設けていない場合には、処分に手間と時間がかかるので、要確認です。また、けん制機能を効かせるためには、ふだんから周知徹底することも重要です。

   処分を行う場合には、客観的な事実を揃え、理にかなった処分をすべきです。厳しすぎる処分は社員から訴えられるおそれがありますし、甘すぎる処分は他の社員に対して示しがつきません。解雇する場合には裁判に備え、解雇権の濫用と見られないように慎重に対処すべきです。

臨床心理士・尾崎健一の視点
「従業員の満足度を下げる組織的問題の検証も必要」

   今回のケースはB子さん個人の問題であると思われますが、一般的に社員は、仕事や会社に対する不満が高まったときに、仕事の生産性が落ちたり、会社の不利益になる言動をしたりしがちです。職場の管理職が各従業員に対して「現状の仕事に問題がないか。不満な点は何か」を定期的に確認することは不可欠でしょう。

   また、問題社員があらわれたときには、個人への対応にとどまらず、組織的な検証や対応も必要です。会社や仕事への「満足度」には、金銭的な報酬だけでなく、社内の人間関係や上司の仕事の与え方、業績評価制度なども影響します。人事制度の変更や運用を行う際には、特に注意が必要です。顧客や株主、金融機関への説明責任の重要性が強調されていますが、従業員も大切なステークホルダー(利害関係者)であることを忘れてはなりません。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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