雪の日にバイトを早く帰したら「その分の時給を払え!」と言われました

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   2月の大雪で、「陸の孤島」も出現するなど生活に大きな影響が出た。当日は、天気予報を気にしながら、「雪、これからもっと降るってさ……」と早じまいをしたところも少なくないだろう。

   積雪がひどくなると交通機関が麻痺する可能性も出てくるし、「早じまい」と聞けば喜ぶ人が多そうだが、「時給」をめぐってちょっとしたトラブルが発生したという。

「2時間分働けなくなったじゃないですか」

   飲食店のオーナーです。最近は豪雪で商売に影響が出ています。

   客足が減るのは仕方ないことだと思いますが、良かれと思ってやったことでアルバイトから文句を言われてまいっています。

   ニュースでは雪が数10センチ積もるということで、夕方にけっこう降ってきたことから早めに帰ってもらうことにしました。

   遠方の者もおり、電車が止まるなどすれば帰れなくなってしまうので、早く帰した方が良いと思ったからです。社員で比較的家が近い人に残ってもらい、あとは帰ってもらうことにしました。夕方にスタッフを集めて、

「今日は雪がけっこう積もるらしいから店は早めに閉めることにします。アルバイトで家が遠い人は16時にあがるように」

と言いました。ほとんどの人は「助かります!ありがとうございます」と言ってくれたのですが、Aさんは不満気にこんなことを言いました。

「私は10時から18時までのシフトだから2時間分働けなくなったじゃないですか。
   これは会社の都合だから補填してくれるんですよね。休業補償して下さい」

   私はこれを聞いて、「良かれと思ってやったのに、何でこんなこと言われなきゃならないんだ」と怒りの念がわいてきました。

   そもそも時給だから働いていない時間は払わなくて良いと思っていたのですが、今回のような場合でも払わないといけないんでしょうか?

   また、こういうことを言ってくる人にはどう対応したら良いのでしょうか?

社会保険労務士 野崎大輔の視点
1日の平均賃金を超えているかで判断を

   地震や災害などの不可抗力による場合を除き、予めシフトが決まっていたにもかかわらず会社の都合で早く帰らせた場合は、労基法に定められている休業手当を支給しなければなりません。今回の大雪は、天災として不可抗力との判断もできそうですが、労基署に確認したところ、営業できないというわけではないので休業手当の対象となりそうです。

   今回のように1日の所定労働時間の一部を使用者の責めに帰すべき事由により休業させた場合には、働いた分はすでに賃金が支払われていても、現実に働いた時間に対して支払われる賃金が平均賃金の100分の60に相当する額に満たないのであれば、その差額を支払う必要があります。逆に超えているのであれば、支払わなくても大丈夫です。

   例えば、時給1000円で1日の平均賃金が8000円とします。すると100分の60の4800円が休業手当となります。8時間働く予定だったところを2時間短縮したとしたら、その日の給料は6000円になります。この場合、平均賃金は超えているので払う必要はなくなります。今回のケースは、支払う給料が平均賃金を超えているかどうかで判断してみて下さい。

臨床心理士 尾崎健一の視点
個人もリスクマネジメントの観点を

   今回の措置は、「悪天候による災害防止」が目的であり、店の営業の是非は不可抗力と言えないまでも議論が分かれそうです。もし、無理に働かせて帰宅困難になったり帰宅中に災害に遭ったりすれば、何故それを予測しなかったと批判されるでしょう。

   経営側のリスクマネジメントとして極力リスクを避ける判断をすることは、今後も組織を維持し給料を払い続けるためには必要なことです。

   Aさんも、目の前の時給という金銭面だけに囚われず、万一災害に遭った時に有形無形の代償を払わなければならないことを想像出来た方が、長期的なより良い生活の質を得られるでしょう。

   そういう意味では、組織の経営者だけでなく個人も、リスクマネジメントの観点を持っておくべきです。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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