その決断の「質」を疑え! 経営で陥りがちな6つのバイアス

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   今回は、組織論の授業で学んだ「経営の決断で陥りがちな6つのバイアス」を身近な分かりやすい事例と合わせてご紹介します。

   さて、まずちょっと質問です。A:100%の確率で5万円得る、B:50%の確率で10万円得る。あなたなら、A、Bどちらを選びますか?恐らくAと答える人が多いのではないかと思います。

社長の肝煎り案件だからとついついのめり込み過ぎて…

その決断、気づかないうちに歪んでいませんか?
その決断、気づかないうちに歪んでいませんか?

   ではC:100%の確率で5万円失う、D:50%の確率で10万円失う、だとどうでしょうか?今度はDを選ぶ人が多いのではないかと思います。これをFraming Effectというのですが、期待値はどの選択肢も5万円で同じなのに、何かを失う局面では人はRisk Seeking(リスク好き)になり何かを得る局面では人はRisk Averse(リスク嫌い)になる、という人間の陥りがちな心理を表しています。こうした「判断を歪めるバイアス」はそこかしこにあふれています。

   ふたつめのバイアスは「Escalation of Commitment」です。これは「私たちは過ちに気づかず(もしくは過ちを埋め合わせるために)コミットを深めてしまう」というもの。例えば、社長の肝煎りでスタートした案件なので、最初に大きな投資をしてしまった。途中から雲行きがあやしくなってきたが、いつかは好転するのではないかと深入りしてしまって、結果、やらなかったとき、もしくは途中で撤退したときより大きな損失を被ってしまった…。あるある!

   続いては、「Anchoring」です。これは、「私たちは最初の一手に縛られがちである」という考え。「本当はこの事業、もう少しお金を使えばもっと良くなるんだけど、予算をXX億円で決めちゃったからその範囲で何とかしなきゃ」と突っ走ったら最終的に成果が出なかった…。あるある!

年間の業績は一緒なのに彼のほうが評価が高いのはなぜ?

   そして、「Availability」。「私たちは『すぐ思い出せるデータ』から結論を導きがちである」というバイアス。例えば、年間を通しての業績は彼と変わらないはずなのに、向こうのほうが人事評価が高かったのは、たぶん期末に大きな仕事を獲ってきたことに対する上司の心理的インパクトが大きかったからだろうなあ…。あるある!

   次は「Base Rate」。「私たちは判断に必要なデータを無視・軽視しがちである」。上司が「あのA社やB社の戦略すごくうまく行ってるじゃない?ウチもやってみようよ」と言うので、そのまま他社の真似をしたら失敗した、ってよくありますよね。実際には世の中に見えていない失敗した事例のほうが多いのに、成功したいくつかの事例だけを見て決断して失敗すること…。あるある!

   最後は「Overconfidence」。「私たちは経験が少ない領域ほど自信過剰になりがちである」というバイアスです。例えば、無謀な登山での遭難事故のニュースが増えている気がします。私も以前登山ガイドをしていたので分かりますが、人間、知らないことに飛び込むときには、本当の危険を知らないがために自らを省みずにチャレンジしてしまうことがよくあります。ビギナーズラックでうまく行ってしまったりすることもありますが、アメリカでカジノに行くと、Overconfidenceになりがちな人間の習性がよく見えます(笑)。あるある!

   以上、組織論で学ぶのに「心理学では?」と思うような内容ですが、経営を人間が行っている以上、我々が生来陥りがちな心理について考えることは非常に有意義です。ひとつひとつについて「知識」として知っていることが重要というよりは、こうしたバイアスが経営の、あるいは日常の仕事のここそこに隠れていて、私たちの判断に影響を及ぼしている、ということを組織として認識できるかどうかが問われる気がします。

   まさに「日本人同士では暗黙知化しているが、グローバル組織では『見える化』する必要があるナレッジ」と言えるでしょう。個人的には、普段の生活や仕事でも冷静な決断を下すために有用な考え方であると思います。McKinsey社の調べでは、決断のプロセスの「質」が高い企業は、そうでない企業に比べROIが平均7%高いというデータまであるそうですよ!(室健)

室 健(むろ・たけし)
1978年生まれ。東京大学工学部建築学科卒、同大学院修了。2003年博報堂入社。プランナーとして自動車、電機、ヘルスケア業界のPR、マーケティング、ブランディングの戦略立案を行う。現在は「日本企業のグローバル・マーケティングの変革」「日本のクリエイティビティの世界展開」をテーマに米ミシガン大学MBAプログラムに社費留学中(2014年5月卒業予定)。主な実績としてカンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルPR部門シルバー、日本広告業協会懸賞論文入選など。
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