他人事ではない最低賃金 「10月から」気をつけるべきコト

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   あなたは、自身がお住まいの都道府県における「最低賃金額」をご存知だろうか。

「だいたい800円くらいかな・・・」

と、アタマの片隅になんとなくはあるしれないが、これは各都道府県によって金額が異なり、毎年見直されて10月1日付で発効するため、この時期に確認しておくといいだろう。

   最低賃金というと、アルバイトかパートの世界のハナシ、と感じる方も多いかもしれない。しかしこれは正社員でも派遣でも嘱託でも、たとえ試用期間中であっても、すべての労働者とその使用者に適用されるものなのだ。恐らく、この記事をお読みの方の多くにとって「自分ごと」であるといえよう。

東京と神奈川は900円超に

10月からは・・・
10月からは・・・

   さらに、現時点で既に結んでいる労働契約であっても、10月以降に最低賃金以下となってしまう時給は無効になり、最低賃金と同じ時間給が適用になるので要注意だ。そして、使用者には最低賃金額を労働者に周知する義務もある。

   したがって、1人でも従業員を雇っている経営者や店主などにとっても、「知らなかった」では済まされない。最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならず、違反したら50万円以下の罰金が待っている。

   あなたの都道府県の場合はいくらになるのか、このサイトでご確認頂きたい。

   ちなみに東京都の場合2015年10月から、888円を19円引上げ(引上率2.14%)て、907円となる。2005年には714円、2010年には821円などと、この10年間をみると、毎年少しずつではあるが引き上げられてきている。

   今回の改定で、全国平均の最低賃金は798円。東京都と神奈川県は初めて900円を超えることとなったので、10月以降、「時給900円」で募集しているアルバイトは全て違法ということになる。経営者、採用担当者の皆さんには重々ご留意頂きたい。

最低賃金には2種類ある

   少々細かいハナシになるが、最低賃金には2種類ある。ひとつは上記でも説明した、各都道府県別に定められている「地域別最低賃金」。そしてもうひとつが、特定の産業で働く人に定められている「特定(産業別)最低賃金」だ。

   後者は、製造業、出版業、小売業など、一部の業界のみに設定されている最低賃金であり、「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」が同時に適用される場合は、どちらか金額の高い方が支払われるという決まりになっている。

   あなたがどちらに当てはまるのかは、厚生労働省の特設サイトから確認可能だ。

   最低賃金の対象になる範囲は、毎月決まって支払われる「基本給」と「諸手当」のみだ。この場合の「諸手当」とは、「役職手当」や「資格手当」などあくまで固定的に支払われるものを指す。従って、月によって変動する可能性のある「ボーナス」、「残業手当」、「深夜割増賃金」、「通勤手当」などは対象外だ。

   最低賃金を下回ってないかどうかは、給与を1時間あたりの時給に換算すればわかる。

   あなたがアルバイト、もしくはパートなど時間給で働いている場合は、時給金額がそのまま判断基準になる。それが勤務地の都道府県の最低賃金額を下回っていないかどうか確認しよう。

   最低賃金を下回ってしまう場合、企業や店は従業員に差額分を支払う必要がある。

   その支払いを企業やお店が拒否した場合は、最低賃金法で罰則が定められていることをお忘れなく。

政府、中小企業経営者... それぞれの思惑

   内閣府の試算によると、最低賃金をわずかに上回る水準で働く労働者は全国に300万~500万人おり、最低賃金が20円上がれば、総雇用者所得が最大で900億円増える効果があるという。

   最近の春闘においては大企業の賃金アップが軒並み実現しているものの、全法人の99%を占める中小零細企業においては、まだまだ待遇改善の恩恵に与れていないという思いが根強い。

   その点、最低賃金の引き上げは強制力があるため、中小企業の従業員はもちろん、アルバイトやパートとして働く人の待遇改善につながり、彼らの消費支出を増やし、経済にも貢献する可能性をも期待しているようだ。

   しかし一方で、財務基盤が弱い中小企業のコストを押し上げてしまうこと、賃上げ分がそのまま消費に直結するわけではないこと、などのリスク要因も懸念される。

   政府としては、厚生労働省や経済産業省などと連携して、中小企業への助成金など支援策を実施することも同時に示しているので、事業者の皆さんには使えるリソースを使いつつ、働く人が安心して生活できる世の中へと官民力を合わせて取り組んでいきたいものである。

海外との最低賃金比較はあまり意味がない

   最低賃金といえば、先般アメリカのロサンゼルス市などが、「市の最低賃金を2020年までに15ドル(1ドル=120円として約1800円)に引き上げる条例に署名」などと報道されて話題になったりする。

   フランスやイギリスでも最低賃金は日本円換算で1000円を超えるため、「日本がいかに国際的にみて低賃金か」という議論がなされることがあるが、金額だけを論点とすることはあまり意味がない。

   たとえばアメリカの場合、一部の市単位でニュースになることはあるが、各州を平均するとだいたい8ドル(約960円)程度だ。

   また、円-ドルの為替相場が直近の数年で急激に変わっていることもあり、現在のレートで円換算した額だけで語るのは正確とはいえない。また同国ではチップの制度があり、現地の記事をよく読めば「時給が上がる代わりにチップが廃止となり、各従業員が得ていたチップは直接店/企業に入り、それが従業員に分配される」「人件費増額分を商品金額に上乗せする」といった対応がなされていることが分かる。日本でそのまま応用できるものではない。

   欧州に関して言うと、日本経済がこの10年、低迷していた期間、欧州のGDPはフランスで1.2倍、イギリスで1.4倍に拡大している。1人当たりGDPで換算すれば日本は、米独英仏などより下位であるから、最低賃金がそれら各国よりも低いのは致し方ないことともいえよう。

   このような現状については様々な理由が絡み合っての結果であるが、労働行政の指針として、「賃金よりも雇用を優先」していたことも大きいだろう。実際、欧州EU平均に比べて失業率は半分以下の数値である。

   結局は景気なのだ。経済自体のパイを大きくしなければ、雇用の絶対量を増やすことも、賃金を上げることもできない。経済に手を付けないまま、賃金だけを無理に上げると必ずどこかに歪みが生じてしまうだろう。政府は根本のところから経済政策を推し進め、事業主は最低賃金アップをものともしないくらい付加価値を提供して、皆で繁栄していこうではないか。(新田龍)

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