「60歳」雇用延長したけど「パソコンできず若手の邪魔」 「解雇できないか」と打診が来たが…

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   4月(2013年)に改正高年齢者雇用安定法が施行され、希望者は全員、65歳まで継続雇用することが企業に義務付けられた。雇用延長の流れは施行以前から続いており、すでに60歳超で働き、経過措置が適用される人もいる。

   年金支給年齢の引き上げに伴い、「空白期間」が生じるのを防ぐ狙いがあるが、「60歳代では、能力と意欲の個人差が広がる」(3月29日付、読売新聞朝刊社説)という懸念も指摘されていた。実際、こんなトラブルを抱えた人事担当者もいるようだ。

「お願いする仕事もないまま半年以上過ぎました」

   製造業の人事担当です。我が社では、雇用延長に伴い60歳を超えた年上の部下を持つ管理職が増えてきました。

   先日、営業のA課長がやってきて、

「この春から来てもらってるBさん、ホント仕事できないんで辞めてもらうこと出来ないですか…」

   何事かと思ってよく聞いてみると、この春、隣の営業部から人員補充された定年後再雇用のBさんが、全く戦力になってないというのです。

   A課長によると、

「今の仕事は業界や商品知識とパソコンスキルが必要なのに、Bさんはどっちもさっぱりです」
「若手の営業に同行して『関係づくりが大切だから』と言ってお客さんと長話して嫌がられています。Bさんは、以前は違う商品の担当でしたが、今の商品のことを勉強しようとしません。昔は人間関係で営業成績が伸ばせたのかもしれませんが、今は競合に勝てる商品を魅力的な提案書に表現していかないと売れません」
「資料作りをお願いしてもパソコンが十分使えず、出来ないことが多すぎるんです。教えるほうが手間なので、自分たちでやることになります。結局お願いする仕事もないまま半年以上過ぎました。これだったら人員補充してないのと同じです」

という多くの不満から解雇を望んでいるようです。

   折しも業績不振によりリストラの空気が漂う中、「だったら仕事をしてない人から」と思うのも無理はありません。

   確かに、現場での業績は全くあがっていないようです。前の部署は人数が足りていて、戻すこともできません。

   解雇することは出来るのでしょうか?

社会保険労務士 野崎大輔の視点
高年齢者の継続雇用でも解雇は可能

   改正法では、60歳で定年退職した者を、希望者は65歳まで継続雇用できる制度を導入することを企業に義務付けしました。多くの企業は、1年更新で再雇用契約を結ぶ形を取っています。

   まず一般論ですが、心身の故障により業務に耐えられない場合や、勤務状況が著しく不良で従業員としての職責を果たせない場合は、解雇したり雇用契約を更新しなかったりすることができます。就業規則に普通解雇事由が定めてあるかと思いますが、それらに該当すれば良いということになります。

   さらに今回のケースでは、業績不振による整理解雇を進める可能性があるとのこと。改正法では、高年齢者の継続雇用を一般社員の雇用より優遇しろということを言っているわけではありません。今回のケースでは、「業績不振により再雇用が困難である場合」といった再雇用の適用除外事由が明記されるなどしていれば、解雇や「更新せず」という措置が可能なのではないかと考えられます。仮にBさんの契約期間が残り少ないのであれば、即時解雇をするのではなく、それまでは雇用し、事情を説明して契約期間満了で雇用契約を更新しない方が不要なトラブルを防げると思います。

臨床心理士 尾崎健一の視点
これまで培ってきた能力などの再評価を

   Bさんには、長い間勤めた部署を異動して戸惑いがあるのではないでしょうか。長くやってきた業務と社内外の人間関係が変わってしまったら不安になることもあるでしょう。経験が長くプライドを持っているなら、これまでのやり方に固執したり、出来るところを見せたいという気持ちが生まれたりすることも理解できます。新しい商品にはまだなじめず、パソコンが苦手な自分を受け入れきれていない精神状態なのかもしれません。

   この年齢まで辞めずに勤めたということは、何らかの貢献を会社にしてきたということ。解雇を検討する前に、「これまで培ってきた能力は何か」と「それを活かす方法があるか」を考えることが先でしょう。場合によっては、全く別の職種や部署で能力を発揮できるかもしれません。

   また、上司としては「できないから」と投げ出すのではなく、適切な指導をすることも必要です。シニア層の部下への指導は、「意見を聴く姿勢をもつ」「過去の成果を尊重する」「年上の人から言ってもらう」など本人のプライドへの配慮が必要です。

   古いと思われる「関係性重視」の考え方も、何かとドライな関係になりがちな現代では、顧客との関係のあり方を考える一つのきっかけにしても良いのかもしれません。

「希望者は65歳まで全員雇用」どう思いますか?
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その他
尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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