2024年 4月 19日 (金)

メジャーリーガーの代理人に学ぶ「会議の結論」の出し方

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   同質性が高く「空気を読む」「全員一致」を好む日本企業は、議論や交渉が苦手です。会議の場では黙っているのに、決定事項に従わなかったり、陰口を叩いたりする人が出ることは日常茶飯事です。

   限られた時間の中で結論を導き出すことも極めて困難で、よほど事前の根回しがなければ、結論はたいがい先送りにされます。それでもプロジェクトのリーダーは、上手に意思決定を得なければ、ものごとを進めることができません。

いきなり途方もない条件を提示してみるのも手

利害関係が対立する中で結論を出すためにはテクニックが要る
利害関係が対立する中で結論を出すためにはテクニックが要る

   反対者を強引に説得しようとすると、反発されたり、後々になっても「あのとき無理やり押し切られた」「あの人は他人の言うことに耳を貸さない」と言われたりします。

   こういうときに必要なのが、交渉術。相手の口から「分かった」という言葉を引き出すようなやり取りをすればいいのです。

   交渉術といえば、参考になるのがアメリカのプロフェッショナルの世界です。スコット・ボラス氏は、メジャーリーガーの年俸を選手に代わって交渉する有名な代理人。数々の高額契約を締結してきたことで知られており、クライアントにはアレックス・ロドリゲスや松坂大輔など有名選手がズラッと並んでいます。

   そんな彼の交渉術のひとつは、交渉相手にいきなり途方もない金額を提示すること。相手は当然驚いて「そんな金額は払えない」と突っぱねます。

   そこでボラス氏は「それでは」といって、徐々に現実的な条件を提示します。すると相手は「最初の金額からすると、だいぶ下げられた」と安心してしまい、妥協してしまいます。結果的に、ボラス氏は比較的高い契約条件を勝ち得るわけです。

   もちろん用いられる交渉術は相手によっても変わるし、いくつもの手法を組み合わせるのでしょうが、なあなあで成り行き任せの日本の会議よりも、ずっと早く、思い通りの落としどころで結論を得ることができます。

あらかじめ「落としどころ」を決めるのが重要

   さて、あなたがプロジェクトのリーダーで、会議で結論を得たいとき、時にはボラス氏のような手法を応用してみてはどうでしょうか。

   大勢は決まっているのにボトルネックとなる人がいて、なかなか首を縦に振らない。いくら結論を促しても、何かとはぐらかして明確に返事をしない。そんなときは、なだめすかすだけでなく、ガツンと言ってやりましょう。

「対案が示されないのであれば、この案でやるかやらないかしかありません。あなたの意見を反映させて、中止にする方向にしましょうか? 中止について関係者を説得する必要がありますが、そのときは協力をお願いできますね?」

   自分の決断に責任を負いたがらない臆病な相手であれば、「自分の意見によって中止が決まった」という状況を恐れます。そこで「いや、反対ではないが、こういう点に配慮してくれれば了解する」という返事を引き出します。

   交渉をするときに重要なのは、あらかじめ合理的な「落としどころ」を決めておくことです。これを決めておけば、あとはそれを上回る条件を引き出すコミュニケーションをすればいいので、心の余裕が生まれます。

   また、逆の立場になって自分の意に沿わないような説得をされて、その場の雰囲気に流されたまま「しまった」と思わないためにも、譲れない「落としどころ」を決めておくことが大事です。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
株式会社セレブレイン
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