2024年 4月 18日 (木)

統一地方選で飛び交う「怪メール」 ネット選挙解禁に影響?

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   先日、ある県で行われた統一地方選の際にばら撒かれた「怪メール」の実物を見せてもらいました。見せてくれたのは、この県で長らく政治家の支援をしてきた人物。

   選挙に怪文書は付き物ですが、5~6年ほど前から怪メールが飛び交うのも当たり前になってきています。

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「送信先で誰が出したか想像つくけど」

   メールは3つ。ひとつは、特定候補への投票依頼を装ったうえで、その候補自身を激烈に誹謗中傷するものです。

   かつて、現職の総理大臣に対し、不満を持つ勢力が街宣車で「ホメ殺し」を行ったことがありますが、まさにそのスタイル。

   ご丁寧に候補者本人のフルネームがいくども記載されているうえ、褒めているようでまったく褒めている体になっておらず、いくらホメ殺しを偽装してもこれでは名誉毀損が成立してしまう可能性が極めて高いです。

   ふたつめのものは、もっとストレートに、家族を含めて「犯罪者扱い」をする内容。事実ではなかった場合、普通に法律違反が成立すると、誰もが思えるような激しい中傷です。

   具体的に生活や商売上で経済的、精神的被害があったと申し出られると、とても抗弁できそうにありません。

   3つめは、ネット上にあった文章を転載した、というものでした。やはり特定の候補者に対して批判的な内容で、「判断は受け取った方に任せます」と但し書きがされており、名前の一部に伏字が使われてはいますが、地元有権者なら判別は容易であり、これも名誉毀損に問われそうなものです。

   これらのメールは、すべてケータイ宛てに送られてきたそうです。

   発信元は無料で誰でも取得できるメールアドレスを使った、いわゆる捨てアカウント。名称も、「●●の未来を考える会」など、実在しそうではあるけど、本当にあるかどうかわからない団体名が使われています。

「送信した人物が誰なのかはわからないようにしてあるんだけど、受信した人たちの属性、つまり住所や地域での活動グループなどに一定のパターンがあるから、だいたいどのあたりの人物か、実は想像がつく(笑)」

   見せてくれた人は、このように言いました。

中高年の中には動揺する人もいる

   それでも受け取った有権者、なかでも40代以上の中高年からは、本当なのか、卑怯な誹謗中傷を放置せずに反撃しなければならないのではないか、といった動揺する声が寄せられたのだとか。

   この人は、ウィンドウズ95ブームの頃からネットを使っているので、選挙におけるネット活動解禁には積極賛成派なのですが、あらためて懸念もあると訴えます。

「印刷された怪文書なら、とにかくポストに入れてしまえばいい。誰が配ったのかなんて、ほとんど気づかないからね。ただ、選挙での誹謗中傷合戦は、どう考えても非効率。怪メールは匿名性を確保して、さらにバラ撒きの効率化、つまり印刷コストのカットや人の手当てをしたくないとかいったことを狙っているのかもしれないが、やっぱりバレないってことはないんだよね。
見てもらったように、内容は稚拙、便所の落書きレベル。だけど、地方でネットに慣れていない中高年のなかには、あからさまに動揺する人もいる。下らない怪メールのせいで、選挙そのもののコストの低減化、有権者の投票の利便性向上といった、本来のネット選挙解禁の趣旨が損なわれてしまったら、非常に残念なことでしょう?」

   自分のためにという気持ちのその先に、みんなのためにと思うのであれば、災害時のデマ同様、頭の悪いネットの使い方は、ぜひ止めてもらいたいものです。

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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