『不機嫌な職場』著者に聞く
自分で自分を追いつめるな!声を掛け合い「組織感情」を健全に

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   組織には「感情」があり、これを良い状態にすることで組織のパフォーマンスを上げることができる――。「ギスギスした職場」で苦しむ人には、共感できる説ではないだろうか。では、どのようにすれば、あたたかくイキイキとした職場をつくることができるのか。「組織感情」に関する書籍を刊行した高橋克徳氏(ジェイフィール執行役員)に話を聞いた。

「変わろう」という思いを共有できなければ職場は変わらない

「ギスギス職場の放置は組織にも個人にもリスクがある」と語る高橋克徳氏
「ギスギス職場の放置は組織にも個人にもリスクがある」と語る高橋克徳氏

――高橋さんが出された『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(講談社現代新書、共著)は、27万部のベストセラーとなりました。今回、続編として新たに2冊の本を出されましたが、何かきっかけがあったのでしょうか。

高橋   『不機嫌な職場』では、お互いに協力し合えず、責任感の強い人ほど仕事を抱え込み、精神的・肉体的に追い込まれていく職場を描きました。多くの読者から「自分の職場も全く同じだ」「お互いに踏み込めないと感じていた原因が分かった」という共感をいただき、職場を客観視するお手伝いができたのではないかと思います。

   ただ、好意的な意見の一方で、「お互い協力し合うなんて理想論だ」とか「この状況は嫌だけど、自分から働きかけて変えるのは難しい」という意見も聞かれました。また、「経営者や管理職のマネジメントの問題だから変えられない」という意見もありました。

――でも、「誰かが悪い」では解決しにくい問題ですよね。

高橋   ええ。いくら会社から方針や仕組みが与えられても、メンバーみんなが「変わっていこう」という思いを共有できなければ、何も変えることはできません。そこで「組織感情」という概念を使って、これをメンバーみんなで良い状態に持っていく方法について考えてみたのが『職場は感情で変わる』(講談社現代新書)という本です。

   また、「職場の状況に強い不安を感じてはいるが、良い感情を周囲に配ろうと思っても、そういう感情が湧いてこない」という人もいます。そこで、人間関係の摩擦から「自分はダメだ」「必要とされていない」と否定的に追いつめる感情をやわらげて、前向きに生きていくための対処法についても考えてみたいとも思いました。これについて考えたのが『潰(つぶ)れない生き方』(ベスト新書)という本です。

職場のギスギスを放置すると「業務」「人材」「経営」のリスクが高まる

――「組織感情」というのは、どのようなものなのですか。

高橋   組織は、生物学的な意味での感情を持つわけではないのですが、一人ひとりの感情が広がって、組織メンバーの共通の感覚となってしまうことがあります。これを「組織感情」と呼んでいます。組織感情を「ギスギス」「冷え冷え」という状態から「あたたか」「イキイキ」という望ましい状態に持っていくために、メンバーへのアンケートを踏まえて「組織感情マップ」を作って客観的に捉え、メンバー全員でこれを良い方向へ変えていくための手法を提案しています。

――しかし、一般的には「仕事に感情は持ち込まない」という意見も根強いです。「他人に協力したくない」「ギスギスしていても自分の仕事さえしていればよい」という人の協力を得るのも難しいのでは。

高橋   確かに経営学などでも、マネジメントの対象は「行動」が中心でした。しかし行動と、それを左右するといわれる「評価」や「報酬」との間には、「感情」という要素が隠れています。「組織感情」は一人ひとりの行動に影響を与えます。ですから、個々人の行動を変えるためには「組織感情」を適切にマネジメントすることが必要になるのです。

   また、職場をギスギスさせたままにしておくと、「業務」「人材」「経営」の3つのリスクが高まります。業務の質の低下やクレーム対応のたらいまわし、組織の創造性の弱体化、社員のメンタル面での健康悪化、人材流出、不正・不祥事の温床になるなど、会社の生産性を明らかに下げることになります。良くない組織感情を放置しておくことは、個人にとっても、組織にとってもリスクを拡大させてしまうことになるのです。

自分の感情に向き合い、助けを求め、声を掛け合おう

『職場は感情で変わる』(講談社現代新書)と『潰(つぶ)れない生き方』(ベスト新書)
『職場は感情で変わる』(講談社現代新書)と『潰(つぶ)れない生き方』(ベスト新書)

――組織の中で「一人で仕事ができている」と思うのが勘違いなんでしょうね。

高橋   どんな仕事も、自分だけで完結できるものはないはずです。自分の業務に必要な手続きをサポートしてくれる人がいたり、何かあった時に対応してくれる人がいたりします。でも、自分の目に見える業績だけを考えていたら、そんな支えがあることを忘れてしまう。

   自分の成果は自分だけのものだと思う。そんな人がマネージャーになっても誰もついていきません。「無能な部下ばかりだ」とグチを言う"有能"な課長を選ぶか、メンバーの「組織感情」を健全な状態に戻して組織を立て直すのか、会社は判断しなければならないでしょう。

――景況の悪化している中で、「不機嫌な職場」はいっそう増えていると思うのですが、そんな職場で苦しんでいる読者にアドバイスをお願いできますか。

高橋   まずは自分を負の感情で満たしたまま放置しないでください。負の感情が自分を追い詰め、自分を潰してしまいます。そのために、自分の感情を自分で守る方法を身につける。本にはいくつかの対処法を書きましたが、これをヒントに自分なりの『潰れない生き方』を見つけてほしいと思います。

   それから、苦しんでいる人を見かけたら、傍観者にならずに「大丈夫か?」「あの上司ひどいよな」「気にするなよ」と声を掛けるところから始めて欲しいと思います。傍観者になることは一時的には楽ですが、自分が苦しんでいるときに誰にも助けてもらえないことになります。自分にも周囲にも傍観者にならない。そんな自分になってください。

   また、経営者や管理職の方には、組織の成果や行動だけにとらわれるのではなく、マネジメントに「組織感情」という概念を取り込んで、現状を捉えなおしてみていただきたいと思います。お互いの感情を大切にする風土をつくり、前向きな感情の連鎖が起きる職場、会社への動きを起こしていただけたら、きっと会社は大きく変わると思います。

高橋克徳(たかはし・かつのり)   1966年生まれ。株式会社ジェイフィール執行役員。一橋大学大学院修士、慶應義塾大学大学院博士課程単位取得。野村総合研究所、ワトソンワイアットを経て、2007年株式会社ジェイフィールの設立に参画。「人間本来の力」が輝く経営の実現を支援すべく、人材育成・組織改革手法の開発や研修・講演・コンサルティングの提供に取り組む。早稲田大学大学院、多摩大学講師。株式会社ジェイフィール http://www.j-feel.jp/

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