MBAで学んだ人生哲学 「変化」を恐れず「進化」促すリーダーシップとは

印刷

   無事にミシガン大学MBAを修了しました。この連載も今回が最終回。まさか半年間、計30回も続くとは!読者の皆さんに御礼申し上げます。オンライン・オフラインで新たなつながりができ、情報は発信する人のところに集まることを実感しました。ミシガン大学MBAは正式には「Ross School of Business」と言うのですが、その名を冠している不動産王Stephen Ross氏は「You get by giving」と語っていて、まさにその通り。

   私の父方の祖父は英語の教師で、母方の祖父は世界を旅する貨物船の船長でした。一方、私は耳鼻科系が弱く飛行機に乗ると耳が痛くて使い物にならないという有様。海外で仕事をしたり勉強をしたりなんて想像もできない学生時代を送っていました。受験勉強としての英語は学んだけれど、使う機会もほとんどなく…。入社して3年目に関わり始めた、あるグローバルプロジェクトで全てが変わりました。海外での仕事が増え、世界中を出張しているうちに耳も強くなり、とうとうMBAにキャリアを棚卸ししに来てしまった。思えばずいぶん遠くまで来たものです。

   会計やファイナンス、そして経営戦略から組織論まで色々な学びがありました。私のような純国産人材にとっては英語コミュニケーション力の向上も大きかった。しかし、一番大きな学びは、これからのキャリアにも役立つであろう3つの「考え方」であったと感じます。

「学び、進化すること」を恐れるな 「変化」なきところに「進化」はない

卒業しました!同級生数百人のサインが入った「マイ・ピッチャー」とともに。
卒業しました!同級生数百人のサインが入った「マイ・ピッチャー」とともに。

   ひとつめは「学びの大切さ」です。特定の組織に長くいると考え方が固まってしまいがち。私は30代半ばにして留学し「自分なりの信念を持ちながらも他者、外部から学びを得て進化すること」の重要性を学びました。

   自分のやり方に固執しすぎて伸び悩み、「時代遅れの使えない人材」になってしまう例を見てきました。どんなに能力が高くても、外から吸収できない人と組織は弱いと感じます。「これだけ利益を出した」と結果だけを見たり、「文化が違う」と否定したりするだけでなく、「何を学んだのか、それをどう今後に活かすのか」を考える。「現在の生ぬるい環境が快適だから動かない」では、そのまま茹でガエルになるか、次の世代が辛い目に会うかのどちらかでしょう。自分のやり方を「深化」させていくと同時に「変化」を求めることが本当の「進化」に結びつくのではないでしょうか。

リーダーシップとチームワークは表裏一体

   二つめは「リーダーシップとチームワークの考え方」です。「それぞれが自分の強みを活かしたリーダーシップを発揮できるチームは強い」というのがミシガン大学MBAでの捉え方。ともすれば、「リーダー=良くも悪くもチームを引っ張る人」と「メンバー=リーダーを支える人」、もしくは「リーダー=雑用係」と「メンバー=各自の分担をこなす人」に分けてしまいがちです。やることが明確になっているルーチンの仕事ならこれでもうまく行くことがあるでしょう。

   しかし、これからのビジネスでは「一見答えのない問題をクリエイティブに解決すること」が求められます。そのときに参考になるのが「リーダーシップとチームワークは表裏一体」という考え方。「船頭多くして船山に登る」ではなくて、それぞれが「チーム」というパズルを埋めるための「自分ができること」を見出して共創していくやり方です。

   MBAでは実社会と違って、同じ学生同士、ヒエラルキーのないチームでプロジェクトに取り組むのですが、ここに学びのヒントがあります。誰がリーダーか明確に決まっていない状態でチームが始まる。ヒエラルキーのある組織だったら起きないかもしれないガチのぶつかり合いがある。最初は英語力不足もあって議論に入れなかったのですが、慣れてくると「ここで自分が果たせる役割は何か」「この状況で何をしたらチームがドライブするか」ということを無意識に考えることになりました。

   サッカーで言う「個の力」を組み合わせた組織力と言い換えられるかも知れません。「個の力」を上げるためにも、海外で仕事や勉強をする人は、「自分をどうブランディングするか」を考えてみるといいのではないでしょうか。日本ではどう見ても「しゃべりたがり」な私が、海外では「Kenは寡黙だけど熟考したうえで発言しているよね」と言われてしまうくらいなので(笑)、「あいつ目立っちゃってさ」なんていう批判は心配ご無用。「幽学生」「壁の花」になってしまうよりは、やりすぎくらいがちょうどいい。

コミュニケーションのやり方は変わっても、コアスキルは変わらない

   三つめは「万国共通のコアスキル」。GM初の女性CEOに就任したMary Barraの卒業式でのスピーチが印象的でした。

「コミュニケーションのやり方は変わった。このスピーチの間にも皆写真やビデオを撮ってSNSで世界と共有しているし、私にも分からない『3文字熟語』が日々生まれている。OMG (Oh My God)!でもLeadership、Teamwork、Critical thinkingといった根源的に重要なスキルは変わっていない。ここで学んだそうしたコアスキルをキャリアで存分に発揮してほしい」

   コミュニケーションの壁さえ乗り越えれば(もちろんここが一番難しい)、多少文化は違えどアメリカでもアジアでもヨーロッパでもアフリカでも同じ人間。アメリカに来る前は日本との「違い」ばかり気にしていましたが、お互いを深く理解し、協働して何かを創りあげる、そのために必要な「コアスキル」というのは一緒だな、と。

   私事になりますが、2013年1月、自転車に乗っていたところをピックアップトラックにはねられました。幸い右足のすねの裏の骨が一本折れただけで命に別条はなかったのですが、1か月の松葉づえ生活を強いられました。それまでも「アメリカ人、意外と優しい」と思っていたのですが、このときの周囲のサポートを通じて世界共通のヒューマニティを実感したものです。

   ミシガン大学は、学び、進化するための場所としては最適なところでした。MBAだけでなく学部からロースクール・メディカルスクール等のプロフェッショナルスクールまで幅広い強みを持ち、卒業生にもGoogleの創業者であるLarry Page、「iPodの父」と言われるTony Fadell、Twitterの現CEOであるDick Costoloなど大物がズラリ。今後は日本でのミシガン大学のプレゼンス向上という形で恩返ししていきます。

   累計5万字を超えるこの連載を通じて、MBAで学んだことを発信してきました。皆さんに何らかの「気づき」を与えられていれば、これ以上の幸せはありません。また、留学を支えてくれた家族、同級生、MBA仲間、仕事関係の皆さん、そしてお声掛けいただいたJキャストニュースの皆さんにこの場を借りて感謝したいと思います。最後に、MBAで聞いた一番好きな言葉を。

「Challenge the status quo! (現状を打破せよ!)」

(室健)

室 健(むろ・たけし)
1978年生まれ。東京大学工学部建築学科卒、同大学院修了。2003年博報堂入社。プランナーとして自動車、電機、ヘルスケア業界のPR、マーケティング、ブランディングの戦略立案を行う。現在は「日本企業のグローバル・マーケティングの変革」「日本のクリエイティビティの世界展開」をテーマに米ミシガン大学MBAプログラムに社費留学中(2014年5月卒業予定)。主な実績としてカンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルPR部門シルバー、日本広告業協会懸賞論文入選など。
  • コメント・口コミ
  • Facebook
  • twitter
コメント・口コミを投稿する
コメント・口コミを入力
ハンドルネーム
コメント・口コミ
   

※誹謗中傷や差別的発言、不愉快にさせるようなコメント・口コミは掲載しない場合があります。
コメント・口コミの掲載基準については、コメント・口コミに関する諸注意をご一読ください。

注目情報
追悼
シニアの健康ライフ
Slownetからのおすすめ記事(提携)

お知らせ

電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中