「そんな費用あるなら給料上げて!」 オフィス移転めぐり社員が大反対

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   ビジネス上、何かと便利な場所へオフィスを移転――ぱっと聞いた範囲では結構なことに思える内容だが、具体的な話になるといろいろ問題も出てくるようだ。

   賛否がある程度分かれるのは仕方がなさそうだが、「社員の多数が反対派となり、移転意向の社長と真っ向から対立」となると穏やかではない。

反対押し切り強行して大丈夫か

   サービス業の人事担当です。当社は今年創立10年を迎え、不景気の中でも社員を解雇せずやってきました。

   社長は10周年記念事業として、家賃は高いけれどもより顧客に近く効率のよい場所にオフィス移転を考えています。

   移転先の候補地を見つけてきて、「みんな喜ぶだろう」と社員たちに話しました。

   ところが、社長の意に反して、社員は反対派多数です。

「この3年間、昇給凍結してるじゃないですか!移転費用があるなら給料上げて下さい!」
「通勤時間が倍になるからやめて欲しい」
「ランチの値段が上がってしまう。これ以上昼食代にかけるには給料が足りない」

など、具体的な理由を述べて反対しています。

   社長は、

「顧客に近いし、マーケティングもしやすい。銀行とも相談して、ビジネス的メリットが大きいと判断したんだ!」

と主張しました。

   それでも社員が反対するので、しまいには

   「あそこに本社を構えるのが夢だったんだ!」と本音とも取れる発言を残して出て行ってしまったのです。

   確かに銀行とのやりとり内容を見ると、事業へのプラス要素が多く、資金的にも移転は可能です。一方、社員がこんなに反対しているのに社長の独断で移転しても大丈夫でしょうか。間に挟まれて困っています。

社会保険労務士 野崎大輔の視点
不利益変更と言われても気にする必要はない

   今回の件は、社員が反対していたとしても問題ありません。オフィスをどこに移転しようがそれは会社の経営権として自由であり、法律で制限できるわけでもありません。

   「通勤時間が倍になるから嫌だ」とか「昼食代が上がるから」といった理由をいちいち聞いていたら、世の中の会社は引っ越しができなくなります。オフィスの移転が労働条件の不利益変更に当たるかどうかという視点で考えてみましょう。労働条件は、雇い入れ時に雇用契約を結ぶ際に定められています。例えば労働契約の期間、就業の場所、従事すべき業務、休日、賃金、退職金などが該当します。労働条件を現状より下げる場合は不利益変更となり、原則として社員の同意が必要になります。

   今回は、就業場所の変更に該当するかと思いますが、移転は経営権での範囲でのことであり、社員に恣意的に嫌がらせをするという目的でやっているわけではありません。社員から不利益変更と言われても気にする必要はないと思います。

臨床心理士 尾崎健一の視点
社員と「議論を尽くした」といえるよう、結論を急ぎ過ぎない

   働く場所や通勤経路は、従業員にとって非常に重要です。働く場所だけで会社を選択する人もたくさんいます。それを会社側の都合で変更することは法的に問題なくとも、従業員にとって生活に直接影響することと考えるべきでしょう。社員のモチベーションが下がれば、ビジネスメリットはあっても業績が上がらないことも起こりえます。

   ビジネスメリットが大きいのであれば、それを丁寧に説明し、社員のデメリットを補う部分や施策があれば理解してもらうよう、時間をかける必要があります。万一、社員へのデメリットはあっても移転を決定せざるを得ない場合にも「しっかり議論を尽くした結果だ」と言えるよう準備しましょう。

   経営者は、「100%納得は難しい」と思えることを社員にお願いしなければならない場合があります。その時に、「納得はしていないけど、○○さんが言うならしかたない」と言ってもらえる関係を日頃から作っておきたいものです。

「オフィス引っ越しで通勤時間が倍」、移転に賛成する?
移転先がビジネス上有利なら賛成する
反対する
仕方ないとあきらめる
無条件で賛成する
その他
尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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