「伝わらないプレゼン」の「真犯人」 手法だけが問題なのではない

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   パワーポイントのプレゼンの弊害というのは、これまで何度も議論されています。先日も、ワシントン・ポスト記事を紹介した「『Power Pointを禁止すべき理由』をPower Pointで解説」(Gigazine、2015年5月28日)などの記事を見かけました。

   一連の記事によると、スイスのフェルミ国立加速器研究所では、研究結果の発表にパワポの使用を禁止し、黒板やホワイトボードを利用しているそうで、それによってフォーラム参加者との交流が促進されるなどの利点を挙げる研究者の声も紹介されていました。

   たしかに、学問では、研究発表の内容についての議論が発展することが大事ですから、目的にかなった方法だと言えましょう。

PREP法とSDS法

伝わってこないな・・・
伝わってこないな・・・

   一時期、スティーブ・ジョブスのプレゼンや、TEDなどのプレゼン方法が流行りました。極力、スライドの内容をシンプルにして、スピーチそのものに集中してもらうという意図です。聴衆の集中力を、プレゼンテーターに集めるための工夫と言えましょう。

   プレゼンにはいろいろな流儀や方法がありますが、結局、使い分けが大事です。批判を受けるようなミスマッチは、プレゼンの目的と方法論にギャップがあることによっておきています。

   プレゼンの構成の代表的な型は2つあります。PREP法と、SDS法です。

   PREP法というのは、P(point:結論) R(reason:理由) E(example:具体例)という頭文字です。

   まず結論を述べ、それに至った理由をあげて、その理由を補強するデータなどの具体例をあげ、最後にもう一度結論で締めくくります。

   論文や白書や報告書は、この形態です。

   ですから、プレゼンでも、短時間に完結に結論を知ってもらって、あとは報告書を読んでほしいといった形の会議や報告会に向いています。時間がないエグゼクティブの会議でもこのようにするべきです。

プレゼンの目的とその手法が合致しているか

   SDS法は、Summary(概要)から入り、Detail(詳細)をのべて、Summary(まとめ)とするもので、日本語の語順や論理とマッチするので、これが使われることもあります。

   日本の起承転結もこれに近い。

   これは、話している内容自体に重きをおいたプレゼン方法で、TEDなどはこれをぐっと短くして魅力的な演出にしたものでしょう。

   スピーチや、セミナー、それに、コラムなどもこの構成法です。

   どちらが良いかというより、この使い分けが上手くいってない場合が多い。論理的な構成が重視される報告会や予算審議などで、結論をなかなか述べずに聴衆の目をひくプレゼンをしても場違いで冗長なだけです。ジョブス型のプレゼンは、数字中心の議論の場にはマッチしません。なんでもかんでもジョブス流にしてしまい、ビジネスの現場に混乱をもたらす若い人が出てくるのも困ったものです。

   一方で、製品発表や、コンセプトを伝えたいときに、いきなり無味乾燥な結論と理由だけのようなプレゼンでは相手に伝わりませんし、議論も喚起できません。製品設計の説明みたいなパワポのスライドで文字が細かく表がたくさん入ったものを、10分ぐらいの短いスピーチの場で、スライドの説明だけをぼそぼそつぶやくみたいなのも困ります。

   プレゼンに関しては、手法の良し悪しの前に、プレゼンの目的とその手法が合致しているかを考えることが、何より大事でしょう。(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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