2024年 4月 26日 (金)

スマホやタブレット端末で「カナ入力」できないの?

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   年度が変わり、ケータイ界隈でも新型の機種が出そろってきました。店頭に新製品がズラリと並ぶ姿を見ると、ワケもないのになぜだかワクワクとした気分になってしまいます。

   そうしたなか、先日、同業の先輩であるAさんから、ある相談を受けました。そろそろスマートフォンかタブレット端末が欲しいのだが、心配なことがある、というのです。

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人差し指一本で高速原稿書き

   何だろうと思って待ち合わせ場所へ赴くと、挨拶もそこそこに、Aさんはこう切り出しました。

「スマホとかタブレットとかってさ、カナ入力はできるの?」

   一瞬、「えっ?」と思いました。カナ入力で使う人って、いるの?

   普段、キーボードはローマ字入力で、JIS配列という言葉は知っていますが、カナ入力という機能自体、一度も使ったことがありません。

   人間は、自分の常識を世間の常識だと思い込んでしまうことがよくあります。そのことを戒めた警句、警告も、古今東西、枚挙に暇がないほどです。

   恥ずかしながら、カナ入力を使う人がいるとは、思ってもみませんでした。

「どうでしょうね…さすがにちょっと調べてみないと、カナ入力ができるのかどうか、アプリがあるのかどうかすらわからないですね…」

   そう言って、ケータイで調べようとしていると、AさんはカバンからノートPCを取り出しました。

「いやさ、オレ、いつもこうやって原稿を打ってるのよ」

   言うが早いか、AさんがノートPCのキーボードを打ちだしました。人差し指の一本打ちです。

   それで本当に打てるのですか、と訊こうとする間もなく、Aさんがキーボードを操りはじめました。その光景は、まさに驚愕。にわかには信じ難い、尋常ではないスピードで、人差し指が盤面を移動していきます。

   机の上に利き手ではない方の手のひらを開いて置き、ナイフや錐で指の間をトントンと素早く突いていく遊び(根性試し?)があります。不良っぽい人なら、一度や二度はやったことがあるでしょう。

   あれに近い感じで、右手の人差し指がキーボード上を動いていくのです。左手は、ガッシリと強く抱くようにして、ノートPCの本体を抱えています。

「ええーっ!いつも、そんなんで原稿を打ってるですか!」

ブラインドタッチ、還暦でもやればできる

「そう。オレさ、ほんの最近までずっと、原稿用紙に書いてたんだよね。でもさ、版元とかの方でいちいちデジタルに打ち直してるって聞いて、パソコンを覚えようと思ったの。でも、いまさら両手で打てなくて。で、一本指で打てるように練習してたら、ちゃんと素早く打てるようになったんだよね」

   言い忘れていましたが、Aさんはすでに還暦を過ぎている方です。

「それにしても、Aさんと同年代の人でも、両手でローマ字入力ができる人って、少なくないですよ」
「うーん、昔からオレさ、面倒くさがりなんだよ」

   いや、一本指で打てるように練習する方が、よほど面倒くさいと思うんですけど…。

「でも記憶力は良いからな、学生の時から。配列を覚えちゃえば、どうってことないよ」

   世の中、いろいろな人がまだまだいるものだ、と感心しつつ調べてみると、カナ入力用のアプリ(プラグイン)はありました。QWERTY配列、JISかな配列、五十音かな配列と、ちゃんと切り替えられるようです。

「なるほど、これをダウンロードすればいいわけだな。そうそう、オマエさ、京大入試カンニング事件の時、ケータイの入力をブラインドでできるはずがないって、最初言ってただろ。オレは初めから見なくても打てると思ってたよ。世の中には記憶力の良いヤツがいてな、オレだって、こうやって話しながら打てるんだぜ」

   そう言いながら見せてもらったノートPCの画面には、

「よのなかにはきおくりょくのいいやつがいてなおれだってこうやってはなしながらうてる」

と、下手な脅迫文のような文字列が、ちゃんと打ち込まれていました。

   いやはや、恐れ入りました!

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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