2024年 3月 29日 (金)

部下が「業務の合理化」に協力しようとしません!

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   不況が深刻化する中で、雇用者の不安が高まっている。これまでのやり方を変えなければ会社がもたないと分かっていても、自分の立場を危うくするのではと疑心暗鬼になり、変革に抵抗する人も。業務合理化を託された課長は、ベテラン社員たちが協力を拒みはじめた空気を感じている。

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「今までこれでやってきたのに」とサボタージュ

――中堅印刷会社の総務課長です。前職での経験を買われて、今年の春に転職してきました。私に求められたのは、業務改善によるコストカットと、創業60年で守旧的になってしまった企業体質の変革です。
   ゆくゆくは全社の業務を見直す予定ですが、社長と相談し、まずは総務部内から着手することにしました。現状では仕事のやり方が個人任せで、担当者が休めば仕事が止まってしまう始末。手作業が多く、ITによるシステム化も遅れています。ベテラン社員が多く、業務の割に人件費が高すぎるのも問題です。
   そこで、まずは基本的な仕事の進め方を見直し、業務目標や進捗状況を管理する書式を決めて、定期的な面談や評価方法についてルール化しました。また、仕事の洗い出しをして、マニュアルを作成してもらうことにしました。
   そして、業務のプロセスややり方について改善案を提出させ、PCを使った省力化について検討しようと考えました。その進め方について部員に説明した翌日から、私の陰口が耳に入ってくるようになりました。
「課長が仕事を勝手にやりにくくしている」
「課長の指示に従うと仕事が増える」
「今までのやり方でなぜダメなの?今までこれでやってきたのに」
   そのうち、私が朝のあいさつをしても、返事をしなかったり、避けるように席を外したりする人が出てきました。計画書を提出する期日に出さなかったり、おざなりなものを出してきたりするものもいます。会議の発言も、申し合わせたように少なくなりました。
   物事を変えることには誰もが抵抗を感じるものなので、粘り強くやろうとは考えています。なので、やり方を変えるつもりはないのでが、いつまでたっても意識に変化が見られないのには呆れます。どうしたらいいでしょうか――

臨床心理士・尾崎健一の視点
まずは部下との「人間関係」の構築から始めよう

   新任課長が見抜いている業務上の問題は、おそらく的確なのだと思います。しかし、長期間働いてきた社員からすれば、仕事のやり方を否定されることは、存在価値を否定されたような気がして強く抵抗心が出るものです。ましてや集団には暗黙の決まりのようなものがあり、それを無視する人は受け入れられません。まずはグループの一員として受け入れられるために、人間関係を構築するところから始めてください。

   そのためには、メンバーがいま何を考えているか、よく耳を傾けることが必要です。その上で、改善の必要性やねらいについて一人ひとりに分かりやすく説明をします。新しい会社ではスタート地点が違うということを意識すべきです。また、取り組みがメンバーにとってどんなメリットがあるかを説明し、インセンティブ(動機付けとなるしかけ)を示すことも必要でしょう。自分たちの首を絞めるだけの改革に従わせるのは難しいです。

社会保険労務士・野崎大輔の視点
就業規則の「服務規律」が懲戒処分の根拠となる

   組織変革の目的は、組織の目標達成に向けて、メンバーが自律的に行動する状態にすることです。であれば、強権的なマネジメント手法ではなく、部下に進んで行動してもらえるよう、変革を行う意図や部署の方針をメンバーと共有し、理解してもらえるように努める必要があると思われます。

   しかし、あいさつを無視する点はともかく、メンバーが業務上の指示に繰り返し従わないようであれば、業務命令違反として対処して組織の秩序を守るのも、課長の「権限」であり「責任」です。そうでなければ、会社が給与を支払っている理屈が通りません。就業規則の服務規律には、

「従業員は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職場の秩序の維持に努めなければならない」

とあるでしょうから、これに違反して秩序を乱すものとして処分できます。目標管理制度も整えるようですので、改革への貢献度に応じて評価をすることも必要です。

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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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