「サイボウズ式」が自社製品のPRを最優先しない理由を考える

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   グループウェア国内シェア1位のサイボウズが2012年5月14日、「サイボウズ式」という自社メディアを立ち上げた。同社PR担当の社員が3人のスタッフとともに、ブログ形式の記事を更新している。

   「新しい価値を生み出すチーム」におけるIT活用をテーマに取材記事などを掲載しており、5月29日にはソーシャルメディアマーケティングを手がけるループス・コミュニケーションズへのインタビューを掲載している。

競合商品のメリットを語る記事を掲載

「自社製品から離れた」異色の自社メディアを運営するサイボウズ
「自社製品から離れた」異色の自社メディアを運営するサイボウズ

   とはいえ、ループス社はサイボウズ製品のユーザーではない。そのうえ彼らは記事の中で、競合サービスになりうるフェイスブックの、グループ機能の活用方法とメリットについて存分に語っているのだ。

   普通このようなPRサイトでは、自社製品のユーザーに、いかにその製品が素晴らしいかを語らせるものだ。それによって自社製品の購買メリットを訴え、販売促進につなげていく。それ自体は悪いことではないはずだ。

   ではそれが、なぜここではそうなっていないのか。サイト開設の初日に、「サイボウズ式」編集長でPR担当の大槻幸夫氏は、記事の中で次のように書いている。ある雑誌で、デジタルガレージ社がサイボウズの製品を使っていることについて「意外」と評されていたのを見た大槻氏は、

「一度、『サイボウズ製品』から離れて、世の中のコラボレーションはいま、一体どうなっているのかを探ってみたいという欲求」

に駆られたという。

   社内では自社製品を当たり前に利用しているが、巷ではグーグルやツイッター、フェイスブックなどのサービスを使う人が多いのかもしれない。そこで、徹底してユーザー目線で現場の取材をすることで、「ITを使ったコラボレーションが、今どう変化してきているのか」を自分の目で確かめたいと感じたそうだ。

   なぜそのような一見無駄なことをしているのか。まず考えられるのは、ゆくゆくは自社製品をPRするために、自社が対象とする潜在顧客のアクセスを集めているのではないかということだ。

「ITを使ったコラボレーション」の第一人者を目指す?

   広告ビジネスモデルで運営するニュースサイトは、アクセス数が増えるごとに影響力が大きくなり、収入も増えていく。それと同じように、まずは多くのアクセスを集めれば、ゆくゆくはいろんなことができるのではないかという考え方だ。

   もうひとつ考えられるのは、サイボウズ社が自社のビジネス領域を「良質なコラボレーションを提供する会社」と定義しているために、自社製品のPRにとどまる必要がないと考えているということだ。

   ビジネスをするために、企業は資産である自社の技術ありきで考えがちである。しかしユーザーは、どんな技術を使っているかを問うことは稀だ。少なくとも、自分たちが望む形のサービスであるかの方が、ずっと重要である。

   ということは、サイボウズ社は「ITを使ったコラボレーションが、今どう変化してきているのか」について最も詳しくなっている必要があるし、それを知りたい人たちを集めて声に耳を傾ける必要があるわけだ。

   また、「ITを使ったコラボレーション」に関するノウハウを提供することで、チーム内の情報共有や交流の活性化に頭を悩ませている企業の担当者からの潜在的な好意を獲得する、という副産物もあるのかもしれない。

   あくまで仮説でしかないが、そう考えてみると、事業会社自身があたかもメディアのように、ある分野に関して客観的な取材を重ね、発信していく意味が分かるような気がする。(岡 徳之

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