都知事選「60代以上」の動向に注目 「日本の改革のハードル」示す試金石に

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   都知事選において、細川元総理が演説で行った"脱・成長"宣言が話題となっている。脱原発はいいけれども、脱成長してどうするんだという指摘は、非常に多くの方面からなされていて、筆者もそれはあまりに非現実的だと言う点で同意見だ。

   とはいえ、筆者は細川さんのような人がそういう趣旨の発言をすること自体に違和感はない。氏は複数の国宝を含む数千点の美術品を収蔵する細川家の当主であり、自身の焼いた壺に百万円以上の値がつくこともあるほどの売れっ子陶芸家でもある。氏からすれば「あくせく働かなくたっていくらでも悠々自適に生きていけるじゃないか」と言う価値観は当然のものなのだろう。

リスクを取らず、問題を先送りする傾向

   同様の傾向は、企業の現場においてもしばしば見られるものだ。50代半ばを過ぎ、それ以上の上がり目は無いけれどもゴールは既にはっきり見えているというポジションの人は、ともすればリスクを取らず、問題を先送りする傾向がある。とりあえず細部にダメ出ししたり反論のための反論をしたりして結論を先送りする役職者は、古い組織ならどこにでもいるだろう。

   もちろん根は優秀な人なのだが、処遇的にピークに達してしまった以上、そういう風にリスクを回避することが一番合理的なのだから仕方がない。ちなみに、筆者はそういう「やる気があるのかないのかはっきりしない50代」のことを第二モラトリアムと呼んでいる。

   だから、企業にはちゃんとそうした停滞を防ぐためのいろいろな仕組みが設けられていて、たとえば経営陣に対しては株主や社外取締役がチェック機能を果たすし、それより下の幹部ポストは"役職定年"によって50代半ばで第一線を引くようになっている。そうやって新陳代謝を図らないと、組織が生き残れないためだ。

「20年近いモラトリアム期間を持て余す人」が増えている

   でも、民主主義に定年はない。平均寿命が(低い方の)男性でもほぼ80歳に達した今、「上がり目は無いけれども失いたくはない」という人達が20年近いモラトリアム期間を持て余し、しかもそういった層が年々増加し続けている現状は、日本を巨大な一つの組織と考えた場合、筆者にはとても恐ろしい状況にあるように見える。

   フォローしておくが、告示直後のマスコミ世論調査記事などをみても、筆者は、細川候補が当選することはさすがにないだろうと考える。シングルイシューで与党系候補を突き崩せるほど都知事選は甘くはない。ただ、細川陣営がどれくらい票を伸ばすか、中でも60代以上からどれくらい票を取るかに筆者は個人的に注目している。

   特に世代によって濃淡が無い、あるいは60代以上からそっぽを向かれているようなら、筆者の心配は杞憂だろう。でも、仮に60代以上からそれなりの票を得ているようなら、時が経つにつれ、日本の改革のハードルはますます高くなるはずだ。(城繁幸)

人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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