仕事環境、もう我慢できない 労働組合を結成したいのですが

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   先日、某車メーカーが定年を65歳まで延長する方針を打ち出していましたね。そのニュースの中で、「会社と労働組合の間では大筋合意している」との一文がありました。会社と対等に話し合うことができる「労働組合」と言う組織、みなさんも耳にしたことがあるかと思います。

   職業柄、「会社の労働環境が悪い、うちはブラック企業だ!」と不満の声を多く聞いていますが、「なんとか会社に対抗してやろう!」と考えたことがある方も中にはいらっしゃると思います。そういった時に、自分の事を守ってくれる組織こそ「労働組合」なのです。しかし、その中身は意外に知らないという方も多いのではないでしょうか。今回は、そんな知ってるようで知らない「労働組合」についてお話しします。(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)

会社から圧力?

残業代も出ないし・・・
残業代も出ないし・・・

   今私が働いている会社は、残業代や休日手当も出ませんし、普通の会社よりはるかに給料が低く、休憩時間もほとんどないなど、とても労働環境が悪いです。社員たちも「もう我慢がならない」と口ぐちに話す様になりました。そこで、会社内で仲間を集め、労働組合を作り、会社に対抗しようという話になりました。

   しかし、もし作ろうとしたら会社から圧力をかけられ潰されてしまうような気もします。そこで聞きたいのですが、労働組合とはどのように作ればいいのでしょうか。また、労働組合を作る際に会社に拒否された場合、どうしたらよいのでしょうか。(実際の事例を一部変更しています)

弁護士回答 要件を満たせば、自由に作ることができる

   労働環境を改善したいとき、1人で会社側と交渉してもなかなか対等に話すことは難しいですよね。そういう時は、労働組合を作ることで、対等に交渉していくことができます。会社側は、労働組合からの団体交渉を原則として拒むことができず、交渉に応じる義務があります。

   また、ある程度力のある労働組合であれば、会社からの不当な解雇や転勤命令から守ってくれることがあります。会社側としても、労働組合とはできるだけ争いたくないというのが本音ですから、労働組合に加入しているだけで、会社側からの不当な扱いに対する牽制になることもあります。

   では、労働組合とはどういったものなのか。労働組合とは、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」をいいます(労働組合法第2条本文)。

   条文を4つに分けて詳しく説明していきます。

(1)労働者が主体となって作られていること。
(2)労働者が自主的に運営していること。
(3)労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を主な目的としていること。
(4)団体であること。

   まず、(1)の様に労働者が主体となって作られていることが必要ですので、労働組合に会社の役員など使用者側の人が入っていた場合には上記の要件には当てはまりません。また、(2)の労働者が自主的に運営していることが必要ですので、会社から、労働組合の活動に必要な経費を援助してもらっているときも、上記の要件には当てはまりません。(3)労働条件の維持や改善その他経済的地位の向上を主な目的としていることから、政治運動を主目的とするような場合には上記の要件に当てはまりません。

   そして、(4)労働組合は1つの団体ですから、労働組合を結成しようとするときは、2人以上の組合員がいることが最低条件になります。ただ、会社側との交渉は力関係(人数の多い少ない)で決まりますから、過半数の従業員の参加を目指しましょう。

   労働組合を結成し交渉する権利は、憲法で保障されているので(憲法28条)、労働組合は4つの要件を満たせば、自由に作ることができます。役所等に届け出る必要もありません。

加入した際のデメリットとは

   一方、デメリットとして、労働組合に加入した場合、組合費がかかり給与から天引きされることが多いようです。また、会社側から目を付けられてしまう恐れもあります。会社側が、組合員を差別したり、活動に介入したりすることは不当労働行為として法律で禁止されていますが、実際には、組合員に対する不当な人事や退職勧奨などの嫌がらせも行われているようです。熱心に組合活動をしていると、同僚から偏った政治的思想の持ち主という色眼鏡で見られて孤立してしまうことも考えられます。

   先ほどお話ししたように、労働組合を作ることは憲法で保障された権利ですから、会社が労働組合を作ることを拒否することはできません。もっとも、会社に労働組合がない場合や、新たに労働組合を立ち上げるのが難しい場合には、合同労組に加入することで、会社に対抗していくことができます。

   合同労組とは、従業員が所属している企業を問わず、個人単位で加盟できる労働組合をいいます。合同労組は、一般的な企業別の労働組合とは異なり、複数の企業の労働者で構成されています。合同労組のメリットとして、1人でも加入でき、会社の目を気にせず加入できる点が挙げられます。

   通常の労働組合は、加入条件を正社員に限っていることが多いですが、合同労組では、正社員のみならず、契約社員・パートタイマー・派遣労働者など幅広く加入対象としている点にも特徴があります。また、通常の労働組合は、従業員の多数の利益を代表して会社側と団体交渉していきますが、合同労組は、労働者個人と会社との間に生じた労働トラブル(解雇・長時間労働・パワハラ・セクハラなど)に関する相談・支援を組合活動の重点としている点に特徴があります。

労働環境を守ったり改善したりするための存在

   労働組合は、本来的に労働者の労働環境を守ったり改善したりするための存在です。会社は労働者がいてこそ、成り立つもの。「給料が低すぎる!」、「長時間働いてるのに残業代も出ない!」、「上司のパワハラがひどい!」等々、「ブラック企業」という言葉が有名になって久しいですが、労働条件の悪い職場はまだまだ多くあります。我慢せず、労働環境の改善を求める事も1つの手です。「労働組合」という制度を、うまく利用して下さいね。

ポイント2点

●労働組合とは要件を満たせば個人で自由に作ることができ、労働組合を結成し交渉する権利は、憲法で保障されているので、会社と対等に交渉することができる。

●個人単位で加盟できる労働組合を合同労組という。合同労組は、正社員のみならず、契約社員・パートタイマー・派遣労働者など幅広く加入でき、労働トラブルの相談や支援の手助けをしてくれる。

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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